2007年9月10日月曜日

ようこそ紅茶館!!

web拍手、いただきました。ラブリーの昔の目次がよかったと、ありがたいお言葉です。そうなんですよね。時が経つというのは悲しいもので、まさしく去る者は日日に疎しってやつです。あんなに好きだった漫画なのに、いつしか日常の些事に紛れ、記憶も薄れ、ですがちょっとしたことがその薄らいだ記憶をはっと鮮やかにさせてくれることもあります。私の場合は、はじめて買った『まんがタイムラブリー』を再び手にしたことがはずみとなりました。一気に思いは過去に飛んで、好きだった漫画を思い出し、あの記事を書かせるに至ったのです。けれど、件のweb拍手の方はそうではなく、漫画家蒼月ひかりの消息を尋ねていらっしゃったようなのです。好きだった漫画家、その人は今どこでどうしてらっしゃるのだろう、願わくばもう一度、あの人の描く絵に、紡ぐ物語に巡り合いたいものだと……、そういう思いはやはりあると思うのです。私にだってあります。だから、雑誌のアンケートに読みたい作家などという欄が設けてあれば、その人の名前を書くこともある。蒼月ひかりの名を書いたこともあります。そしてまた別の名を書いたこともあります。

私は、まやひろむという人がずっと気にかかっていました。好きだった漫画、けれど私の思いとは裏腹に、その漫画はとうに終わってしまって、お目にかかることもついぞなくなってしまいました。だから、ふと思い出すことあればその名を書くこともあって、しかしこれは未練なのでしょうか。人を思うってことは、やっぱり未練なんでしょうか。

まやひろむという人は — 、そうそう、昔の記事にちょっと触れていたので引用しますよ。

『空にカンパイ!』、『ブックブックSHOW』、『ようこそ紅茶館!!』、『大人ですよ!』、『えびすさんち』を読めた頃が、私と四コマ漫画の蜜月であったと思います。

これらは『まんがタイムジャンボ』に掲載されていた漫画です。先日いっていましたように『おねがい朝倉さん』読みたい一心で講読をはじめた『まんがタイムジャンボ』であったのですが、開けてみればまあ私にとっては好みの誌面といいますか、好きな漫画、好きな雰囲気を持つ漫画がたくさんあったのです。それが先ほどあげました漫画で、けれどあれらは一部、他にも好きな漫画はあって、けれど……、というと愚痴になるのでここはぐっと堪えて、『ようこそ紅茶館!!』を懐かしんでみたいと思います。

『ようこそ紅茶館!!』は、紅茶専門店にて働く春野さんが主人公の漫画でした。これもまた非常にミニマルな四コマで、登場人物は紅茶館アルバイトの春野さん、紅茶館店長さん、そして春野さんの友人リサさん。後はまあゲスト扱いといいますか、こうした最小限度といっていいくらいに限定された登場人物が、限定された舞台において、限定されたテーマに基づくコントを繰り広げる。実に私好みといっていい漫画だったと思います。けど、私に好まれた漫画は早期終了するというジンクスがあります。『ようこそ紅茶館!!』は、雑誌のリニューアルに伴い設定を一新、春野さんと店長という関係はリセットされて、ヤング店長さんなのかな? はやてとになの紅茶館開店ストーリーになっちゃって、ちょっとショックでした。

新設定が気にくわないってわけじゃなくってね、やっぱり私は、そそっかしくて大ざっぱで豪快で、朗らかで元気で素直でミーハーで自然体の春野さんと、完璧主義で心配性で、ちょっとシビアで厳しいところもあるけれど実際は優しくておおらかで面倒見もよくて、見た目キャッチーでちょっとおしとやかお姉さんの店長のコンビが好きだったんです。派手というよりもシックな雰囲気、まとまりある絵柄も好きでした。喫茶店というシチュエーションを生かしたネタの数々も、きびきびとして好みでした。だから当然人気のあるものだと思い込んでいたのですが、実際はどうだったのでしょう。考えるとつらいけれど、見た目に地味で穏当であるがために、まとまった票を得られなかったのかも知れません。けど、仮にそうだったとしても、抜群に面白かったんです。2007年の今読み返しても面白いと思える、そんな漫画なんですよ。

ヤング店長さん編になってからも、私はずっとこの漫画を楽しみにしていて、いつか時が進んで、春野さんのいる時代に追いついたりしたらいいななんて思っていました。そうすれば、ふたつに別れてしまった『ようこそ紅茶館!!』がひとつのものとなって、どちらが好きだなどという不毛なことを考えなくてもよくなる。ひとつの時間の流れの中で異なった層を見せた、そういうことになれば、ベテランになった店長さんと若くまだ経験の浅かった頃の店長(代理)と、多様な側面の見えるのはそれもまた面白かろうなと思っていました。

けれど、私の期待の叶うことはなく、けれど私はそれをただ残念がるわけにもいかなくて — 、やはり好きなら好きと言葉を届ける努力をしなければ通じないのです。私はその努力を怠っていた、自分の好きだという漫画をただ見殺しにしてしまったも同然だから、これらの漫画を懐かしむということは、同時に自分の中に悔いを見出すことでもあります。ええ、悔いています、悔いています。本当に、どうしようもなく悔いているんです。

  • まやひろむ『ようこそ紅茶館!!』

引用

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