2007年9月8日土曜日

ドボガン天国

 真田ぽーりんの『ドボガン王国天国』、いったいこのドボガンってなんなんだー??? あまりのわからなさに『ボコスカウォーズ』みたいなイメージを抱いていて、つまり中世っぽい世界観の話かなと。『ドボガン王国』っていう王国があって、ドボガン王と臣下たちの繰り広げるどたばたストーリー……、どんな話だよ! とか思っていたら全然違いました。ドボガンっていうのは、ペットショップの名前なんですね。なんだか妙に運の悪いどじっ子ヒロインが、ひょんなことで関わり、働くようになったペットショップがドボガンなんです。で、ドボガンってなんだーっ、っていうと、それはちゃんと作中で説明されます。そうかあ、そんな意味だったのかあ、知らなかったよ。って、どうも私の鳥好きもたいしたことないようですよ(ただ好きってだけだから、知識とか皆無なんですよ)。

(画像は真田ぽーりん『必殺白木矢高校剣道部』第2巻)

真田ぽーりんがこの漫画を描くことになったいきさつっていうのが、なんだか『動物のお医者さん』を彷彿とさせるもので、ちょっと面白かったです。『動物のお医者さん』は、なんでか動物を描きたくなってしまう佐々木倫子の嗜好を最大限に発揮させるために企画されたものだと記憶していますが、『ドボガン天国』もまさにそんな感じなんですよ。作者は鳥が好きで、っていうのは過去の漫画からもばればれなんですけど、ほら、『ウチら陽気なシンデレラ』にはアヒルのモルテンが出ていたし、『白木矢高校剣道部』にもルリコンゴウインコが出ていたし、そんなにも鳥が好きなら動物ものでいきましょうと、そういう決まり方をしたんだそうです。で、選ばれた舞台がペットショップ。鳥が出る、犬猫はじめとする動物出る、小動物もしっかりフォローされて、魚も昆虫もなんでもこいといった塩梅で、こりゃいいなあ。私も結構動物好きだから、もう一巻から心わしづかみって感じであります。

しかし、読んでみればですよ、結構シビアな話もあって、作者、本当に動物が好きなんだなあってしみじみ思います。身勝手な飼い主やペット泥棒など、実際にも起こりうる話が展開されて、そしてそこに作者の憤りが感じられて、いやね、『シンデレラ』でも後期そうだったですけど、そうした憤りが大ゴマ使ってどどーんと表現されるんですけど、もうあれは反則だと思う。泣いちゃうんだよ。

もちろん感動だけが売りの漫画じゃなくて、どたばたとした面白さ、馬鹿なこと言い合ったり、わいわいと騒いでみたりの面白さが基本的にあって、そこに動物大好きのショップスタッフのもだえるような動物への愛があふれ返っている、このあたりがこの漫画の最大の読みどころでしょう。そして、この好きというのが無責任で薄っぺらな好きになっていないというのが重要なところかと思います。例えば餌の話、猛禽や蛇など肉食の動物飼うっていうことのハードさがひしひしと伝わってきて、そのハードさに抵抗を感じながらも受け入れている彼らを見れば、ただの楽天的な動物好きではないのは明らか。こういう現実がしっかりと意識されているから、ファンタジーも効果的であるのだと思うのです。ただの夢の話じゃあない。現実とタッグを組んでいる。この世界の延長線上に、こういう現実があったら素敵だろうなあと、そんなこと感じちゃうものだから、大ゴマで泣くんですよ。もう完全にすっぽりと没頭しているところに大ゴマがくるから、決壊してあふれてしまうんです。

ところで、後書きの写真、すごいですね。もう、まんまじゃないですか。ただでさえ鳥みてるだけでうはうはなのに、あの写真は駄目押しでした。最高でした。

  • 真田ぽーりん『ドボガン天国』第1巻 (ヤングキングコミックス) 東京:少年画報社,2007年。
  • 以下続刊

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