2007年9月29日土曜日

マンガ能百番

 本日、能を見にいってきました。券をもらいましてね。父がいくつもりだったらしいんですが、ちょいと都合がつかなくなったからいってこいといわれて、まあ、じゃあいこうかと、京都は観世会館まで足を運んだのでした。しかし能なんてどれくらいぶりでしょう。学生の頃、日本音楽に関する講義でいろいろと学んだことを思い出します。能の歴史、そして様式。大学を出てからもこうした芸能に触れる機会はあって、その度に大学で得た知識に感謝する思いでいっぱいになります。やっぱり知っているということは大きいです。もちろん能をはじめとする各種芸能に明るいとはいえないのですが、それでもまったく知らないわけではない。大ざっぱでも概要を知っている、そうすると取っ掛かりがわかるといいますか、どこから近づいていけばいいのかなんてのがおぼろげにもつかめるんですね。本当、教育というのはありがたいものだと思います。

さて、突然いくことになった能、もちろん演目なんてまったく知らず、ぶっつけ本番ならぬぶっつけ観賞です。けどこういうときに私には助けになってくれる本があります。『マンガ能百番』。以前、日本伝統音楽系の展覧会にいったときのこと、ミュージアムショップに売られていたのがこの本でした。漫画というとコミックス、劇画なんかを想像してしまいがちですが、これはそういう意味では漫画ではありません。絵解きものといったらいいのかな? 能の物語を見開きの2ページに絵解きで表現する。コマにして12コマ、シンプルでしゃれの利いた絵に短いキャプションがついて、これで百番扱ってしまう。はじめてみたときには、正直すごいなと思ったものでした。

能のあらすじを12コマで表現してしまうから、ちょっと乱暴、ものすごい省略がされています。背景とかは絵解きに入るまでに少し触れられるけれど、それも一般的な解説本に比べれば不足しているといわざるを得ず、そういう意味では物足りないと思う人もいるかも知れません。けど、がっつりと読みたい、知りたいという人はそういうものを手に取ればいいのであって、この本は、ざっと筋を知りたい、どんな話かつかみたいという人が読めばいいのです。そう、筋をたどりたいのであれば、驚くほどにシンプルに整理されたあらすじの詰まっているこの本はうってつけです。まずは大きくつかみ、興味が出れば詳細に分け入っていけばいい。またまったく知らない演目を見るにあたって、おおまかに知るにも役立って、能を見にいく機会の多いとはいえない私ですが、その少ない機会にこの本は常にそばにあったように思います。

  • 渡辺睦子『マンガ能百番』増田正造解説 東京:平凡社,1986年。

0 件のコメント: