岬下部せすなという人は、作風としてはわりと地味な方に入る人だと思っていたんです。けれどうまく上昇の機運にのられて、今月はなんと2冊同時発売という快挙。ひとつは『えすぴー都見参!』、もうひとつは『S線上のテナ』。前者が四コマなのに対して、後者はストーリー。また内容にしても、シンプルでほのぼのの『都』に、伏線ばりばりでツンデレの『テナ』。まったくもって個性、見どころを異にしているこの2タイトル。ということは、すなわちそれぞれに異なる面白さがあるということなのだ、そういってもかまわないかと思います。
けど、どちらが好きかといわれると、私は『都』と答えたい。なんでかというと、刷り込みなんかな? この漫画が岬下部せすなという人を知ったきっかけなんです。この漫画はKRレーベルで出ているものの、掲載誌は『まんがタイムスペシャル』、わりとオーソドックスな四コマの載っている雑誌です。そこで連載される『都』は、SPとして直人様(御曹司で好青年!)の身辺警護にあたる美少女剣士都の、ちょっとどたばたで、けどほとんどほのぼのの日常が繰り返される、そういうタイプの漫画であります。だからシンプル。直人様は特に命狙われたりするわけでないし、日常にこれという事件、命のやり取りじみたなにかがあるわけでなく、だからやっぱりほのぼの。都を信頼する直人様と、直人様に心服する都との、心の交流も温かい、そういう漫画です。
でもいくらなんでも直人様、都ばかりじゃ話が広がらない、というわけで直人様のご学友たち(直人様は大学生なのだ)や、都の同僚であるSPあるいはお屋敷付のメイドたち。こうした人たちもからんできて、しかしこの人たちがむやみにいい人ばかりで、特にSPは心配性で可愛いもの大好きで、ネコ(に)まっしぐらといった塩梅。この人たち見てるだけで、頬が緩みます。対してSPたちにはちょっとシビアなメイド諸嬢、でも彼女らにしても都大好きで、着せ替えにしたり甘やかしたりと、もうみんなで都を愛でる。読者も都が可愛いねえと思うところはきっと同じで、都の頑張りの描かれることがあれば、その頑張りをほのぼのと慈しみ、至らぬところあらば、その至らなさもまたよいと思う。まあ、親ばかみたいなもんです。あ、そういえば、都の父も無類の親ばかでしたっけかな……。
ちびっこな剣士、都を愛でながらも、萌えというのとはちょっと違うと思うこの漫画。基本的には日常のほのぼので、そして直人様との微恋愛的な関係もこそばゆく、けどそうした側面はほのめかされても決定的に踏み込まれることのないという、実に微温的な漫画です。だからそうした微温ののりが好きな人なら、きっと気に入るんじゃないかな。そういう私はやっぱり無類の微温好きで、この漫画の持つ程よい暖かさ、たいそう気に入っているのであります。
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