うおなてれぴんは病みつきになる。これは私が『しすこれ』を読んで得た結論であるのですが、なにか事件が起こるわけでもなければ、ドラマチックななにかがあるわけでもない、ちょっとフィティッシュで、コスプレ志向の漫画が、読んでいるうちになぜか気になって仕方がなくなるというのだから不思議です。第一、全身タイツや獣耳、スクール水着に興味を持たない、なんら感慨を覚えない私からが、その緩く畳みかける様にやられてしまう。最初こそはいやいやというかしぶしぶのコスプレだったのが、いつしか当然のごとくというか、日常のありふれた習慣というかになる頃には、その倒錯感がたまらなくなってしまっていて、ああこれが汚染されるということなのですか!? でもまあ、新たな面白さ、楽しさに気付くことが汚染というのなら、いくらだって汚染されてみせます。
しかし、この漫画の第一回を久しぶりに見てみて、のっけから三人が下着姿で乳談義をしているという、その飛ばしっぷりにびっくりというか、でもうおなてれぴんをすでに知っていた私は、この第一回ののりを普通に受け入れたものでしたっけ。多分知らない人の中には、なんじゃこれはと引いた人もあったのではないかと思うのですが、しかし長く読み続けているうちに、汚染されて、このわけわからなさが癖になってしまったという人も多いはず。かつての私がそうであったように、ナチュラルにコスプレをし、そして萌えポイントについて談義、さらには妄想にふけってみせる、そうした彼女たちのよくわからない行動、生態、もろもろに、なんと表現したらいいかわからないおかしみ、興味、共感を覚える自分を発見したのではないかと思います。
この人の漫画の特徴は、それこそ容易に盛り上がらないことだと思っているのですが、別にローテンションでもないけど、決してハイテンションでもないという、ええと、ミドルテンション? そんなの聞いたことないけど、高高度でもなく低高度でもない、普通のテンションを維持するかのような、しかしそれでいて、いってることやってることは微妙に常軌を逸しているというか、そうしたギャップが面白いのかな。ガツンとはこない、けれど気付けば浸透してしまっている。ああ、だから汚染なのかな。変なことばっかりいって、コスプレを強いる先輩ふたり、彼女たちの、自分のいってることはおかしいとわかっていながら、あえてそれを押し通す悪乗りが楽しい、しかもその悪乗りを割と素直に受けてしまう一年生ヒロインがおかしい。そして最後には三人で一緒になって、コスプレでもなんでもやっている、それも妙にナチュラルに! それがなんか笑えてしまって仕方ないんですね。
ヒロインたち三人の所属するのは第2まん研。ということは第一漫研も存在していて、こちらはずいぶんまともというか、普通の人たち。で、例によって部長が第2にライバル意識を燃やすというパターン、かと思いきや、結構類友っぽくて、ええと汚染されているってことですか? また一年生たちは普通に仲がよくて、別に対抗したりはしない。やっぱり微妙なミドルテンションがここにもあって、そうした緩やかな寄ったり離れたりの様子も楽しくて、こうしたところにも私の病みつきになっているという所以があるように感じています。
それはそうと、のっけから下着になった第2の面々ですが、あんまりに普通に脱いでるので、全然いやらしさがないという、そのさっぱり感は特筆ものだと思います。全身タイツや水着など、結構際どく体のラインを出しているのに、エロティックな感じは特にない。これはすごいことだと思います。でも、毒された第一部長が毒されていない一年生にぽろりと研究を持ち出してしまった時、あの拒絶が、今まであらわにされることで消し去られていたエロティシズムを若干取り戻させたように感じて、ああ、私がうおなてれぴんにエロを感じないのは、そのあっけらかんとした解放感、あるいはあまりのナチュラルさのためであるのだと実感した次第です。このナチュラルさがために、この漫画は変に健康的というか、変に健全というか — 、不健全を健全に描くから変だというのですが、しかしそのギャップ、おかしさが私を捉えて離さないのです。
ほんと、病みつきだわ。
ところで萌えポイントについてですが、眼鏡回の裸にメガネなんて超萌えのシチュエーションじゃない
。申し訳ないけど、これには同意せざるを得ませんでした。メガネデコ最高、といいたいわけではありませんが、冬のイベントでのゴスコス — 、眼鏡、デコ、ヘッドドレス、大量の布、最高じゃないか! とまあ、これくらいは普通に強弁したくなるくらいに強力です。いや、眼鏡だからそういうわけじゃないんだ。病膏肓に入るというではありませんか。もう私はこののりに抗うことができないと、そういう次第なのであります。
- うおなてれぴん『まん研』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
- 以下続刊
引用
- うおなてれぴん『まん研』第1巻 (東京:芳文社,2008年),97頁。
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