2008年10月30日木曜日

火星ロボ大決戦!

 火星ロボ大決戦!』、堂々完結です。古き良き七十年代、一世を風靡した巨大ロボットものの雰囲気が、ここにもそこにもあそこにも感じられる、実に希有なスーパーロボット四コマ、それが『火星ロボ大決戦!』です。いや実際、これはなかなか類を見ないタイプの漫画であると思います。全体を貫く大きなストーリーがあり、短いスパンで一区切りつけられるエピソードがあり、そして毎回のネタの流れがあり、四コマごとに落ちがつけられる。なんだストーリー四コマかというなかれ、ここにはロボットものの王道があり、パロディがあり、そしてエロがある。いや、昨日、最近、妙にエロまじりになってきているような気のする『きらら』系列誌だなんていっていましたが、その傾向に先鞭をつけたのは — 、『かみさまのいうとおり!』だとしても、後押しし加速させたのはこの漫画じゃなかったか? というくらいにエロ絡みのネタが多い漫画でした。

でも、それが見事に持ち味になっていて、面白かったのですね。そして、それらエロを上回って熱かったのがロボット同士のバトルでした。ただでさえ紙数を要求するバトルをコマ数に限りのある四コマで扱って、間延びさせなかった。そういう点においても、希有な漫画であったと思います。

間延びしたと感じさせないのは、戦闘シーンにせよギャグにせよ、冗漫にそれを描くのではなく、最低限度の表現で伝えるべきを伝えていた、その整理された表現、展開の妙であろうかと思われます。実際、シーンを繰り返すギャグは多かったし、また落ち優先で流れを止めることも頻繁にあったというのに、肝心の戦闘シーンは基本充実して描かれていたし、大筋が損なわれることもなかった。これはやはり練り上げの結果なのだろうなと思うのですね。あるいは描くべきものを見誤ってなかったということなのかも知れません。

コマ割り漫画にこそ顕著であることかも知れませんが、迫力のバトルを描こうとするあまり、まったくストーリーが進まないっていうことがあります。ですが、『火星ロボ』においては、話が進まないと感じることはむしろ少なくて、これは見開きや大ゴマの概念を基本持たない四コマのフォーマットがためなのでしょうか。毎回8ページ、四コマにして15本、コマ数は60コマか、その最低限決められたコマ数があるため、逆に滞ることがなかったのかも知れないとも思います。小さなコマを目一杯使って表現されるアクションは、ちょっとごちゃごちゃして読みにくかったりすることもあるけれど、迫力において劣るということはなかったと思っています。四コマずつの積み上げが、ギャグに触れ、ストーリーに帰り、またギャグに傾いて、といった感じに右往左往しながら物語を進めていって、実に読ませる漫画でありました。ロボットものの定番がうまく使われる、それが表現を極力切り詰め、読者を引き込む秘訣であったのかも知れませんね。そして、定番の見せ場を期待したら、きれいに裏切られる、その切り返しのうまさ、切れ味が見事でした。

頻繁に挿入されるギャグ、律義に四コマ目で落とされる、そうした要素が、ストーリーの流れを阻害することも多い漫画でした。だから純粋にロボットバトルものを読みたい、そういう人にはちょっと読みにくい、のりにくい漫画であるかも知れないことは重々承知です。ですが、それは『火星ロボ』がストーリー四コマであることよりもパロディ系のギャグ漫画であることを重視しているためと考えれば、仕方のない、むしろ自然なことなのかも知れません。『きらら』系列誌についてよくいわれる、落ちがない、という批判は、この漫画には当てはまりません。ストーリーの流れを重視するか、四コマの様式を重視するか、『火星ロボ』は明らかに後者で、しかしストーリーが軽視されることはなかった、加えてキャラクターの魅力もよく引き出されていた、そのように感じています。

第3巻冒頭のカラーページには、キャラクターと彼らの操るロボットが紹介されていたのですが、そのロボットのイラストがカードダスを彷彿とさせるSDだったところに、ちょっと嬉しさを感じました。以前にもいったことですが、この漫画はロボットものを散々パロディしますが、その根っこにはジャンルへの愛があふれています。それはもう、ほれぼれするほどの愛。よむと みるみる あたまが わるくなる まんがではありますが、そこに愛があるなら、頭なんか悪くたっていいよな! いやむしろ、少年時代がそうであったように、頭悪く没頭するくらいがちょうどいい。賢しく常識人ぶるよりも、頭悪く一緒に楽しむほうがずっといいに決まっています。つまりそれは、全身で楽しさを受け止めようということなんだと思うのです。

  • なかま亜咲『火星ロボ大決戦!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • なかま亜咲『火星ロボ大決戦!』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • なかま亜咲『火星ロボ大決戦!』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。

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