2007年12月26日水曜日

ぐーぱん!

 単行本で確認して驚いたのですが、未理は148センチ。そうか、『とらぶるクリック』の柚の方が小さかったんだ……。それはさておき、榛名まおの『ぐーぱん!』が見事単行本にまとまりまして、やれ嬉しや、祝着至極にございます。やっぱりね、自分の好きな漫画がこうしてまとめて読めるっていうのは嬉しいものですよ。もちろん雑誌は買っているし、今のところ処分する予定はないから、読む気になれば遡って、一から読むこともできますけれど、そうして読む楽しみと、単行本という別媒体で読む楽しみは、やはりちょっと違うと思います。毎月を楽しみに読む楽しみ、後から遡って読む楽しみ、そして単行本の楽しみ。それぞれに違った味わいがあって、そして今日その単行本の楽しみにふけることができたわけです。ちょっと仕合せ気分でしたね。

そうして楽しみに待っていた『ぐーぱん!』の単行本、仕合せ気分は置いておくとしても、やっぱり面白いなあと、そんな感想です。背の低いヒロイン、緊張すると目つきが鋭くなり、そしてバイオレンス。組長の娘、熊を撃退した等々、あらぬ噂が彼女を苦しめるも、けなげに未理は生きていきます! っていうお話。いや、ちょっと違うか。どのへんが違うかは、単行本にて確認くださると幸いです。

ヒロインの未理に、友人の唄子、菜摘が加わっての、和気あいあいと楽しげな学生生活。みんなには誤解されがちな未理だけど、ふたりは未理の本当をよくわかっているから、彼女の素直さをよく引きだしましてね、それが実に可愛い。ですが、もちろん未理の可愛さだけがこの漫画のすべてではないのはいうまでもないことです。

面白さの大本には、少なからずキャラクターの力というものがある、それは確かなことであろうと思います。あるいは属性といってもいいのかも知れませんが、唄子は委員長キャラとして確立した個性が与えられているし、菜摘にしてもちょっとおばかな空気読めないキャラとでもいったらいいんでしょうか、そういう役割がわかりやすく与えられており、しかしこれが悪いとは私は思いません。こうしたある種パターン、テンプレートになっている役割、キャラクターというものは、読者を速やかに漫画の世界に導き、馴染ませるためのレファレンスとして役立ちます。特に一回あたりのページ数も少なく、キャラクターの説明に紙数を割けない四コマにおいては有用な面も多く、最初の数回で読者に面白い、この漫画は読めると思わせなければならない短期決戦的状況においてはなおさらであると思うのです。

おそらくはこうした状況が、きらら系の四コマ誌を読みつけない人にとっては、どの漫画を見ても同じ、読んでもノレないという感想を持たせることに繋がっているのだろうけど、しかしそれでもそれぞれの漫画にはそれぞれの個性というものがあり、面白いと思われるもの、人気のあるものとなれば、他のものとは違うありようを見せてくれます。『ぐーぱん!』にしても、パターンを踏襲するように見せながらも、少なからず他とは違う個性的な顔を見せている。それも初期の段階からそうであったと、というのもあの入れ替わりの激しい雑誌で、ちゃんと第一話を覚えていますからね。目を引かせる、おっと思わせるなにかを間違いなく持った漫画なのです。

榛名まおはパターンの裏をかきます。思いがけない組み合わせを提示する、あからさまな否定をするなど、縁ぎりぎりを出たり入ったりしてみせて、ただのお約束にとどまろうとしません。お約束を理解し、それをかいくぐる。漫画という枠組みを意識させる面白さを提示して、しかもそれが嫌みや内輪受けの感じを持っていないから、すらりと読んでいける。

そして、キャラクターがだんだんに肉付けされていきます。お約束を残しつつ、お約束から脱していくといってもよいものか。登場人物が各自の個性を押し広げていくとともに、ただのお約束にはとどまらない面白さの可能性が増していくのですね。キャラクターが育つといえばそれまでなのかも知れませんが、既存のお約束から、『ぐーぱん!』のお約束にシフトし、そしてお約束にとどまらないダイナミックな展開、逸脱が現れて、それらをまとめるのはほかならぬ、肉付けされ、よりその存在の確かさを強めた未理であり、唄子であり、菜摘です。

そしてここまでたどり着けば、もう独自の世界になっている。他のなにでもない『ぐーぱん!』という漫画の、ユニークな面白さ、楽しさがそこにある。あとは、その世界に触れ、感じ、ともに遊ぶ読者が加われば、もう充分。ええ、私にはすごく充実した漫画であるといっています。

蛇足

もういうまでもないことだと思いますが、鷲頭未理です。彼女は素晴らしいです。

  • 榛名まお『ぐーぱん!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 以下続刊

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