白雪しおんの『にこプリトランス』の第2巻が出ましてね、もちろん買ってまして、読みましたらばもうたまらん。なんというか、すごい密度でにやにやのシチュエーションが押し寄せてくるのです。ちょっと無愛想な
メインのキャラクターである、騎士、せす、りんす、弥深子に加えて、サブキャラクターの魅力というのも馬鹿にできないのです。一言でいえば若林人脈。生徒会長の若様を取り巻く人間関係がこれまたえらく面白くて、恋愛あり、姉弟愛(いや、そっち方面の愛でなくって)あり、そして友情ありといった模様。どんだけ充実してるんですかと突っ込み入れたくなるほどにキャラクターが立っていて、彼らの出る回はちょっと騎士の影も薄くなっているような。いや、騎士が揺らがないでいるから、あの人たちも安心してやんちゃできるわけで、後ろに引っ込んじゃったとしても問題ないか。幼なじみの友人にいじられ、姉にいじられる不遇な弟、若林輝也。いいやつなんだがね、なんだか隙があるみたいで、そこが好き(いや、駄洒落のつもりじゃないよ)。実際、生徒会メンバーやせす、りんすに彼が慕われるのは、その隙のあるところが放っておけないからじゃないかななんて思うですよ。でもって、読者である私もその例外ではないって感じで……、そういえば弥深子やせすもそうなのかも知れないですね。そうかあ、道理で騎士が彼らの保護者みたいになってるわけだ。あ、この彼らには若様も含まれています。
第2巻では、残念ながら若様の姉は一コマだけ、妹さんもでないし、というわけで、楽しみはいずれきっと出る3巻に持ち越しであるわけですが、もちろんこれは2巻が物足りないといいたいわけではなくて、3巻も面白いぞっていっているわけです。過去に出たキャラクター、設定の数々が、さりげなく生かされて、面白さをより深いものに変えていくといったらいいでしょうか。それは第2巻でも実感できることで、さらにいえば1巻においてもそうであったわけで、この少しずつ世界が広がりつつ緻密になっていくという感覚、すごくよいと思います。物語世界が成長していくことで徐々に充足していく。もちろんそれはごりごりの設定主義なんかではなくて、突っ込みどころはあったとしても、そうしたおかしな部分、不思議な部分をも丸ごと愛せるような、そんな緩やかな深まりが楽しいのだと思います。弥深子の赤飯設定なんかはまさしくその代表といってもいいかと思いますが、どう考えてもおかしいんだけど、そのおかしさが面白さの前には問題にならず、むしろ面白さを後押しさえしています。
これは、なんなのだろうなあ。一言でいえば味、作風であるのでしょうが、そうした味がなにに発するのか、私にはつまびらかにはできそうになくて、そしてその言葉にできないところもまた味であるのだと思います。私としては、僕『にこプリトランス』大好きさ! ってことですましてしまってもいいくらいに思ってる。好きとは理屈ではなく、けれど好きになるには理由があるはずと、その言葉にならないところをぐるぐるとまわりながらもっと好きになっていく。白雪しおんの描く漫画には、そういう色があるように思います。
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