ギタレレを買いに訪れた楽器店、その向かいには大きな書店がありましてね、しかも漫画専門店。楽器店の店員が皆応対に忙しそうだったから、ちょっと待ち時間と思って書店をぶらぶらしたのはいいんですが、それで本買っちゃってるっていうのはどうでしょう。買わないつもりだったんですけどね。なのに買った。いつもなら目当ての漫画があるから、手持ちの予算やら感知力やらの関係できっと見落としただろうなあと、そんな風に思った漫画。タイトルは『イン・ザ・スカート』。スカートをたくしあげる女学生が表紙(スカートの中は見えません)、それがあんまりに繊細で儚げで美しかったものだからさ、どうする? 買うか! 二つ返事ではないけれど、それくらいの勢いで購入を決定してしまったのでした。
そして、読んでみて、あらかた覚悟はしていたけれど、やっぱり性描写が無視できないくらいに表立つ漫画で、最初はやっぱり! と思って、回避が正解だったか? などと迷いを見せて — 、いや、別にエロ漫画が嫌いなわけじゃないですよ。むしろ女性が華奢に描かれるものは好きで、だからこの漫画は危険領域に踏み込みそうで、そこが心配だったんです。変な話ですが、雰囲気が好みだったりすると、なんかエロに抵抗を感じたりするっていうことはありませんか? ああ、もう、そこまでで勘弁してください、みたいな感じというか。そうしたら割合寸止めシチュエーションが多くて(8本中3本)、ほっと安心したというかなんというか。純粋性とか、プラトニックへの憧れみたいなものがそんなことを思わせるのかなあ。よくわかりませんが、少なくとも私という人間が身勝手ということだけははっきりしたように思います。
そして、そのプラトニックへの傾きというものは、本の終わりに向かうにつれて強まっていったと思われて、それはおそらく「塔の魔女」の印象の強さなのではないかと思います。類いまれな魔女の少女が最上位の魔道書と契約を結ぼうという話は、残酷なシチュエーションを下敷きにしながら、その表に平和を願う気持ちと自己犠牲、そして純愛的な展開を見せて、ちょっと同人誌くさいといえばその通りなんですが、私にはめっぽう効く、そんな話であったと思います。そして、あのラスト。ちょっとコメディのりも含んで、面白く、ああいいねと思える、優しく甘い終わり方もちょっと好みでありました。
気に入ったといえば、「塔の魔女」もだけど、「ちいさな恋のメロディ」もいい感じで、ああそうか、わかった、私は一途な少年が好きなんだ。自分の好きになった相手に対して、真摯に、真面目に、あるいは愚直に、思いを貫きたい。そうした風が見えるほどによいと思うようにできているみたいです。この本に含まれる短編はどれもそれなりに好みではあったものの、それら特に好みと思えるものが数本あったことで、印象はより一層よいものに変わって、だからもしこの傾向が既作にもあるなら、ぜひ手にしたいものだ。そんなことを思っています。
- 桐原小鳥『イン・ザ・スカート』(ワールドコミックススペシャル) 東京:久保書店,2007年。
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