2007年12月30日日曜日

はなまるべんと!

 漫画に限らずあらゆるものでそういえるかと思うのですが、そのジャンルなりを形成するもののうち中堅にあたる層が、結果的にそのジャンル全体の質を決定すると私は思っています。トップに位置するいくつかだけが抜きんでていて、それに続く中堅が弱いジャンルはトップの失速とともに早晩衰退しそうですし、逆に中堅層が分厚いと、次にトップを担うものも現れやすく、またトップだけではなく中堅にもファンが付く、すなわちそのジャンルを支える読者ないし視聴者ないしもそれなりの層をなすことが期待できるわけで、こう考えてみた時に、はて私の読んでいる四コマ漫画というジャンルはどうなんだろうなんて思ったりしちゃうんですね。中堅層、確かにあると思います。四コマ漫画は、漫画ジャンルの中でも多品種少量生産の傾向が強いと感じていますが、そのため中堅層も広く裾を引いているように思われて、けれどそれらを支えるだけの市場はまだ形成されていないようにも思われて、つまりはそれら中堅層の単行本が出にくいっていってるんですが、ところがここ数ヶ月の芳文社の動向を見ていますと、そうした中堅にあたると思われるものが次々単行本化されて、はたしてこれはいい結果を生むのだろうか? 私は久々にわくわくというかどきどきというか、あるいははらはら? ちょっと興奮気味に眺めているところです。

そして、大宮祝詞『はなまるべんと!』、これなんかも中堅を担う層にあたると思うんですけど、それがこうして思いがけず単行本化されて、よしきた! 私はというと、もちろん買っちゃうんですね。

内容はというと、ヒロインの所属する購買部に果敢なチャレンジを繰り返す調理実習部員あやめの、語るも涙聞くも涙の細腕繁盛記的展開の楽しいどたばたもの(ちょっと嘘)。強烈に料理の下手なキャラクターがいる、これもまたひとつの様式美でありますが、それがほかならぬあやめでして、購買部(これも部活だ!)の売り上げシェアを奪おうと画策、手作り弁当を手に乗り出してくるも、これがなかなかの殺傷力ときたもんだ。かくして購買部の一員にしてヒロイン、おそらくこの漫画でも一二を争う常識人であるちかが手を貸して、だってほっとけないものだから……、そういう具合にだんだんと友情を醸成していく。表立っては語られないけれど、ほのかに見える友達の情、そこを楽しむのがきっといい、そういう漫画であるのですね。

基本的にストーリーはあってなきがごとし、いかにどたばたと右往左往しながら楽しく騒げるか、というショートレンジの楽しみが中心にあります。まさしくコメディらしいコメディといってよく、始まった当初は顧問入れて四人だった登場人物も、徐々にその人数、そしてバリエーションを広げて、ともないどたばたの舞台も広がり、今は購買部だなんだという枠にとどまらない、学校もののコメディとして成立しています。それに、調理実習部の枠は……、げふんげふん、ともあれこれもまたキャラクター主導型のコメディの一形態で、そこには多分にナンセンスの味わいが加えられている、その味わいが好みならばきっといけると思います。ちょっとずつ常識外れのキャラクターを愛で、そうした人たちが主導するわけですから、当然騒動はだんだん常識から遠ざかっていって、けれどそこに打ち込まれる常識の杭、しかしそれは結局は彼女らの暴走を止めることができず、ナンセンスへとナンセンスへと滑り落ちてゆく! 

楽しい。そしてこの楽しさというのはキャラクターというベースが整備され、認知されるほどに増すのですから、単行本で過去の整理がつけばなお連載が面白くなるという、そういう相乗効果を期待できます。それになにより初期の楽しみにもまたこうして触れることができるわけで、そしてこれが中期へと続いてくれたら嬉しいなあ、そんな風に思っています。

ところで、カバー折り返しにある調理実習部式たこやき、あの写真見るかぎりでは、そんなに悪くなさそうです。でも食べるなら、普通のたこ焼きがいいなあ。ああ、たこ焼き食べたいなあ。なんて具合に、ちょっと小腹が空くというオプションもついてます。

  • 大宮祝詞『はなまるべんと!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 以下続刊

0 件のコメント: