2007年12月9日日曜日

うたうめ

 安田弘之の漫画は、よほど気を張っていないと見過ごしてしまいそうで、買うたび買うたびにはらはらします。というわけで『うたうめ』、いつもの店、地上三十階書店新刊棚にて発見。見付ければ買うとインプットされているので躊躇なく手に取って、それでこれがバンブー・コミックスであると気付いたのはうちに帰り着いてからでした。なんと、この人は今四コマ誌で描いてらっしゃったのか。そうかあ、『まんがくらぶ』にて連載かあ、それも一年以上も前から。まったくもって気付いてませんでした。このまま気付かないままでいたとしたら、あぶないところでした。

雑誌で追っていない漫画をまとめて読むというのは、また格別のことであると思います。それも好きな作家のものとなればなおさら。表紙を見ても、タイトルを見ても内容は伺い知れないものの、けれどいったん開いて読み出せば、そこにはいつもの安田弘之の味というものが濃密で、ああやっぱり面白いなあと思います。みそっかすだけどどことなく憎めないウタダ、美人だけど変わりもののウメちゃん、そんな二人が主人公だから『うたうめ』であるわけか。しかし、それにしても安田はこうしたキャラクターがよくよく好きと見えて、特にウメちゃんが典型的。蠱惑的な美女、けれど変わりもの。あくまでも優秀で一種孤高であるのだけれど、変に庶民的なところがあって、どこかに隙を残している。そして私もそうした安田的美女が好きでありますから、やっぱりウメちゃんのことは嫌いでなく、そしてウタダにしても嫌いでない。いいコンビだなと思うんですね。

ウタダは確かにみそっかすに描かれていて、なにをやってもうまくないし、なんかウメちゃんのおまけみたいなあんまりな役回りだし、不憫な娘よのう、だなんて思うのですが、それでもそんなウタダがみじめに見えないのは、ウメちゃんがウタダのこと大好きで、まさしくベストフレンドとしてあるからなんでしょう。ウメちゃんにしても人が悪く、ウタダで遊んじゃうところもあって、結構ひどかったりするんですが、けどウタダのことを一番に大切にしたいと思っているのがわかるから、なんかウタダがうらやましいよね。それがウメちゃんだからそういうんじゃないんです。どんな時も自分の裾を離さないでいてくれるような友達がいるっていうこと、それがもうありがたいじゃないですか。私なんかも、ウタダよろしく、なにやってもうまくいかない組であるんですが、そんなでも、もしウメちゃんのような友達があれば人生はきっと違って見えるのだろうなと、そんな風に思うんです。

でも、これは逆にウメちゃんからしても同じなんじゃないかと思って、自分のことをわかっていてくれる友人がいるっていうこと、ちょっと甘えるようにして、自分の地を出せるような友達がいるっていうこと、それはやっぱり仕合せなことであるよのう。二人にしても、ずいぶんとわかりあっているけれど、完全にわかっているわけでもないというのはよくある話で、けどそうしたすれ違いが日頃には口にはしない本心をはっきりとさせるようなことにもなって、やっぱりそれは仕合せなことであると思う。ウメちゃんがある種の傍若無人さを発揮できるのは、その能力の高さと美貌、まわりにあれこれいわせないオーラがためであると思いながらも、けれどやっぱりウタダがいてくれるからなんではなかろうかとも思えて、いやこれはウタダ側の人間の願望がいわせていることかも知れません。

この漫画読んで、上につらつら書いたようなこと思う必要はなんにもないんだと思うんです。変わりもの女子高生二人組の漫画。ちょっとずれて、マイペースで、かたっぽは人が悪く、かたいっぽは要領が悪く、そんな二人のやり取りに生ずるおかしみを楽しめれば充分です。けれどそこにほのかに友達っていいよねと思わせる空気があるから、そのミックスに頬を緩めるのです。愛犬メロンにしても、隣のガキにしても、屋台のオヤジにしても、みんなちょっと変で、ろくでなしといってもよさようなところもあるんだけど、その変さが絡み合って生まれる味は、やっぱり安田のそれ。面白く、人が悪く、そして人間臭い。この人間臭さってのに引かれているんだろうな。そんな風に思います。

余談

どうやら私はスケベであるそうです。うーん、まあ、否定はしない!

  • 安田弘之『うたうめ』第1巻 (バンブー・コミックス) 東京:竹書房.2007年。
  • 以下続刊

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

わたくし、右のパンチラよりも、左のパンモロの方が気になってしまいます。というか、初見ではパンモロの方しか気付きませんでした。
どうもわたくし、スケベでもヤバイ方向に嗜好が向いているようです。

matsuyuki さんのコメント...

にゃんげつさんにそういわれて、右? 左? 確認してみて、ああー、左ってウタダじゃなくて左ページかあ! と。まったく気付いていませんでした。

まだまだ自分の精進の足りないことがはっきりしました。もっと頑張りたいと思います(なにを?)。