最初のうちは、うーん、これどうだろう、なんて思っていたのに、気がついたら好きになっているものってあると思うのです。慣れた? ほだされた? それとも面白さに気付いたのかな? それは漫画によって違ってる。なので今回は門瀬粗の『とらぶるクリック!!』について考えてみたいと思います。『とらぶるクリック!!』は『まんがタイムきららキャラット』に連載されている漫画、高校PC部に在籍するお騒がせ三人娘のどたばたとした日常を愛でる漫画であると思うのですが、なんといってもヒロインの設定がきています。PCどころか機械が駄目な体質で、なにが駄目といっても、触れるだけで機械を壊してしまうという特異体質。実際にこういう人っているらしいですけどね。帯電体質っていうのか、静電気ため込みやすい(というかむしろ発する?)人は、機械もの壊してしまうっていいますね。でも本書のヒロイン琴吹杏珠は一味違うぞ。だって故障程度ですまされません。きっちり爆発させてしまうという過激さで、でも、なんだ、PC爆発ってなんだか昭和テイストだな!
正直な話、しくじったって思ってるんです。いやね、私、買おうかどうか迷いながら、購入を見送ったんですよ。好きか嫌いかといわれると、嫌いじゃない、けれど好きと明言できない、そういう感じの微妙なライン上にあったっていえばいいでしょうか、ええと、これ第1巻の発売された頃の話、だから2006年9月の話。けど、後悔は先に立たず、なんであんときに買っとかなかったんだ、つまり今は好きだって話です。
キャラクターの個性をつかみあぐねたのが失敗だったかなって思うんです。キャラクターは基本的に五人。先にいった、PC壊す人。ヒロインにしてぼけ担当。ぼけがあるならもちろんつっこみもいて、それが長谷部茉莉。そしてPC部の妖精内藤柚が加わって、後は部長とか副部長とか。そんなに多い人数じゃないんだけど、なんで私はこんがらがってたんだろうって思います。琴吹杏珠に関してはオッケーでした。とりあえずキャラクターは立ってます。でもなんでか後は曖昧としていて、はっきりと区別がつかなくて、だから毎回の連載はそれなりに読んではいたけれど、しっくりときていなかった。そう、きっと一度既刊読み返しをやっていたら違ったんだと思います。ある程度、キャラクターが見えてきた時点で、第1回に遡って既刊を全部読んでみる。これやると、ふーん面白いね、って思っていた漫画が、おお、こんなに面白かったっけか、みたいに一挙に昇格することもあって、『とらぶるクリック!!』でそれやってたら、間違いなく昇格しただろうのになあ。今、遅ればせながら第1巻を手にして読み直してみて、そう思います。
だって、面白いんだ。最初の頃、PC爆発ネタが濃厚だった頃、基本的に爆発落ちの漫画なんだな、みたいにしか読んでなくて、いやね、そりゃ柚のフラッシュメモリが煙出したり、細かいところに面白みが仕込まれてるなあとは思いましたけど、けどその時の私はそこで止まってた。だから買わなかった。遅れて買ったら初版初刷なのに帯がなかった。後悔しています。なんであのとき、カラーページ、後書き、カバー下まで確認していながら買わなかったんだ。わたくしのばかばかばか。まあ、自分の見込みの甘かったことへのペナルティとして甘受するほかないでしょう。
読み直して、第1巻時点でこんなに面白かったんだと思った『とらぶるクリック!!』ですが、けれど本当に面白いのはこれ以降かと思います。私が単行本にまで遡ろうと思ったのは、連載されている今が面白いからに他ならず、新しいキャラクターなつめろを加えて、また部長の秘密もあらわになるなど、けれど面白さは新キャラクターのためじゃない。もとからいるキャラクターの持ってる可能性が、開かれているからだと思います。
PCクラッシャーとあだ名された琴吹杏珠は、まさにその代表格といっていいと思います。当初こそはPCを壊し、自販機を壊し、iPadを壊し、破壊の限りを尽くした彼女、機械に近づくことさえかなわぬ不幸キャラであった彼女が、触っても壊れないコンピュータを手に入れてからは、典型的PC初心者になって、今どきあり得ないほどのピュアぶりを発揮、さらには巨大掲示板に染まり、周囲に痛さをふりまき、友人たちを赤面させる。動いてる、動いてますよ。当初設定から状況が動き出して、キャラクターの持ち味がどんどん膨らんでいっていると感じられて、そしてそれは今もなお進行している最中なのだと思います。第2巻はより面白く、第3巻はそれ以上に面白くなるんじゃないかなあ、なんていう風に思って、だから2巻の出る前に第1巻を入手せねばならないと思ったのでした。
蛇足
さて、そんな遅れてきた読者である私のお気に入りは誰かというと、内藤柚です。小柄、人見知り、コンピュータ得意、実は眼鏡、147センチ! クレバーで明らかに情報系生物でAAAで気を使いすぎで今もなお減っている。オフ会の話は最高だったと思っています。
あ、そうじゃ。まんがタイムきららWebでも『とらぶるクリック!!』は読めまして、その名も『Webクリ!!』。
このWeb連載は、宣伝効果としてはかなり高いものだと思っています。少なくとも私にとっては。ここに出せば、大抵のものは好きになれるんじゃないかな、なんて思う私です。
- 門瀬粗『とらぶるクリック!!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス)東京:芳文社,2006年。
- 以下続刊
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