2007年7月27日金曜日

あねちっくセンセーション

 今日は『あねちっくセンセーション』の第2巻の発売日。ということで地上三十階書店にて買い求めようと探してましたら、なんと『天使のお仕事』の2巻も出ているではないですか。こいつはたまらん、示し合わせたように同日発売と相成った姉コミックスに、戸惑いながらも心は購入と決まっているのですから、私という人間はもう本当にどうしようもない。けれどこれはまだ序章に過ぎないのかも知れません。というのは来月には『アットホーム・ロマンス』の第1巻が発売されるというのですから。しかし一体この状況はなんなのでしょう。今、四コマにおいては姉ジャンルが大人気!? しかも刊行ラッシュ!? 今、市場は、それほどまでに姉を求めているというのでしょうか!?

けれど、ほんと、実際のところ、姉もの増えてきたなと思いますよ。王道のパターンというと幼なじみヒロインとか、まあ幼なじみがなんなら同級生ヒロインでもいいや、そういうのがそれこそ一般であったと思うのですが、気付けば妹ブームというのが吹き荒れて、それでついに姉の時代到来!? その姉というのも優しくて甘々な姉という幻想の産物なんかじゃなくて、兇悪にして傲慢不遜の存在、まさしく人類の敵というほかない、そうした姉が描かれているからまた驚きです。例えば芳文社を見てみると、苛烈な姉漫画が二本あって、ひとつは『あねちっくセンセーション』、もうひとつは高原けんじの『花咲だより』。理不尽、偉そうという、まさしく姉らしい姉。しかし、本当に今市場はこうした姉を求めているというのでしょうか? 私にはわからない、私にはわかりません!

といいながら、『あねちっくセンセーション』買ってるんですから始末に置けないというんです。好きかといわれれば、迷いも躊躇もなく好きだと答えることでしょう。実際、連載を楽しみに読んでいるのも事実であるし、こうして単行本が出れば買って読んで、やっぱり面白いなあと思って、そしてこの面白さ、2巻は1巻を上待っていると思います。

2巻が1巻を上回った理由は、姉さくらの弱点が次々と発覚していって、いつまでも弟春人は負けてばかりじゃないぜ。いわば対等になれる可能性が出てきたっとこじゃないかななんて思うんですが、まあそれでも可能性は可能性に過ぎなくて、弟は負けっぱなしだなあ。その結局は負けちゃうところがいいといったらおかしいけれど、和気あいあいとほたえて、紙一重で負けておくという、そこに弟の美学があるような気がしませんか? この漫画は実際そうだと思います。姉が嫌いなら弟はこうはならない、姉にしても、弟が嫌いならああはならないでしょう。けれどお互いに好きのどうのと言葉にしないのが姉弟というもので、じゃあその肉親の情はどうやって確かめられるかというと、結局は拳で語るしかない、いやごめん嘘、拳じゃなくて命令と服従だな。もちろん弟だからといって理不尽な命令なんでも聞くなんてことはなくて、適当に抵抗したりするんだけど、姉もしたたかだから、どの程度ならいうことを聞かせることができるかという、その許容範囲を知っているんですね。だから一種馴れ合いだと思う。馴れ合いの中に、約束事として成立した服従があって、そこでは指令と遂行が互いの信頼を確認しあうためのコードとして機能しているのです。

こうした感覚を持っているものとしては、『あねちっくセンセーション』は実に面白いのですよ。さくらと春人には姉と弟のコード体系があるように感じられて、春人がさくらをおちょくるのは、きっとかまって欲しいというサインなのだろうし、そしてさくらが春人に常勝するのも、春人の負けることによってポジションを安心させるという、そういった機構における約束なんだと思うのですね。もちろんこうした約束は姉弟によって違いがあるし、強度もそうなら、適応の範囲も異なるのが普通だと思いますが、『あねちっくセンセーション』では三種の姉弟関係を持ち込むことで、姉弟の約束事の多様性を満足させ、そして中心に据えられたのは典型的な姉弟の関係。基本がしっかりしているから、絵空事が絵空事と思えない。慣れたコードに近しく描かれる展開に、私は言い知れぬ安心を覚えるのであると思います。

蛇足

さくらもいいですが、撫子がいいですね。あの不死身という設定。あれは面白いわ。ちょっとひねった設定加えて、そこから面白さ、おかしさをひき出すことにかけては、この人はかなりのものだなと思います。

なのに、第3巻で完結予定!? そりゃないよ。できたら続いて欲しいなあ、無理ない範囲でなんて思う私は、まだこの漫画の面白さに浸っていたいようですよ。

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