『ふたご最前線』の面白さは、大人顔負けの口をきく双子、南帆と北斗の兄妹のかわいさ、魅力、生意気さやらもろもろが大きな要素を占めていると思うのですが、もちろんそれ以外の人たちもいい味を出してるなと思うのです。たとえば南帆、北斗のお母さんであるとか、この人ずぼらで横着で、なんか欠点だらけに見える人なんですが、けどそんな薫さんが生き生きとして魅力的で、ああ、かわいい人だなって思う。これは、薫さんにとどまらず、他のキャラクター、南帆北斗の祖母もそうなら、二人の通う幼稚園の先生たちもそうですね。出てくる人が、皆どこかに癖があって、欠点もあって、けれどそうした部分も含めてかわいく、魅力的で、だからずっと好きでいるのだろうなと思います。実際、第5巻が出て、最初の頃から比べると双子もまた漫画の世界もずいぶん育っていますが、それでも好きという気持ちが変わらないのは、登場人物たちが伝える魅力、その関係性の面白さにぶれがないからなんだろうと思います。
関係性の面白さったらなんだろうかなというと、それは例えば南帆の内弁慶であるとかで、普段は、特に北斗相手にしている時はあんなにのびのびとして、乱暴なのに、北斗がいなくなると途端に引っ込み思案になって、あかんたれになって、ああ、もう、かわいいなあ、って思うんだけど、こういう性格の人って確かにいますよね。とりわけ子供なんかだと顕著で、そういえば私の姉は子供時分、私を使って突破口を開いていましたっけ。道を聞かせるとか、買い物をさせるとか、人見知りだったんだと思うのですが、弟を鉄砲玉かなんかだと思ってる。多分、南帆は北斗のこと、鉄砲玉だと思ってますね。安心して甘えられる、甘えているからこそ居丈高に振る舞って、そんな南帆はかわいいなあ。
南帆だけじゃないんです。どの人からも、ああそういう人っている、そんな感じが得られて、しかもそれがうまくコミカルにデフォルメされているから、現実だったらいやかも知れない性格でも、すごくチャーミングと感じられて、こうのは大人側に顕著ですね。最前からいっているお母さんなんかは、その典型例かも知れません。そしてチャーミングといえば、子供に人気がないことを気に病んでる先生、北斗に慰められてるのはどうだろうって、北斗、どんだけ気の回る男なんだ、といいつつ、あいついいポジションだなって思ってたのは内緒です。ともあれ、大人子供問わず、言葉行動のはしばしに本音が見え隠れして、またそれが近しさをぐっと増さしめるものだから、ちょっとしたことに、ああこの人らしいなあってくすっと笑ってしまうのです。
コミカルが持ち味の漫画で、表現されるもろもろは、おそらくはキャラクターに強く依存することなく、しかしキャラクターについて知るほどに面白さを深める、そうした性質を持っています。そして私はその性質にひたすらに引きつけられて、楽しいは、面白いは、かわいいは、大変です。だから私はこの漫画が好きだといってはばかりません。
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