今日、ゲームセンターでQMAをプレイしていた時のこと、エフェクトクイズで次の地名を読めというのが出ました。それは閖上。私はこれをみなかみと読み、見事間違えました。しかし、私はこの名前について知っていた。もっと正確にいうと、この文字の成立した由来を知っていた。この閖という文字は、おそらくはここ閖上でしか使われていない。なぜなら閖は、この土地を訪れた仙台藩主伊達綱村によって作られたものだから。それまでこの土地、正確にいうと浜には漢字があてられずにあったといいます。それが、この殿様の思いつきでもって漢字が作られた。それも、意味によるのではなく、大年寺山門を通して見る浜、打ち寄せる波を見て作った。いわく、この門の内側から水が見えるから、今後は門の中に水を書いて、『閖上』と呼ぶようにせよ
。だから、一般の漢字の読みのルールが通用しない文字なのです。
私のこの知識は、阿辻哲次の『漢字を楽しむ』で得たものです。この本を読んだのは、このBlogによれば2008年4月6日ごろ。おおう、半年も前じゃねえよ。閖上のエピソードは、この本の第三章「漢字を作る」の第一節「漢字を作った人びと」の前半半分ほどを使ってしっかり語られていて、その成り立ちの面白さ、読めない文字が、それこそその土地の名前でしか使われない文字が存在するという面白さに、ぐいぐい引き込まれて読んだのですが、しかしすっかり忘れてしまっていたんですね。ああ、わたくしのばかばかばか。というか、本読んでる甲斐ないなあ。それこそ、しっかり覚えとけよといった話です。
この本は、漢字について語りながら、しかしそのスタンスは実に自由でしなやか、読んでいるだけでわくわくと楽しくなってくるような、そんな感触が実によかったと思います。一般に信じられている、正しい漢字。はたしてそれはなんなのか。はねやとめを間違えたがために間違いとされる。そういうのって実際どうなのか。学校の漢字テストで、重箱の隅をつつくような採点をされて、漢字なんて嫌いアル~! となった人はきっと多いはずで、けれど実際の漢字はそんなちゃちなもんじゃないんだよ。もっと鷹揚で、それこそダイナミズムにあふれた、今もなお生きて発展しようとしている、そういうものなのだよ。そんなメッセージにあふれていて、本当に面白い本でした。漢字に興味を持っている人はもとより、漢字をわかっているつもりでわかっていない人、それこそ国語の教師あたりに読んでもらいたい本であると思っています。
さて、冒頭の閖上について書いておきましょうか。これ、ゆりあげと読むんですってよ。もともとの由来は、貞観十三年(八七一)のこと、この海岸に観音像がどこからか漂着し波に「ゆりあげ」られていたのを漁師が見つけ
たことからだそうです。ああもう、素直に揺上でいいじゃんか! とはいうけれど、それではきっとクイズの問題にもならないし、こうして本に取り上げられることもなかったでしょう。つまり私が閖上を知ることとなったのは、その難読であるがためということ。これもまた縁であろうかと思います。
閖上は、宮城県名取市の東部、太平洋に面した土地なのだそうです。名産は赤貝、海産物の美味しいところらしい。日祝日には朝市も開かれるそうです。仙台からも近い場所。こうして聞くと、一度いってみたくなりますね。もちろん大年寺の山門から浜を眺めるんですよ。
- 阿辻哲次『漢字を楽しむ』(講談社現代新書) 東京:講談社,2008年。
引用
- 阿辻哲次『漢字を楽しむ』(東京:講談社,2008年),168頁。
- 同前,167頁。
2 件のコメント:
閖上は家のすぐ近くですよー。確かに海のものはうまいかも知んない。
ホッキとかもうまいですし、シャコエビも旨いです。
もうまもなく仙台と言うところですね。
山の方にお住まいかと思っていたのですが、海にも近いのですか。いいロケーションですね。
京都は海の近くではないので、美味しい海産物食べたければ、ちょっと出ないといけません。だから海沿いの街などは、旅情を感じさせてくれるのです。
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