『ダブルナイト』が始まった時は、女装美少年か、ふーん、割と冷静に読んでいて、けれど最初はあんまりぱっとしない感じであると思っていました。髪の長い女子校出の女の子、きっぱりと凛々しいしゃべり口がいいななんて思ったりはしたのですが、その割には没個性的に感じます。でもそういいながらも、第一回をきっちりと、その話の流れから、また印象にいたるまで覚えていたというのですから、無個性であるとか無味乾燥であるとか、そういう風にいうことはできません。あまり尖った自己主張はないけれど、しっかりと記憶には残る、そういうタイプの漫画であるのかも知れない、そんな風に思っていて、だから印象としては不思議。不思議と引きつけるものがあるみたいです。
そんなこといって、どうせ作者が玉岡かがりだから覚えていたんだろう。そうおっしゃる方もいらっしゃるかも知れません。玉岡かがりというと、『ぼくの生徒はヴァンパイア』の方ですね。ええ、私が結構好きだといっていた漫画、もちろん今も好きで読んでいます。けど、『ぼくの生徒はヴァンパイア』の作者だから印象に残った、それだけはありません。なぜかというと、単行本が出ると決まるまで、『ダブルナイト』の作者が誰か気付いていなかったのですから! ひどい! ひどすぎるよ! 本当に? と聞かれたら、本当にと答えるほかありません。それくらい意識せずに読んでいて、なのに覚えている、だからやっぱりどこか引きつけるところのある、そういう漫画であるというのです。
あまりに女っぽい女性は好きでないといっている私にとって、釣り好き? でさっぱりとしたヒロイン稲穂はすごく魅力的でありました。見た目はすごくフェミニンだというのに、口調、そぶりにはそうしたところがなく、非常によかった。見るほどに素敵だと思う。で、この稲穂が、もう一人のヒロイン(?)、ユキちゃんに言い寄られて、まごまごしたり、どぎまぎしたり、かわいい子は好きだなんて最初いってたのに、男と判明したら付き合う距離がわからなくなって、なのにいつの間にか気になってしまったりと、その態度の移ろいがよいのかもなあ。そんな風にいってますが、結局は稲穂がかわいいなあ、それに尽きるのかも知れません。
そして、ユキちゃん。最初は、ちょっとうっとうしいキャラだったかも知れません。自分の気持ちにまっしぐらといいますか、すっかり女の子として振る舞っているけど、そして周囲もそれを受け入れているけど、なんかその雰囲気に最初はついていきにくさを感じていて、そう思っていたら、あれよあれよとユキちゃんのキャラクターが変化していって、事故から男っぽさを、間違った方向で、取り戻したり、また女の子っぽく戻ってみたけど、それはそれでまた違ったキャラクターになってたり、連載で読んでいた時は、はたしてこれは迷走しているんだろうか、どうなんだろうか、よりいっそうついていきにくく感じて、はらはらしていたんですが、単行本で読むとこの紆余曲折が意外と大丈夫。面白く読むことができて、それは一度経験していたからなのか、それともこの漫画の楽しみ方を身に付けていたからなのか、そのへんはちょっとわかりませんけど、面白かった。素直にそう思います。
主要キャラクターは四人、プラスちょこちょこ出てくる人たち。ヒロイン連では稲穂、いぶき、花音が好きですが、花音はあのシビアな感じがいいですね。それは置いておいて、彼女らヒロインよりも、いぶきについている執事、じいがいい味出していると思われて、もう、あの人もっと暴走してくれたらなあ、『スタミナ天使』の天河、『ルナティック雑技団』なら黒川、変態ばっかりじゃないかっていわれそうですが、先達の変態執事に負けない活躍を期待している私がいるのです。そういえば、『DEATH NOTE』のワタリなんかも、わりと変態執事的ポジションだったかも。どうやら私は、変態執事が好きなようでありますよ。
- 玉岡かがり 『ダブルナイト』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
- 以下続刊
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