2005年8月28日日曜日

DEATH NOTE

   コミック・バトン企画「今おもしろい漫画」第三弾はもう皆さんご存知の『DEATH NOTE』。ってももちろん知らない人もいると思いますから説明しますと、名前を書かれたものは死ぬというノート「DEATH NOTE」を手にした夜神月の壮大なる野望が成就するかあるいは妨げられるのかという、スリリングにして息詰まる頭脳戦が熱い話題沸騰の漫画なのです。っていうか、これ、少年ジャンプに連載されているのですが、これはジャンプ史上というか、少年漫画史上に残る異色のアンチ・ヒーローものであると思います。もう、ばんばん人が死にますからね。こんなんが少年誌に載るんですから、世も末かと思います。

世も末! じゃああんたはこの漫画が有害指定でもされればいいっていうんですか!? みたいに聞かれたら、いやもちろんそんなわけはなくて、結果的に面白ければいいのです。一昔前の少年ジャンプといえば、友情努力勝利、戦いを通して友情をはぐくみ、切磋琢磨しあいながらの成長ストーリー、みたいなのがテンプレートにされていて、一時はみんなで天下一武道会、じゃないや、トーナメントを繰り広げるというのが相場になってましたね。正義は正義としてわかりやすく描かれ、友情も友情として明白に、けれどもう少年誌といえど、そうしたわかりやすい線引き、カテゴリわけだけではもたなくなったんだろうという現れが『DEATH NOTE』なんじゃないかと思います。

意欲作だと思うのですよ。自分の理想を最上位に置く主人公が、友情や家族や恋愛よりも、自身の思想を優先させて、はたしてその思想が正義であるのか悪であるのかも判然としない。旧来の安心安全的枠組みは影も形もないわけで、下手をすると総すかん袋だたきされる可能性さえあるのに、アンチ・ヒーローの世直し物語を堂々展開するのですから、それだけの覚悟があっての連載開始だったのだと思います。

少年誌的お約束はあり得ません。友情なんてとんでもないし、努力ったって主人公は最初から完成された人間として描かれてるから、そんなのもはや必要ない。残るものは勝利だけなのです。主人公が勝利するのか、あるいは屈服させられるのか、そのどちらであるかは今もって闇の中で、だから私はこの漫画の先を読めないでいます。一寸先は闇、いったいなにを出してくるかわからないという状況の中で、主人公月の開始したゲームの展開に翻弄されるばかりです。そして、ある種大風呂敷を広げてみたこの物語がどういう決着をつけるのか、それが楽しみです。

恒例の蛇足でもやりましょうか。私はレイ・ペンバーがいいなと思っていまして、だっていい男でしたからね。ただ重要なのはこの人の行く末で、少年誌的お約束でいくならば、こういう人はぎりぎり最後の方までまもられると決まったようなもんです。でも、そういうのが通用しないのがこの漫画だから、 — とか思っていたらやられました。第2巻で、第2巻で、なんと! 婚約者がいたことが判明ですよ!! なんてこったい、この泥棒猫め!

冗談です。

そうそう、英語版も出るみたいですね。きっと人気になるだろうと思います。そういえば、中国ではデスノートが売り出されていて(きっと非正規ライセンス品だ)、ちょっとした社会問題になっていたとか報じられていましたね。

  • 大場つぐみ,小畑健『DEATH NOTE』第1巻 (ジャンプ・コミックス) 東京:集英社,2004年。
  • 大場つぐみ,小畑健『DEATH NOTE』第2巻 (ジャンプ・コミックス) 東京:集英社,2004年。
  • 大場つぐみ,小畑健『DEATH NOTE』第3巻 (ジャンプ・コミックス) 東京:集英社,2004年。
  • 大場つぐみ,小畑健『DEATH NOTE』第4巻 (ジャンプ・コミックス) 東京:集英社,2004年。
  • 大場つぐみ,小畑健『DEATH NOTE』第5巻 (ジャンプ・コミックス) 東京:集英社,2005年。
  • 大場つぐみ,小畑健『DEATH NOTE』第6巻 (ジャンプ・コミックス) 東京:集英社,2005年。
  • 大場つぐみ,小畑健『DEATH NOTE』第7巻 (ジャンプ・コミックス) 東京:集英社,2005年。
  • 大場つぐみ,小畑健『DEATH NOTE』第8巻 (ジャンプ・コミックス) 東京:集英社,2005年。
  • 以下続刊

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