Blackbird fly, Blackbird fly —
ラジオから聴こえてきた女性ボーカルに手をとめること数度。シンプルなギター伴奏に少しハスキーな歌声がすごく心地いいうねりになって、あまりに魅力的だからタイトルを確認したら、Blackbird。そうだ、ビートルズの『ブラックバード』だ。覚えのあるメロディ、時々に口に上る歌詞も印象的な『ブラックバード』。ブラックバードは、アイリッシュ系のフォークソングではよくモチーフにされる鳥で、名前の通り黒い体に、そして美しい声でなく鳥なのだそうです。
歌っているのは、サラ・マクラクラン。『アイ・アム・サム』という映画で使われたため、この映画のサウンドトラックに収録されています。
私は映画は未見なのですが、聞けばビートルズナンバーを要所要所に使った、ビートルズ・トリビュートといっていいような映画みたいですね。そのため、サウンドトラックに収録されるのもビートルズナンバーばかりでして、当然アルバムもトリビュート盤に仕上がっているんですね。
聞き覚えのあるビートルズのナンバーが、様々な個性を持ったアーティストにカバーされたことで、また違う顔を見せて、もはやビートルズとは古典であるということをまざまざ見せつけてくれるのですよ。ロックでありながらただのロックではない彼らの音楽は、ビートルズという起源を離れても、なお充実して豊かな音楽の源泉になっている。これはすごいことだと思いますよ。
彼らが活躍していた時代には、彼らの曲は最新のモードとして世に受け入れられて、いうならば流行曲であったわけですが、しかし数多ある流行曲のなかで、今のビートルズの位置を得るような音楽は多くはないのです。はやりとともにすたるのがたいていで、しかしビートルズの音楽は時代や地理的な距離を越える力を持っていたんですね。思えば、今も残る名曲とされるクラシック音楽についても、こうした道をたどったのでしょう。その時代その時代に生まれ、新たな領域を切り開いたものが次の時代には古典として受け入れられる。こうした体験を生身で体験できた先の世代に、私は少し嫉妬するような気持ちがします。
私にとっては『ブラックバード』があまりに印象深かったのですが、他のカバーも名演ぞろいで、原曲を比較的忠実に再現するようなものもあれば、新たな息吹を感じさせるようなものまで、その広がりはなかなかのものです。
映画を見たことがなくとも、サウンドトラックだけで充分に独り立ちできる力のある、魅力的なアルバムであるとうけがいますよ。
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