2005年2月3日木曜日

スーパーメイドちるみさん

 師走冬子はサービス精神が旺盛で、漫画のカバーをはいでみると、その片鱗を見ることができると思います。『スーパーメイドちるみさん』では、作中の小説『火星人と今日子と醤油』の漫画が掲載されているのですが、すごいのはそのゲスト陣。作者の友人知人関係が駆使されて、思い掛けない人の思い掛けない漫画を見ることができるんですよ。一粒で二度おいしいといいますか、ちょっと得した気分というか。いや、それよりも、楽しんで漫画を描いてるんだということが伝わるようで、それがなんだかむやみにうれしかったりします。私は、あんまりにやり過ぎのいちびりは嫌いですが、こういうカバー裏の楽しみは大好きです。

『ちるみさん』第4巻のゲストは倉田ジュリさんでした。私、この人の『おサケの星座』が大好きだったんですね。お酒が好きで、ずっと飲んでる女の子二人組の漫画なんですが、まったくの駄目な人たちで、けれど憎めない味があって、そこがすごい魅力なのです。

鶏のめぐみを愛しちゃってるとりや(なのに焼鳥屋)も、酒が入ると人が変わって温厚になる竹島も、みんなそれぞれに駄目な人たちなんだけど、その駄目さをお互いに理解し合って受け入れているというか、駄目は駄目として、けれどよい部分をきちんとわかっているというか、そういう関係がすごく暖かくてよかった。ギャグの勘所を心得ているというか、漫画も面白くてすごくよかった。

だから、私、この人の漫画、大好きだったんですね。だから、『ちるみさん』の中表紙ゲストとしてこの人の名前を見付けて、すごく嬉しかった。嬉しかったんです。

私は知らなかったのですが、倉田さんは長く患ってらっしゃったのだそうです。『おサケの星座』が隔月連載なのを見ては、こんなに面白い漫画がなんで隔月のゲスト扱いなんだと、ずっと雑誌社の不明を疑っていました。ですが、そうではなく、体調を心配していたための隔月だったのだそうです。

その倉田さんが、先達て旅立たれたとのことです。私にとっては、思い掛けないところでお目にかかり喜んだ矢先の報で、あまりにショックな知らせで、一時は知らないままのほうが良かったとさえ思いましたが、ですが今では知ることができて良かったと思っています。あまりに悲しい事実でありますが、知ることができたおかげで、私は悲しみを感じ、思いを巡らすこともできたのですから。

私はこのことを知らせてくれた人に感謝し、そして先にゆかれた方のご冥福をお祈りしたいと思います。ひとつの才能が失われたことと、才能にあふれた人の旅立たれたことに、哀惜の意を表します。

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