2005年2月14日月曜日

ぴっぴら帳

  私はしゃべる鳥は飼ったことないんですが、子供の頃、近所に九官鳥飼っているお家があって、天気のいい休みの日には、鳥と遊びにいったりしてました。まあ、子供ですからろくな言葉教えないんですけどね。さすがに得意な言葉はクソババア!!ってことはありませんでしたが、確かに名前はキューちゃんだったような気がします。

と、こんな風に書けば『ぴっぴら帳』は九官鳥の漫画みたいに思えますが、さにあらず、ある日キミちゃんの生活に迷い込んできたセキセイインコのお話です。

作者は『こっこさん』のこうの史代で、『こっこさん』はストーリー漫画でしたが、『ぴっぴら帳』は四コマ漫画です。作者独特のおかしみは四コマにおいても健在で、安定したテンポでネタ振りと落ちが交替する四コマの味わいをしっかり堪能できるんではないかと思います。やっぱりストーリーの形式とはちょっと違った感じがあって、大ゴマもないしページをめくる前の溜めもないしで、より穏やかな感触があります。でも、基本的なところは共通しているから、この二タイトルを手にしてみれば、様式を問わない作者の個性というものがよく見えてくるのではないかと思います。

『ぴっぴら帳』のおかしいのは、インコのぴっぴらさんやジャンボ、カナリアのかな子さんらの仕種もろもろももちろんそうで、いやあ鳥のやることなすことというのはどれほど面白いんでしょうか。けれどこの漫画の面白さはそれだけじゃありません。そうした鳥たちも含めた、登場人物の思い掛けない個性が面白いんですね。

小さくておとなしくて可愛らしいキミ子ちゃんの趣味好み、飲むと出る癖の意外さ、ダイナミックさ。キミちゃんの働くいのうえ食堂のおかみさんの特技、おやじさんの技術(渾身のイチゴショートを見よ!)。

素朴な絵柄にありきたりの中身を期待したりしてると、足下をすくわれるおかしさがあります。まず発想が面白いし、そのアイディアを余すことなく絵に写している、そのこともすごい。もう私は、すっかりファンになってしまいました。そうなんです、ここ数年むやみに嘘臭い広島弁を使いはじめたのは、こうのさんのせいなんです。

しかし、それにしても各扉にあらわれるキミちゃんは可愛いです。飾らない素朴な美しさに、ときには色気も感じさせて、ああこんなお嬢さんが身近にいたら放っときゃしないのになあ。

  • こうの史代『ぴっぴら帳』第1巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2000年。
  • こうの史代『ぴっぴら帳』完結編 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2004年。

引用

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