2005年2月12日土曜日

それは十姉妹

私は動物の中では鳥が一番好きで、野鳥も好き、愛玩用の鳥も好き、カラスでさえ好き、当然水炊きも好き。子供の頃は、白文鳥を飼っていたんですよ。私が幼稚園から帰ると、母がなんかばたばた騒いでて、鳥を部屋に閉じこめたというから網をもって捕獲したのが最初でした。それがわが家に鳥がやってきたはじめてのことで、ペットショップから雌を飼ってきて、卵から帰ったひなをまた育ててという、小鳥を飼ったことのある人ならわかる、お定まりのコースをたどったのでした。

天気のいい日は、鳥カゴの前で鳥に話しかけたり歌ってあげたり、懐かしい思い出です。

十姉妹は、いとこが飼っていました。十姉妹も可愛いですよね。なんかぴーちくぱーちくしてるばっかりの鳥ですが、鳥カゴの中にいっぱいいるのを見てると、無性に嬉しくなってきます。鳥好きならわかるはず。鳥は見てるだけで楽しいんです。

さて、その鳥の生態を観察して漫画にしたのが『それは十姉妹』。著者が、自分の飼う十姉妹を見たまま淡々と描写したものでして、脚色というものは基本的に存在しません。けれど、こうした鳥っていうのは、それ自体がドラマなので、脚色なんていらんですよね。鳥の、なに考えてるかわからない毎日が、ただただ続くだけの仕合せ。そして、鳥の儚い命もまた深く印象に残って、寿命は仕方ないと思いますが、それでもその日特に寒かったとかそういうことがあれば、可哀相なことをしたという後悔が募る。ええ、私のうちで一番長生きした文鳥というのは、私が幼稚園のころに捕まえたというまさにそいつであったのですが、最期の夜は冬の冷えた夜で、しかも毛布を掛け忘れた。もう充分長生きではあったのですが、可哀相なことをしたという気持ちは長く残りました。

私にはそういう鳥の思い出があるからか、『それは十姉妹』はすごく面白く読めました。しかも、作者の観察も精緻で、よくよく鳥を愛していることがわかる。だから、本当に面白いんですね。私は中途半端な愛し方しかしてなかったんだなあと思いました。

私は、死なせてしまうのがいやなので動物を飼おうとは思わないのですが、基本的には好きなんです。本当は飼いたいけど、動物を不幸にはしたくないから飼わない。だから、飼いたい気持ちをこうした漫画で慰めているのだと思います。

  • たかの宗美『それは十姉妹』(アクションコミックス) 東京:双葉社,2003年。

0 件のコメント: