毎月10日からの週はすっかり寂しくなってしまって、かつては12日にジャンボ、13日にラブリー、16日にきららミラク、そして17日にはファミリーと、立て続けに四コマ誌の発売される濃密な週であったのが、今はもう昔、十日間もの間、まったく雑誌を買わない週と変わり果ててしまいました。ジャンボ、ファミリーが休刊して随分たつというのに、いまだに12日、17日になると、なにか忘れてしまっているような感覚にとらわれて落ち着きません。かつて落ち着かなかった13日、16日は、残念といっていいのでしょうか、もうすっかり雑誌の発売されないことに慣れてしまって、時のたったことを思い知らされます。
私が四コマ雑誌を読むようになったのは『まんがタイムラブリー』がきっかけでした。バイト先の控室に放置されていたラブリーを読んだのが運の尽き。自分の知っていた四コマ誌とは随分毛色の違った誌面に、へえ、こんなのがあるんだ。ゆるいギャグ、可愛い絵柄、いわゆる萌えとまではいかないけれど、四コマ専門誌といえばどこか古くさい、そうしたイメージを払拭するには充分な意外さでした。
たまたまラブリーを手にして、それで講読するまでになったのは、気になる漫画があったからです。見た目こそは可愛いのに、シュールというかナンセンスというか、どことなく不穏な雰囲気のにじむ漫画。千葉なおこの『OLパラダイス』。これがどうにも印象に残って、だって、主役というかヒロインというか、広田さんがどうにもつかみどころに欠けるキャラクターで鮮烈。この人だけ、セリフがすべて書き文字で、ふきだし使わないでしゃべっているのもなにか異質さを感じさせて、全体としてはほのぼのオフィスものだというのに、なんだろう、ちょっと落ち着かないんですな。
こうした、ちょっと普通じゃない感触を混ぜてくるのが千葉なおこのテイストだったんだろうなあって思います。当時、他にもいろいろ人気の漫画はあって、一癖あるもの、ひねったものも当然あったのだけど、千葉なおこみたいにじわじわとハズしてくる感じはちょっと珍しかったと思う。なんか特別で、そこが人気の理由だったんだろうなあ。
千葉なおこは芳文社からは4冊単行本を出しています。『ラブリー』のみの掲載で、1巻は1999年。充分に原稿が溜まった状態だったんでしょうね。予想以上に売れたのか、2000年、2001年と立て続けに単行本が出てるのがその人気をうかがわせます。この頃のまんがタイムコミックスはひと月に3冊しか出なかったのに、コンスタントに枠を獲得してるところから考えても、きっと読者から支持されていたのでしょう。
『OLパラダイス』の完結後、『オクトパスサーカス』という漫画がはじまったのですが、これが第2話掲載をかぎりに休載。『まんがタイムきららキャラット』に『一日一禅』が載ったのを最後に、千葉なおこは芳文社の雑誌からは姿を消したのでした。これ、当然続くと思っていた漫画が突然載らなくなったことに当時読者は困惑していろいろ憶測したりしたものでしたが、なにしろ続報がないものだから、これ以上はどうしようもない。描けなくなったのか、描きたくなくなっただけなのか、なにかトラブルがあったのか。別名義で活動していることは知られていたけれど、芳文社での活動が再開することはなく、今にいたります。
今となっては千葉なおこを覚えている人も少ないかも知れません。ですが、少なくとも私にとっては、一時代を代表する作家のひとりです。
2 件のコメント:
千葉なおこ氏、懐かしいですね。
昔は千葉氏のほかにも、森村あおい氏や丹沢恵氏などが、OL4コマものを連載していた時代がありましたが、今ではジャンルとして衰退、最古参の「OL進化論」だけでしょうか。
オフィスを舞台とした働く女性主役の四コマは今もあるけれど、『OLパラダイス』の頃のOL四コマものとはまた違ったものになってるように感じますよね。こうした変化は社会における「OL」像を反映してるのかも知れませんね。今どきは働く女性のことをOLと呼んだり、そうそうしないですしね。
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