2018年9月17日月曜日

カントリー少女は都会をめざす!?

 『カントリー少女は都会をめざす!?』。なんか知らんけど、好きなんですよ。ものすごく好きなんですよ。感動的とか、心揺さぶるとか、最近の言葉だとエモいっていうんですか? ちょっとそういうのんではないんですけど、でも、ほほえましい、愛らしい、主役の八重ちゃん、ちょっとドリル入ってる、もう本当に大好きで、その考えてること、発想とか? いまいちようわからんというのがね、またいい。しかしこの漫画、まとめて読んだら、悶絶級のよさがありますね。

この漫画のよさ、それはシンプル、わかりやすいってとこなんじゃないかと思うのですよ。そのわかりやすさ、巻頭の登場人物紹介にもしっかりばっちり現れていて、だって、「八重:都会に憧れる地方女子高生」ですよ。この漫画のすべてを説明しきっている! すごい、めっちゃわかりやすい。なんて鮮やかなんだろう!

冒頭の登場人物紹介でこの漫画の基本がすべて飲み込める。一本目の四コマ、その扉のコマ見れば、この子らの置かれている状況も一目瞭然レベルで理解できる。と、ここまで前提がわかりやすくしぼられていると、メインとなるキャラクターたちの掛け合いにスムーズに没頭できるというもので、シンプルというのはやはりひとつの強みであるなあ。込み入った設定や複雑なプロットが面白い漫画もあるわけだけど、単純、明瞭、わかりやすい、そうした漫画のよさというのを改めて思い知らされる思いです。

わりと突拍子もない、時にアクロバチックとも思える八重の都会愛、その発露される様が大好きなんですけれど、一歩間違えればエキセントリックともなりかねない八重の愛、そいつをすべてあまさず受け止めて包み込んでくれるみなちゃんの懐の深さがいい。そして八重の憧れを一身に引き受けて動じることのない、いやちょっと嘘、たまに動じてる、大河さんの優しさ、親しさ、飾らなさがいいんです。そのどれもがチャーミングで、ほんと素晴しい。

この漫画は田舎あるあるって思ってもいいのかな? あれもない、これもない、それだけに八重の憧れは募り、あまりの憧れの強さゆえにその行動も過激になろうというもの。そして都会にはない、田舎ならではの風物、事情いろいろ。そんなことあるの? 誇張してへん? それは田舎のよさというよりも、田舎ゆえの悲しみといった語られかたすることも多いのですが、そうした時の伝わりようがすごい。コミカルなタッチながらその悲哀、ひしひしと迫るように伝わって、とりわけ亜紀ちゃん登場回など、そうか、そうなのか。自分の住んでるところは八重たちの暮らしてる田舎ほどではないけど、わかる! そうだよね! みないな具合に共感覚える人もいるのではないか。なんて思いながら、ニヤニヤ? 笑ってしまってるんですね。

この漫画に描かれるもろもろは、ギャグがすごいとか、手に汗にぎる展開とか、そういうのんじゃなくて、田舎に暮らす八重たちのやりとり、時に普通で、時に愛情過多の会話のおかしみがメイン。けれどそいつにうかうか釣り込まれて、なんだか一緒になって面白くなってきちゃう、そんな感じの楽しさがあるんですね。ほんと、この親しみやすさ、なんなのだろう。読むほどに近しくなる。近しくなるほどに面白さも増していく。そんな底知れぬ魅力にとらわれっぱなしです。

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