『まんがタイムジャンボ』の思い出などつらつらと。
これはまたずいぶんと毛色の違う雑誌だなというのが当初の印象でした。
まだ『きらら』誌がなかった頃。タイム系列誌の中では最も挑戦的で実験的といったらいいのでしょうか、それが『まんがタイムジャンボ』でした。カワイイ系のキャラクター、オタク向けといってもよさそうな漫画も多く、他の四コマ誌では読めない漫画を求める読者は『ジャンボ』か『ラブリー』を買っていたんじゃないかな。勝ち抜きの新人育成企画をしながら、新しい四コマの需要を探っている — 、そうした感触がなにより独特で、オーソドックスなテイスト持った四コマやちょっと突飛なストーリーものと、今まさに成長過程と感じさせる新規の漫画が混在している。ちょっとしたカオス感もありました。他の系列誌がホチキスどめの中綴じだったのに対し、ジャンボだけは平綴じで、ページ数も多かった? ゆえにまさしくジャンボ、であったのでした。
突飛なストーリーものっていうのはなにかというと、当時『若女将・夏菜』ってのが連載されてましてね、これ、旅館の若女将である夏菜が絶対味覚なる能力を駆使して、料理対決を勝ち抜く、そんな話だったと思うんですが、いったいなにがどうしたものか、私のはじめて買った『ジャンボ』に掲載してた回では、その若女将が特訓なのかな? カンフー修行をしていた……。
な、なんだこりゃ。すごい雑誌を買ったな……。
これが偽らざる当時の感想でしたね。
『まんがタイムジャンボ』は挑戦的といってましたが、そこは芳文社らしいといいましょうか、あまりにとんがったギャグとか破壊的、前衛的な過激さはなく、あくまで抑えめ、穏やかな表現が多く、安心して読めました。私が当時、四コマ誌に求めていたのは、表現、マーケティングともに苛烈でないことだったので、そういう点においても芳文社はマッチしていたのだと思います。
好きだった漫画、いろいろあるんだけど、印象深いものといったら、やっぱり『おねがい朝倉さん』とかになるだろうかなあ。朝倉さんは今も続いてますけど、最初の頃は今と随分テイストが違っていて、あれは本当に鮮烈な登場でした。そうか、当時の私はこの漫画読みたさにジャンボの講読を開始したのだなあ。もう昔のことすぎて、いろいろ忘れちゃってたわ。
その後朝倉さんは、世間での癒し系ブームに接近してキャラクターや雰囲気を違えていって、またそのブームのすたれたのに伴って今に至るという感じなのですが、こうして時の流行り廃りにのって変化していくのも雑誌の面白さだったりするのでしょうね。後から振り返ったのではわからない。そうした空気というものは確実にあって、中でも時流に沿って変わっていく感度といっていいのかな、それが高かったのがジャンボだったようにも思います。
この頃は四コマ漫画全体に変化していこうとする気運があって、それぞれの雑誌がそれぞれに違えた魅力を持って面白かった。今みたいに、連載されてる漫画がテレビアニメになって、大ヒットして、みたいなことはなかったけれど、四コマというジャンルが変化し育っていく最中にあって、雑誌という媒体を舞台に文字通り拡大をしていった時代でもありました。この当時、四コマ漫画の面白さに魅了された人たちが、講読する雑誌を次々と増やしていく現象も見られて、そういったコアな読者が自分たちの行動を揶揄して、四コマスパイラルにハマる、なんていったりもしましたっけね。
ええ、これも当時の世相、流行語を反映しています。デフレスパイラルという言葉があったんです。
社会はすでにデフレ下にあり、その澱みに沈み込みながらも、まだどこか楽天的な空気もあった時代でした。そうした頃に四コマは育ち、広がり、新たな表現の可能性を求めて、きらら誌を生み出し、そして社会、情勢の変化にともない経営指針も都度変えていかざるを得なかった。そのとどのつまりが、この度の『まんがタイムジャンボ』の休刊であったのだと思います。
『まんがタイムラブリー』が休刊した時にはそこまで感じることのなかった時代の変化。『まんがタイムジャンボ』の休刊においては、それを痛く感じさせられます。2018年は、四コマというジャンルにおいてまぎれもない時代の節目、あるいは漫画雑誌という媒体においても大きな転換点として思い出される年になるのかも知れませんね。
- まんがタイムジャンボ
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