改めて読み返してみて、やっぱり面白いなあ。最初読んだ時は、このところ流行している女子同士のキス。かくしてジャンルとして確立したか! なんて感慨深くさえあったのです。けれど、アニメにもなった『桜Trick』、こちらは女の子同士の恋愛、みたいな要素が最前面にあったわけですけれど、今日とりあげる『すわっぷ⇔すわっぷ』はもうひとつ要素を加えて、入れ替わりものとして、コメディとしてのテイストを強めに押し出しているんですね。
友達の少なかった女の子、一之瀬春子の生活が、ひょんなことから知り合うこととなった二階堂夏子との交流を経て、すっかり変わってしまう。春子のね、ちょっと内気で引っ込み思案で不器用で、と思ったら、けっこう物言いはっきりしてるし、それになんだか女の子のあんなこんな好きだしで、とらえどころのない、そういうべき女の子ですよね。でも、友達がいなかった。ちょっと憧れていた。そんな春子が、夏子との入れ替わり、あるいは彼女との出会いをきっかけとして、どんどんとその世界を広げていく。その高揚、気持ちがねはっきりと見えにくい子なんですけどね、目には光が灯ってないし、でもそんな春子の様子、はたから見てもわかるくらいに高揚している、嬉しそうで、楽しそうで、もうね、よかったねえ春子。そう思わないではおられない。ええ、この漫画には、ひとつ、不器用な女の子の友達づくり、人間関係の広がりが魅力的に描かれているのですね。
そして夏子も同じなのかも知れない。彼女の場合は、人間関係を広げるというよりも、春子という子を知り、キスを通して入れ替わりをする、その便利さのためか、あるいは慣れてしまったキスの果てに、ちょっと春子が特別な感じになっちゃってたりする? するよね? してないなんていわせない。そうした気持ちの揺れ動き。これまで友達にいなかったタイプの子とのつきあいが、夏子にもいろいろと働きかけて、変わっていくところがある。というか、戸惑いながらも入れ替わりを最大限に活用し、そして春子の奇行に振り回される。振り回し、振り回される。時に見せる春子の素直で純粋な側面にほだされる。そんな夏子の様子を通じて浮かびあがる、夏子本人と、そして春子の愛らしさ。タイプの違う子らの友情ものとしての読み方もできようというものなんですね。
入れ替わりは、きっかけとして、ギミックとして働きはするけれど、この漫画の魅力の本質としては、主として機能していない。やっぱりメインは、春子、夏子、ふたりの関係、その急激に近しくなって、余人の立ち入る隙もない、そんなふたりの世界ができあがっていく様にこそあるのだろうなと。少なくとも、意外や純情夏子さんは、春子のこと特別ですしね。面白がって、他の誰かとも、入れ替わりできるか試してキスして、みたいな展開もあってよさそうなのに、一途にそれを許さないですものね。ええ、特別なふたり、特別な関係のできあがっていく、そうしたのが主であって、入れ替わりはその主なるものをもりたてるための仕掛けなのであります。
ところで、春子さん、胸が小さい小さいといわれてますけど、そんなことないですよね? 水着回、見てみなさいよ。小さいだなんていわせない。
- とめきち『すわっぷ⇔すわっぷ』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2015年。
- 以下続刊
0 件のコメント:
コメントを投稿