2021年12月24日金曜日

『まんがタイムきららフォワード』2022年2月号

 『まんがタイムきららフォワード』2022年2月号、発売されました。表紙は『スローループ』。釣りを楽しんでいるひよりがメインでありますよ。この子の、基本飾らず実用重視なスパルタンスタイル、けどそれがすっきりとしてかっこよくて可愛い、そんなよさがばっちり出ているイラスト、とてもいいですね。また右でロッドを構えて左でラインを引くその姿、堂に入っているのは当然としても、その表情がですね、自然と浮かぶ笑み、楽しみをともに釣りに取り組んでいるんだなあ! そうしたことのわかるのがまたとてもいいと感じたのでした。そして背景にちんまり魚を釣り上げて嬉しそうな小春がいて、これも面白いよね。ええ、釣れて楽しい、そんな感情がストレートに伝わってきます。

『9ダーツへようこそ!』

本当のはやったことないんだけど『世界のアソビ大全51』に収録されていたダーツをやってた時期があるので、ルールやプレイの感覚がわかってる。おそらくそのおかげで、より楽しく読めたのではないかと思います。

なにをやってもあと一歩というところで勝てない相手、佐野香沙にとってのライバル? 気になる相手が富士見晴花。秘密を探ろうと、放課後こっそり晴花の後をつけてみたら、ゆきついた先がダーツを売りにしているカフェ。晴花はそこでバイトをしていて、時にお客のダーツの相手をつとめたりしているというのですね。

ダーツを投げる晴花の姿を見て、ちょっと見惚れていたところ、なんの因果か晴花とダーツで勝負することになってというこの展開。遊ぶルールはゼロワン。例えば301点を削って0にするというルールなんですが、ちょうどトータル301点にならないと最後の1セットを何度でもやり直すことになる。これで香沙は301点、晴花は701点とハンデありでプレイするんですが、これ、晴花は結構香沙に譲歩していますね? ぐんぐん点数重ねて追いついていくんだけど、それでも晴花の方が先に勝ち目を得て、そこからの緊張感。バーストして、次で決められなかったら逆転されてしまう。そのギリギリのところで、これまで以上に萎縮してしまう香沙と、香沙の緊張をやわらげるためにその手をとる晴花。

この場面で、香沙と晴花、ふたりがそれぞれ相手のこと気になってたことがわかるのがまたよかったと思うのですね。

ダーツというゲームの楽しみがあり、また同時に香沙と晴花、ふたりの気持ちの駆け引き? そういう魅力も載せてくる。発展すればより一層に面白くなりそうと思わせるものありました。

『リリィシンデレラ』

ギャルからロリータに転向してしまった春風祐那。友達の前では変わらずギャルスタイルでいるものの、自宅に帰ればそこはロリータまみれの世界。なんとロリ服、自作なのか。すごいな。学校の制作課題でもロリ服を作ってみようか、そう思いながらデザイン画まで描いてみたものの、友達にバレるのが怖くて直隠しにしてしまう。

そんな祐那の秘密を知って、それを受け入れた上に元気づけ、はげましてくれたのが白宮美月。ここからの展開、とてもよかったですよ。美月とロリータ談義をする、その楽しさを実感していく祐那がいい。けれどその反面、以前からの友達、関ピョンからはなにかを秘密にされているのが寂しいといわれて、友情をひとつ育めば、別の友情が陰るのはしかたないんですか!?

祐那のロリータ趣味カムアウトのくだり、これがクライマックスなんだと思っていました。ここでめでたしめでたしなのだと。でもここからさらに重ねてくる。これまで触れられなかった美月のこと。ただ祐那に同じくロリータに理解のある子じゃなかったんだ。かつて祐那に救われた、その思いから祐那にずっと関わりたいと思ってきた。その一心がぐっときましたよね。ええ、祐那と関ピョンの関係に、美月から祐那への気持ちのベクトルが加わって、この感情の交錯する様、はっとさせられるよさありました。ええ、美月のエピソードのあるなしで、全然違ってきますよね。

『変わらない約束と変わる私たち』

かつて、結婚できる年齢で再会できたらキスをしようという約束を交わした、平野遊里と真白望亜。7年の年月を経てついに再会したふたりの関係。ここからいかなる発展を遂げようというのか、そのやり取りの行方が気になる漫画でした。

しかし、女の子ふたり、なぜそんな約束をしたのだろう。その理由にも触れられて、いじめられていたところを助けてくれたゆう君。男の子と思っていたその子が実は女の子で、けれどそうと気づいた時にはもう心のうちに芽生えた好きという気持ちは留めようもなく、転校していく遊里に、好きという気持ちを伝えて件の約束をしたというのですね。

その約束は果たされることはあるのか。互いに相手のことを好きとはいうけれど、その好きの重なることはあるのかどうか。自分の好きが遊里の重荷になるのではないか、受け入れられないのではないか、拒絶されるのではないか、怖れを抱えている望亜と、そんな望亜を傷つけたくない遊里。自分の好きという気持ちをはっきりさせていきたいと、まずはゆっくり少しずつ、望亜に寄り添いながら気持ちを育み、確かめていこうとするのですね。

そのすぐには熟しない、けれどいずれは成就しそうな恋の物語。まだ果たされていない約束の、けれどいつかきっとと思わせるラスト、その見せ方に感じさせた確かさ、これがよいですね。

『寿司ウォーズ』

はじめて回転寿司を体験することになった琴吹つかさ。えらい緊張した面持ちですが、いったいなにがそんなに意外というのか。なるほど、家が寿司屋さん。なのでコンベアーを流れる寿司なんてのは意外も意外、自分の見て知ってる寿司屋とはまるで違って、けれどだんだんに馴染んできてはいるようですね。

そんなつかさが、どうしても馴染めそうになかったのが、友人伊咲アリサの頼んだ寿司の数々。エビアボカド。見たこともない代物に狼狽して、さらに炙りサーモンバジルチーズやマヨコーン、およそ自分の知る寿司ではないそれらに、そんなものは寿司ではないと、拒否反応示してしまうんですね。

つかさの、知らない世界へのチャレンジ。食べてみれば意外においしかったという、その素直な反応の、けれどこれはただ寿司の味だけの話ではなく、自分とはまるで違うアリサの価値観に触れるということ、アリサという異文化に出会って自身の世界を広げていく、そういうことを寿司を通じて描いたお話だったのかも知れませんね。

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