『まんがタイムきらら』2022年1月号、昨日の続きです。
『それでは、ステキなセッションを。』
おお、連載になりますか。これは僥倖、けれど同時に妥当という感じがしますよね。ええ、面白い。絵もコミカルで愛らしく、物語のギミックとそれが引き出す芽依たちの感情、それが素直で気持ちよく響く。今回、ゲスト分3話目はこれまで芽依と一色が経験したこと、その整理と振り返りって感じではあったんですが、それと同時に、芽依がお助け妖精の不思議アイテムで経験した演奏の、音楽の魅力、それを通じて自分の今いる場所からずっと先へと気持ちを向けるようになっているのがとてもよくて、このキラキラとした希望の眼差し。いやあ、引き込まれる、そんな感覚ありますよね。
そしてお助け妖精、てんちゃんとの再会! 一週間ほど姿を見せなかった、その理由が面白かったな。そうか、アイテムの補充が必要なのか。一色が底引きしちゃったわけだな。今回はてんちゃん、お助け妖精がなにを目的としているか、それが語られて、とりあえず悪いやつではなさそうだな! なんかいつしか妖精っぽいやつを見ると疑ってかかるようになっちゃってるわけですが、てんちゃんはお助けアイテムで人をしあわせにしてえもーしょなるポイントをゲット。さらにミュージシャンのライブを通じて、オーディエンスからもゲット。とにかく人をしあわせにすることが目的。と、いろいろがスムーズに納得いく展開。そしてここから先に広がる世界、それを垣間見せてくれたのもまた実によかった。彼女たちの前に道が開けた、そんな感覚が素敵でした。
『ぎんしお少々』
しろに伴われて一緒に姉たちのもとへと向かったもゆる。しろの手にしているカメラと自分のカメラを比較するところ、面白かったな。そうか、ホルガってシャッターボタン押すだけじゃないんだ。これは知らんかった。これ、あえて手ぶれするようにそうしてるのかっていいたくなるような機構ですね。初心者ながら、このカメラとつきあってるもゆる、ちょっとすごいな。いやほんと、スローシャッター切るときとか息止めますけど、スローとか関係になしに常にそうなんだ。大変。
さて、しろの写真撮影、もゆるをファインダーにするというの、それが徹底されてたの面白かった。駅に向かう道すがらでも、それからすずの部屋でも、もゆるの気持ちがぱっと動いた時がしろのシャッターチャンス。部屋の写真撮りまくってるの、不動産の人? とか思われてるの、地味に面白かったな。
でもね、このなんでもない部屋の写真、当たり前でなんの面白みもない、そんな風に思ってしまいがちな写真、こういうのが後から振り返る時に効いてくると思うんですよ。あんまりに当たり前だから気にもしてない、でも長い長い時をへて変わってしまったり失ってしまったりした情景に、その当時の当たり前が思い出されるの。あの頃感じていたこと、日常の感覚、動作や匂い、暑さ寒さ、しんどかったこと、楽しかったこと、一緒にいた人のこと、記憶のどこかに残っていた感覚をずるずると引き出してくるような、独特の感覚でもって次から次へと思い出がひと繋がりになって出てくる、そんなことになるかも知れないよ。
ええ、お姉ちゃん、シロチャンの写真、大切に残しておきなね?
しろの写真、ずっともゆるを指針に撮っていた。けれど、突然話しかけてきたもゆるを撮った思いがけない一枚。これがどうなるのか。しろの意図したものではないにせよ、他の誰でもないしろの撮った写真になるのかもですね。ええ、成果物を確認する時が楽しみですよ。
『桜色プルーフ』
文芸部の部室から徐々に消えていく本の謎。その謎を解くべくさくらたちが文芸部を訪れれば、そこにはあったはずの本が、本棚ごとまるまるなくなってしまっていて、この消失事件! いったいいかにして解決されるのか!
その解決編だったわけですが、なるほどなあ、ちゃんとこうなる理由、部屋の外から見ていた時と実際に部屋を訪れた時の細やかな違和感、意識のズレもろもろ、こういうところに本来は存在していなかった謎が生じてしまっていた。
謎とその解明の面白さを提供しながら、連続ゲスト最終話となる今回は、ずっとさくらの心の奥にうずいていたコンプレックス、それも解消していく、そんな話になっていたのがすごくよいと思いました。4話をかけて描いてきた3つの事件、それを通じてさくらの気持ちに徐々に接近していって、それが4話目にして解消されるという構成もまた魅力的。掌編としても読みでのある4話だったと思います。
- 『まんがタイムきらら』第20巻第1号(2021年1月号)
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