『まんがタウン』2022年1月号、発売されました。表紙は『野原ひろし 昼メシの流儀』。やたらシブい雰囲気まとわせた野原ひろしがドーンと立っている、その背景に描かれるのはインドの炊込みご飯、ビリヤニであります。エビがたくさんのってますね。魚介のビリヤニなのかな? 以前、ネットでビリヤニがあまりに話題だから、近場で提供している店がないかと探して食べにいったことがありましたよ。スパイスの効いたご飯、事前に予想していたものとはちょっと違った食味で、時折コリアンダーのクセのある味がぞわー! っとくる。パクチーですね、ほらこのイラストにもちゃんと描かれています。ビリヤニを食べたのはその一度きりですが、また機会があれば食べにいきたいものだなあ。なんて思わされる表紙、それから本編も、でした。
今月は新規ゲストが1本です。
『兎なりのウサギさん』
お隣の幼なじみのお姉さん。稲城紅詩に恋こがれる高校1年生、上村青枝がウサギを愛でるのを口実に毎日通うというのですか!? いや、毎日はさすがに断っていましたね。そのへんはわりと自重の効く青年でありますな。
この漫画、ウサギのみたらしがとにかく面白い。めっちゃくちゃマイペース。やたら動きまわるかと思ったら、時折その表情でもってなにか語りかけてくる。あなたはこわい顔ですね! もっとなでてください! 木をかじりたいです! その突発的な行動に、ちょっと戸惑う青枝がまた面白くって、みたらしをなでて、時に話しかけて、でもウサギはほんと自分の興味だけに率直で、まるで青枝の思惑など意に介するそぶりさえ見せない!
この自由さ、たまらんものがあるなあ。これ、きっと本当のウサギもこんな感じなのだろう。擬人化することも可能だろうに、あえてウサギのウサギらしさを押し出すかのようなこの描写、思うようにはいかないし、とにかくウサギはウサギのペースでしか動かない、それがおもしろ可愛いよなあって思われて、ええ、これリアルウサギを知る人にはより刺さる、そんな漫画かも知れませんね。
『押しかけギャルの中村さん』
中村さん、秋山と同居してること、隠すつもりほぼないのか。とりあえずバイト先の榎本にはいっちゃいました。けど、他の皆にはないしょにした方がいいだろうね。ってのは、中村のこと好きらしい後藤がね、ちょっと大変なことになりそうじゃん?
とはいうものの、できることならお前さんの恋が成就する目はないよってはやいめに伝えてあげた方がいいのでは? なんて思ったりもして、どこまで本気なんかはわからんけど、今みたいなあしらい方だといつまでも後藤君ぐいぐいいっちゃうじゃん。中村はわりときっぱり断ってるんだけどなあ。やっぱ、あれくらい押しが強くないといかんものかい?
中村は秋山のこと、ほんと気にいってるんですね。仕事中も隙あらば秋山にアピールしてくる。秋山はガン無視を決め込むんだけど、それで中村のこと怒らせちゃって、泣かせちゃってってね、ああ、秋山、お前さんいいやつだな。友達なのも秘密なの? って、涙目でいわれたらすぐさま反省するじゃん、うまく反応できなかったこと謝るじゃん、ほんと秋山のこういうとこ、すごくいいと思います。
そして中村リクエストの投げキッス。これがまさかの後藤に着弾! おおう、ハッテン!? あー、ノーハッテン! 真摯に、秋山を傷つけないように断りをいれる後藤。こいつ、なかなかいいやつかも知れません。
『新婚のいろはさん』
はじめの誕生日プレゼントに悩むいろはさん。哲子に相談して、颯斗にも相談して、けどどちらの答も決め手に欠ける! ついにははじめの周囲を観察しつつ、それとなく聞き出そうとしてみたら、あれまあ、はじめくんは無欲ですね。今、これ以上はいらないかなって、ほんとこの人のこういうとこ、すごく好感ありますよね。
そんないろはが答を見出すにいたる、そのくだりすごくいいんですね。骨伝導ヘッドホン! その答は、かつてはじめから取り上げて、そして贈られた手帳、そこに書かれていたというのです。東京にいくというはじめが、かまいたがりのいろはに取り上げられた手帳をそのまま贈った。そこに書かれていたこと、よくわからないことも多いけれど、そこには中学生時分のはじめの気持ちがいろいろ込められているというくだりがね、しみじみ感じるよさかもしだして、たまらんですよねこういうの。
ふたりには歴史があるんですね。過ごしてきた時間、積み上げてきたもの。たとえ一時期離れて暮らす時間があったとしても、それでも繋がるよすががあった。それは思い、あるいはこの手帳であったのかなって、そうした郷愁いりまじるような情感、たっぷりとして素晴しかったです。
『相方が俺を好きすぎる』
わーお、連載に昇格したよ。この漫画、好きなんですよね。売れないお笑い芸人天津昇のこと大好きすぎる押し掛け相方、櫛田泰斗。表情に乏しいこの男の、けれど昇に向ける情の深さ。もうたまらん。どこかひょうひょうとして、どうにもつかみどころのない男なんだけれども、それにしても昇のこと大好きってのはビシバシあからさまに押し出してくるのがね、ギャップっちゅうのかなんというのか、ほんとおかしい。
ええ、私は泰斗のこと全力で応援しています。
泰斗は昇のお笑いの才能に惚れ込んでるのかな? みたいなこと思いきや、どうもそうではないっぽいでしょう? 俺とならきっと天下をとれますよ! みたいなこと絶対にいわない。とにかくいうこともろもろ、微妙な範囲に着地する感じがあってさ、それがほんと面白いのね。で、やっぱ思うのは、泰斗は昇という人物を好きなんだろうなあって。気づいたら昇の部屋に入り浸って、一緒に食事して、昇がゲームするとなったら割り込んでまで一緒にプレイする。っていうかあなた、距離が近いわよ!
ほんと、絶妙にぱりっとしない泰斗。このじわじわ感が面白い。くすっと笑う? にやにやしちゃう? そんな具合に面白いんですね。
- 『まんがタウン』第23巻第1号(2022年1月号)
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