『まんがタイムきららフォワード』2020年12月号、発売されました。表紙は『中央線沿線少女』。表紙には今号のヒロイン、あきと聖がふたり並んで立つ昌平橋の情景。でも、なんか違和感が。というのも、今号のヒロイン? いや、あれ? なんか記憶のどこかに……。デジャブを疑いながらも過去を探ってみましたら、そうか、そうでした、2019年8月号にゲスト掲載された御茶ノ水万世橋編。あきと聖は、その時のヒロインでもありましたね。ゲスト回では違う学校に進学することになったふたりが、今号は同じ学校で部活をめぐるすれ違いを経てふたたび気持ちを擦りあわせてと、また違う展開を見せているのですね。いわば語りなおし。違った可能性を見ようとするような物語に、なにか思いの果てに世界の違ってくるような感触覚えたのでした。
今月は新作ゲストが5本です。
『機械少女と吸血鬼』
夜の街にて出会った美少女に、吸血欲求を高まらせる吸血鬼ローズ。急速に接近、血を渡しなさいと迫るのですが、その様、まさしく変質者。けれど、その美少女、小森春には血が流れておらず — 。というミスマッチな出会いからはじまるガール・ミーツ・ガール? 血が欲しいのではなく、悲しそうなあなたを放っておきたくなかった! ローズの告白からのより相手を知っていこうとする後半の展開など、冒頭に感じた勢いから、しっかりとその気持ち、心情を描こうとするものにシフトしたと感じさせて好感触でした。
四コマなんですね。人の姿をしながらも、周囲の皆とは違っているふたりだからこそわかりあえる、そうした気持ちのやり取り? 機械の羽根にコウモリの羽根で対抗するところとか勢い際立って面白かったのですが、そうした勢い、インパクトがあったからこそ、ただ面白いだけではない終盤の対話、そのしっとりとした雰囲気もより印象的になったと感じたのでした。
『欲望の味を教えて』
おおう、ガチ百合だ。フォワードは急速に百合雑誌に接近していこうとしているのですか!?
真面目委員長、清澄さんと、校則違反の目立つおしゃれさん、更科さん。ふたりの相性は最悪? 更科を見れば注意せざるを得ない清澄に、清澄をからかってくる更科。そのふたりの気持ち? それが現れる夢の中の世界。夢に介入してくる不思議な少女(?)、夢乃李々の導きで清澄が知る自分の願望。そして、更科の自分に向けた気持ち。この欲望が露になる夢の描写が艶かしくて、ドキドキさせる — 。
それどころか、夢で見た更科の欲望を受けて、少し自分から変わっていく清澄の感情の変化や、変わった清澄を見て思いをほころばせる更科のその表情など、見どころを細かにそっと要所要所に配置していくところ。キラキラとした感情? 晴れ晴れとした表情? 憂鬱に曇らせた憂いさえも美しいと感じさせて、大変に魅力的。すっかり魅入られた、そんな思いでありますよ。
『花咲かわん子ちゃん』
おおう、ギャグ百合だ。フォワードは急速に百合雑誌に接近していこうとしているのですか!?
姉の暮らす下宿先、きみかげ荘に入ることになった花咲湾。湾と書いていりえと読ませるのか! でも、そのままだと湾だから、姉、千波からはわん子って呼ばれてるんですね。
このわん子がとんでもない。女子校の生徒のために用意されている下宿と聞いて、ついに自分の夢が叶うと意気込むその夢というのが、百合の園!? そんな夢、捨ててしまえっ! いや、だってそんなのそうそう叶わないよ? というのは現実の話で、けれど漫画の世界なら叶うのかも知れない。そう思ったら、やっぱ叶わないのか! というか、管理人さん、いきなりビジュアルがヤバいな! 血まみれならぬケチャップまみれはいいとして、包丁はやめよう? 包丁持ってお出迎えはやめましょう?
わん子にとって悪いことに、姉以外の先輩は卒業してしまって、この家には管理人さんと姉千波のふたりきり。ここにわん子が暮らすことになったとして、百合の園にはなりやしない。うう…ひどいよお姉ちゃん…、って、ショックのあまり駆け出すわん子さん。ショックはいいんだけど、モノローグちょっとおかしいよな。というか、言動全体的におかしいよな。でもこの子が、花瓶に鈴蘭を生けている管理人と対話していく中で、ふたりの気持ちの寄り添うように柔らいで、通じあっていく様、丁寧な筆致でもって伝わる気持ちの行き交い、交流はとても素敵なものでした。
いや、それだけにページめくったところで固まってるわん子の姿、そのギャップも引き立とうというものなのですが!
しかし、わん子の欲望、姉に筒抜けになって、でもそれを受け入れてもらえてよかったですね。しかもその企てを手伝ってくれるん!? 理解者あってよかったね、わん子。全般に思い込みの強い? ちょっと変な子? ですが、わん子、可愛かったです。百合を前にして見せる緩んだ顔、これ、いいな。その表情をもっと見せてくれ! そんなよさありますね。
『晴れた天使のうたドルチェ』
聖歌隊で歌っていたななみ。けれど中学を卒業と同時に聖歌隊からも卒業。歌うの好きなのにね。来年からどこで歌えばいいのかな。そう思って悩んでいる姉を支える、いやハメる妹? ウィンド系妹かざみの手腕が光っていました。いや、だってね、テレビでアイドル見てさ、その気になって歌って踊って、七つの海から逢いにきたオーシャン系アイドルななみんだぞ♪ なんていってる姉に、隣の部屋から逢いにきたウィンド系妹かざみだけどかまわず続けていいよ。この対応! 最高やん。一発でウィンド系妹のこと好きになりました。
この妹の見せ場はここから。翌日、聖歌隊の発表会だと思い込ませて姉をアイドル科のある高校の試験会場に連れていく。願書は妹が出した。一次試験も通過済み。って、どんな手を使ったんですか、かざみん。
妹の見せ場はここまで。ここからはななみのターン。試験控え室で出会った美少女、水依との交流。ピリピリしてる会場の雰囲気とはかけはなれた、ふたりだけのやわらかで穏やかな世界を作り出していた。その果てに辿り着いた境地とでもいえばいいのでしょうか。ふたりともに、いつものようにを大切に臨んだステージ審査。水依をずっと勇気づけてきたななみに、ステージを終えて駆けてきた水依が返してくれたその思いの結晶。いい展開、いい場面だった。ええ、試験とか合格とか、そういうのを超えた先にふたりは向かっていった、そんなこと思わせてくれたのですね。
しかし、ラストの1本、かざみに抱きついたななみに目を丸くしている水依がちょっとツボでした。水依の真意やいかに! なんか可愛くてよかったですよ。
『現代魔女』
クリーニング店を切り盛りするシモナは魔女なのですか。指先ひとつで衣類をあちらこちらへ移動させて、というのですが、秘密にしているその魔法を、お客のマロカに見られてしまった! というか、魔法を暴発させてしまったっぽいですね。
特に魔女だからと排斥されたりはないみたいですね。シモナの秘密を知ったマロカも興味津々ではありませんか。どんな魔法が使えるのか? 時間制限あるけれどいろんな衣装を作り出せるシモナの魔法でファッションショーならぬコスプレ大会開いたり、でもってそれをSNSに公開? 恥ずかしいといいながらも、自分の祖母にはコスプレ写真送っちゃうシモナとか、ふたり楽しそうにしてるところがとりわけよかったですよ。
しかしそんなふたりの最後の誤解? これ、後々なにかの展開に繋がるんでしょうか。なるなら見てみたい。というか、魔女のシモナも謎ですが、マロカもなかなか謎ですよね。気になるふたりです。
- 『まんがタイムきららフォワード』第14巻第12号(2020年12月号)
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