『まんがタイムきららキャラット』2020年11月号、昨日の続きです。
『あやしびと』
アヤの真実が判明するなど、一時はかなり動揺もあった彼女たちですが、以前どおりの日常に戻った感じでしょうか。けれど、アヤがカバネの口調に違和感感じていて、ああ、口癖にしてたフレーズ、「死ぬほど」っていうのを以前のように使わなくなっていたのですね。
死人と判明したアヤの前で口にするのは不謹慎なのではないか、いろいろ気を使ってくれているカバネさんです。そしてこの口調の由来、カバネとみぞれの友情の物語が語られて……、いや語ってないな、カバネがひとり回想しているだけだ! でもって、サカサに見事見透かされている! いやもう、サカサ、なんだろう、この子、いいなあ。
ともあれ、みぞれとカバネの出会いの頃。孤立していたカバネに転校してきたみぞれが声をかけてからのいろいろ。物怖じしないみぞれの、明るくて、どこか噛みあわなくって、けれどそこに根っからの優しさ、親しみやすさが溢れているエピソード。それが実にいい話でして、なるほど、アヤを助けてくれたのも、助けるとか親切とか以前に、こうして人に寄り添おうとするみぞれの性格、そのよさの現れだったのだなあと思わされたのでした。
しかし、みぞれ、いいやつ! 無理してないというのが、さらにいいです。
『しずねちゃんは今日も眠れない』
しずねとあかり。どうもうまく接点ができていかない感じではあるのですが、預っているあかりの抱き枕のせいでしずねの身が危ない? あかりの勘違いが発生したり、しずねの身を案じたあかりが、いったんは気味悪がったあの抱き枕を回収しようと動いたり、ええ、ともないいろいろ人間関係にもさざなみが立とうとして、少々不穏な雰囲気でありますよ。
学校ではいろいろ悪い噂を立てられているしずねです。あかりと親しく接すれば、あかりもその噂に巻き込まれてしまう。本当は友達が欲しい、そう思っているのにね、悪い噂がその願望に水をさして、ああ、このもどかしさ。なかなかにことはうまく運ばず、また眠れぬ夜を過ごすしずね。あかりの抱き枕、黒うさがなにか転機を作ってくれるのか。あるいは違うところにこの状況を打開させるなにかがあるのか……。
沈んでいるしずねを見れば見るほど、うまくいってくれればいいと、思わないではいられないのですね。
『かぐらまいまい!』
えらいこと頼まれましたね、舞姫部。呪いをといてほしい、バスケ部から頼まれて、聞けば舞姫部には呪いをといた実績があるという。無人の音楽室から聞こえるピアノの演奏。それを美夜のお祓いが解決した……。美夜は偶然では? といってます。実際そのとおりだったんだけど、美夜のお祓いは本物と、まことしやかに語られてしまっているというのですね。
呪い、霊能者、そうしたことに逐一否定していく美夜の真面目さがいいですよね。そして、こふくのやる気も加わって依頼を受けると決定。さらにはバスケ部の欠員をミコトが埋めるなど、うん、確かに舞姫部、困りごとの解決に大活躍。美夜の祈祷で気持ちを支え、フィジカル面ではミコトがサポート。って、実際バスケもうまいのか! 決勝点に繋がるパスがミコトから出て、バスケ部部長の橘、見事に逆転!
それはいいのだけど、思わぬ成果を出してしまったおかけで、舞姫部、祈祷部というかお助け部というか、本来の目的である舞以外での活躍が増えてしまいそう。でもこうしたちょっとした番外編的エピソードも魅力的ですよね。
『魔王の娘からは逃がれられない』
めちゃくちゃ面白いなあ。写生大会の途中で召喚されてしまったショーコ。ショーコの絵に興味を持ったルルが、ショーコの色鉛筆でお絵描きに挑戦するっていうんですよ。
これがもうね、思いもしないにぎやかな事態引き起こしちゃいまして、ルルの描いたショーコにザレハレ、その他がスケッチブックから抜け出して、もう大暴れですよ。城を壊したかと思ったら、ああっ、コマ外に出てページのはじっこやぶいてる! その自由闊達さったら! コマの枠線壊して脱出したり、枠線の角を使って縄跳びしてたり、気付けば人物紹介もルルの絵になってるーっ! 最高じゃない? なにこの楽しいの。ほんと、見ていて実にほほえましい。いや、城の被害は甚大なんですけどさ、ほんと、いつになくメルヘン感じさせる回でしたよ。
でも、ルルはせっかく描いた絵が抜け出ちゃうもんだからつまらなくって不機嫌で、そんなルルにかけたショーコの言葉、さらにはその言葉を受けてルルのためにスケッチブックに帰ってくれたショーコとザルハレの絵。皆の見せた共感と、ルルのために優しくあろうとしたその気持ちがたまらなく素敵でした。
嬉々として自分の絵を見せてまわるルルがすごく楽しそう! ルルが描いてくれた自分の絵に喜んでるザルハレもすごくいい。そして、また一悶着あった後に残ったあの絵、ほんと、素晴しくない? 気持ちがあたたかくなる、見ている自分も嬉しくなるようなエピソード。ルルの描いた絵のほのぼのとした愛らしさと、添えられた締めの言葉のやわらかく残した余韻。ルルにショーコ、ザルハレの、互いに向けた気持ちの伝わる、実にチャーミングな掌編でありました。
- 『まんがタイムきららキャラット』第16巻第11号(2020年11月号)
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