2020年10月25日日曜日

『まんがタイムきららフォワード』2020年12月号

 『まんがタイムきららフォワード』2020年12月号、昨日の続きです。

夢喰いメリー

大団円を迎えようとしています。銘無しに襲われる現界にて、戦い続ける夢魔たちの疲労も濃く、いよいよ押し切られるのではないか。そんな瀬戸際に、夢路とメリーが白儀「理性」に打ち勝って、いやむしろ、白儀「理性」とともに、世界をもとのあり方に戻すことができた。次々と消えていく銘無しを前に、なにが起こったのかを察する夢魔に人、夢路とともに戦いその絆を育んできた者たち。離れていようとも、その気持ちは、思いは繋がっているんだ。そう思わせる描写、これは胸が熱くなりますね。

幻界ではメリーの開いた扉を背に立つ白儀響ですよ。ああ、この穏やかな表情。学校にて出会った時の親しみ感じさせた響、あの時の響が戻ってきたように思われて、これもまたいいシーン。もしこの響が「本能」に抵抗して、こっそりと策をこらさなければ、夢路もメリーも、なにもわからないまま銘無しの群れに圧倒されてしまっていた。打開の可能性を作ったのはまさしく響であり、その策を成功に導くための鍵が夢路とメリーだった。

この種明かし。なんかね、くったくなく笑う響がとてもいいの。ずっと謎めいた敵と思ってた響だけど、夢路、メリーを自分の策に引き込むために演技して、焚き付けて、必死だったんだなって、ほんと、彼の戦いの過程。それがうかがえたのは収穫だったと思います。

そしてここからはエピローグ。世界が目を覚ませば響が文化祭で校内放送をした、あの時間に戻る。夢の影響もきれいさっぱり消えさって、さらには出会ったことも戦ってきたことも消える……。って、え? そうなの? 出会ってから文化祭までの記憶は残るんじゃないの!?

戸惑いながらも、描かれていく別れの情景。ジョンと勇魚、マスターとの、エンギと由衣との、イチマちゃんとみなととのお別れの様子は、見るだに涙のこみあげるもので、ああ、いよいよ終わるのだと、その感慨で胸がいっぱいになって、たまりませんでした。この別れの挨拶の連続は、この漫画を何年読んできたのだろう、この10年ほどに知りあった人たちが去っていく、その挨拶の場に私自身も立ちあっている、そんな気持ちにさせてまたたまらない感情込み上げたのですね。

『夢喰いメリー』、次号最終回。いよいよメリーと夢路の別れが描かれます。ああ、寂しくなりますね。私にとってこの10年ほどの『フォワード』誌は『メリー』の載っている雑誌でありました。それが変わってしまうんだなって、これもまた感慨です。最終回、見ないわけにはいかないけれど、いよいよ終わる、その時をちょっと引き伸ばしたくなる、未練ですね、そんな思いもちょっとあったりするのです。

『ちょっといっぱい!』

エリカ、台風の目ですねえ! 頑張りが評価されてついにフロアデビュー。でも、やる気というかが暴走して、お客さんを戸惑わせるほどの踏み込み!? もちろんちゆりに叱られるわけですけれど、まあ女性のふたり客、店員とわいわいコミュニケーションとろうとか、そういう感じじゃないですよね。

自重を求められたエリカだけど、男性のひとり客、見るからに孤独を好みそう? そんな男性への接客でね、まーたぐいぐいいっちゃうの。そうか、カバンにつけてたキャラクター、それでスイッチはいっちゃったかー。これね、ズカズカと踏み込んでいくと見るか、それとも語りたくても語れる相手のいない人にベストマッチしちゃったと見るか、どちらかで評価変わりますよね。今回はまさに後者だったわけですけど、お客さんへのサービス、ウサパニモチーフの卵焼きね、それ見て嬉しそうなお客さん。撮影しようとするそのスマートフォンを借りて、エリカ渾身の撮影! その本気度100%の頼もしさ! すげえ、これはなんか感動する。

受け入れられているエリカの接客に迷いを感じるちゆりと、そんなちゆりのこともちゃんと評価しているという店長と、そうしたいろいろな幅が描かれたの、大変よかったなって思ったんですね。居酒屋になにを求めて来店するか。親しい人と食事をしながら語らう場所を求めている人がいれば、人恋しさから訪れる人もあるだろう。ほら、居酒屋って店主とおしゃべりしながら夕食あるいはちょっといっぱいやりたい人がくる一面とかあるじゃないですか。エリカは、そうした場をこのお客さんに提供できたんですね。ええ、なにか懐かしく思える、そんな昔訪れた居酒屋の一時思い出させるようなエピソード。いや、まあ、エリカみたいな元気そのもののコミュニケーションはちょっと経験ないですけどね!

『スローループ』

紅葉狩りも兼ねた釣りキャンプ。小春、ひより、恋の3人に加え、二葉と藍子が合流。釣りをする自分を、藍子の前でも隠さなくてよくなった二葉は、ひよりと一緒にのびのびと釣りに取り組んでもうキラキラ! 対照的に、やる気いっぱい、元気いっぱいだけどいろいろ至らない小春は、恋先生に教わりながら道具の準備にてんてこ舞い。

このわたわたしている小春の様子を、興味ありそうに見てる藍子がよかったですよ。お? 釣りに興味持っちゃった? え? そうでもない? そうかあ、ちょっと残念かも知れん……。

釣りには参加しない恋と藍子。釣り組の様子を遠くから眺めながら話していること。友達との距離感とかね、その内容がよかったんですよ。藍子は二葉の一番でいたくって、二葉が誰かと一緒に楽しそうにしてるとモヤモヤしてしまうっていうの。それを受けた恋の答。それは藍子を安心させるものではあったのだけど、その言葉、本当は自分自身に向けたものだったりしたんじゃないのかい? そんな恋の憂いを帯びた横顔に、本当は自分でもわかっている、そんな気持ちにじませる独言がしみて、ええ、気持ちというのはうらはらだ。恋のうちにある、重くはなりたくないと自重する思いとか、わかっててもとめられない気持ちとか、そうそうわりきれるものではないこと。しみじみと感じ入るものあったのです。

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