2024年7月24日水曜日

『まんがタイムきららフォワード』2024年9月号

 『まんがタイムきららフォワード』2024年9月号、発売されました。表紙は『花唄メモワール』。ぽっぺんを手にした浴衣姿の藤野であります。藤野の後ろでまわる屋台の風車が、夏に涼をはこんでくれる風の存在を感じさせてくれる、夏らしくも涼しげな表紙にしあがっています。しかしぽっぺん、赤青黄色の意匠もかわいいそのガラスの風合いが、きらきらとしてまた涼やかで、暑い日の続く令和の日本にも涼を届けてくれますね。

『花唄メモワール』

イセの口から語られるイネの母、斉藤ハツナの物語であります。

花瀧屋の女将となるべく、長男連に嫁ぐハツと義妹イセの若き日々。天真爛漫ほがらかに、未来の夢を語るハツのまぶしさ。しとやか、おだやか、柔和なこの子が、しいたげられていたイセのいとこ、チル、後の椿を守り通したそのときのエピソードが鮮烈で、男にまじって武芸をふるうイセが感じたハツの強さ。凛々しくも毅然とした態度、物言い、普段の姿とはまるで違ったその様子にこそ、イセは憧れを感じたのかもしれない。

そんな描写があったからこそ、この思い出語りは悲しいのでしょうね。

重い病に身をむしばまれたハツは、イネを産んですぐに亡くなってしまった。女将として守り立てようした花瀧屋の未来を見ることもかなわず、幼子の育つ日々に添うこともできず、けれど命だけは繋ぐことができたと、そのいじらしくも切ない夢を代わって背負おうとした女将イセの決意と、いずれその夢を継ぐイネの未来と。

イセは知ることのない未来の花瀧屋を、女将のその後を梅は知っている。その梅に託された、ハツナの髪留め、そして名の意味。そのどれもが胸に迫るものあって、涙を絞る物語でした。

『球詠』

斉藤小町は面白いなあ。先輩相手となっても、なんら臆することのない小町。この子にとっては先輩後輩とか関係なく、勝負したくなる相手かどうかだけが大事とわかるエピソード。対照的なのが、球威に自信がないからこそのテンポでもって打者を翻弄しようという東條蘭々。対照的な一年生投手を軸に展開していく試合の模様。そこには小町の、ララの、思いや意地が宿って、そしてそれが先輩たちにも波及する。

ああ、この話、面白かったなあ。前回描かれたヨミと珠姫の対話を深めるかのような勝負。それを引き受け、さらにその先へと歩を進ませるような展開が見えたのもまたよかった。

本当、あちらに、こちらに、ドラマやその芽をちりばめ、魅せるのがうまい作者と思わされました。

『スローループ』

風邪にふせっていた恋先生、すっかり回復なさいました。ということで、恋の希望にそったシイラ料理。ガッツリしたのを作るため、ひより、小春が恋のもとへとやってきました。

大歓迎する弟たちが面白いですよね。最初はニッコニコだったのに、釣れたシイラがもう捌かれちゃったと知ってがっかり。そして肝心のシイラ料理。なにができるのかと思ったらハンバーガー! それ知って恋もがっかり。

それほど!? それほどなの!? バーガーなら肉がいい? 釣り好き一家の子供は魚食べ飽きてるっていうんですが、でも小春の腕の確かさですよね。できあがったシイラのバーガー、マヒマヒバーガーを食べた恋の、虹虎兄弟の表情! これがもう抜群で、兄弟からもプロみたいとすこぶる好評だったのが、もうなんだか見てて嬉しくなるほどだったんですね。

このいっときのしあわせと、そしてリアリスト恋に対する楽観主義者小春の未来予測が心地よかった今回。ああ、こうして皆のつながり、今後も変わらず続けば、それはそれは素敵なことだと思います。

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