2024年7月14日日曜日

『まんがタイムきらら』2024年8月号

 『まんがタイムきらら』2024年8月号、昨日の続きです。

『こもれびシュトラーセ』

人と人をつなぐ街道。そのつながりはあたかも糸が布に織られるように広がりを見せて、今回は、第1話での市場を中止せしめたクースの市長にまでおよびます。といっても、我らが主人公ニコルが関わりを得るのは、市長の奥方、マルガレーテ。問題を抱える市長のために祈るマルガレーテの時祷書が、破損してしまった。困ったマルガレーテは時祷書をモニカのもとに持ち込み、モニカが修道院に修復を依頼し、という流れでニコルも時祷書をめぐる物語の一端に触れるにいたった。そして私たち読者も、ニコルとともに、時祷書、この時代における書物について知る機会を得るというのですね。

破れたページを修繕する。今だと補修テープで破れをとめて、といったところでしょうが、この時代の本は違います。破れたページを新たな羊皮紙に書き写し、差し替える。そっくりそのまま写すこともあれば、書写した人の個性が出たりすることもあるのがこの時代の本ですが、今回はあくまでも修繕が目的なので、丁寧にもとどおりにします。

こうした修繕の工程見れば、この時代の本というのは手工芸品であったとわかる。いや、大量生産時代を迎えるまでは、本に限らずあらゆるものが手工芸だった。本もまたしかり、であったのでしょうね。

ヒルデとモモの手による写本、そのクライマックスは、彩色工程における色でした。もとのページのような鮮やかな青が出ない。私たちが使ったのはアズライト。もとの本はラピスラズリが使われているのではないか。この青を再現するために、もとの絵から青の顔料を削りとるという手段をとる。これもまたこの時代の、あるいは後の時代においても、容易に入手できない画材が必要となったときの手法だったのでしょう。

かくしてなった本の修復。依頼主のマルガレーテの喜びようもまた鮮やか。こうした人と人の関わりが生み出す物語は、さらなる遠く、見知らぬ人、土地、風物、文化をつないで、時に助けあい、理解を得て、深まりゆくのですね。

『スミレとリリィ』

スミレに恋するリリィは、美術の授業、その課題にて、スミレを題材に選びます。課題とは「世界で一番好きな物」。となると、一も二もなくスミレ。そこに迷いはないのですが、スミレはというと躊躇なくラーメンの出前をとって、そいつのスケッチを開始する。

って、のびちゃわない? ってのは置いておいて、くやしいのはリリィですよ。ラーメンに負けてしまった。最初はスミレがなにを画題に選ぼうがかまわない。そう思っていたのに、自分だけがスミレを思っている、一方通行の気持ちに耐えがたさを覚えて、スミレではない、別のものをえがこうか。

この気持ちの揺れ、惑いと、教師の言葉にふたたび自分の好きという気持ちを確かなものに変えていくリリィの姿。精緻にして繊細な描写にて伝える心の機微が美しくて、これは本当にすばらしいなと、言葉を飲むほどの感慨に打たれたのでした。

そして最後に描かれた一幕。リリィの気持ちに対するスミレの意図せぬ返歌ともいえるその絵の楽しさ、明るさに、ああ、リリィ、初志貫徹してよかったねと、心の底から思われて、ええこの感慨もまたリリィの思いをめぐる描写の華やかにして清冽、それでいて確かに跡を残す切実な様あってのものだったのだと思われたのでした。

My Private D☆V

『しゅがー・みーつ・がーる!』の白野アキヒロ。です。

D☆Vポイントは、「制服のデザインを考えるのも見るのも大好きです!!」。特にセーラーベースが好みという、その制服を『しゅがー・みーつ・がーる!』の美都とカンナで描いてみせて、ああスタジャンなしでのカンナの制服姿、ちょっとの照れもあって非常にかわいらしい。それでもこうしたイラストだから、がんばってポーズを意識しているのがなおいいですよね。

となりの美都はといいますた、夏服を召しまして、その表情、照れというよりも高揚に見えます。カンナと一緒に登場する、それが嬉しいと思われるようなうきうきとした感情が、そのポーズもあってか感じられて、こうした気持ちの機微もまた彩りであり楽しさ面白さであると感じさせてくれる、いいイラストでした。

思うんですけど、MPD☆Vのイラスト。ここだけじゃもったいない。なんかどこかに収録、再見できるような仕組みなどないものでしょうか。

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