2022年9月25日日曜日

『まんがタイムきららフォワード』2022年11月号

 『まんがタイムきららフォワード』2022年11月号、昨日の続きです。

『スローループ』

箱根旅行も終わり、小春、ひよりのふたりも帰宅。お家にはおばあちゃんもいて、夕飯の希望をうかがえばお鍋がいいと。それで釣ってきたニジマス使って鍋にするのですが、困ったことに小春が疲れて眠っています。

というところからの、ひよりと父、母、3人で鍋に挑戦することになるっていうのがね、なんか面白かったんですね。とりわけ母のあのやる気に満ちた表情、逆八の字の眉がいい! めちゃくちゃ可愛いよね、お母さん。

今回は楽しいばかりの話かと思ったら、小春が夢で見ていた情景。かつての自分なのでしょうか。がらんとした和室で窓の外を眺め、ひとり涙を浮かべている。大晦日、父は仕事。寂しかったのでしょう。そんな小春に声をかけたおばあちゃん。祖母の前では物分りよく明るく振る舞う小春の、けれどその内にある気持ちに祖母は気づいていて、そこでおばあちゃんのかけてくれた言葉、お鍋一緒に作ろうか。その思い出が目覚めた小春の今に繋がるというの、胸にしみるものありましたよ。

食事の情景! 料理作った3人がそわそわしてるの! ほんとこうした気持ちが描かれるの、いいよね。みんな、すごくチャーミング。そしてそこからの小春アレンジ? しめのラーメン。小春の押しの強さよ! 自分の希望をいうだけじゃなく、それがどんなに魅力的であるか言葉巧みに語るんですよね。ほんと、この子のしたたかなところだ! すごいなって思います。

『球詠』

白菊に課せられたミッション。それは美園学院リリーフ黒木の初球を打ち取ること。必ずくるという直球をホームランにすべく、ずっと準備をしてきた。はたして芳乃の策は当たるのか。この一球に対する白菊の思いをともに振り抜かれたバットは見事ボールを捉え、このままホームラン!?

そう思わせて、わずかに届かない。ほんと、このボールの伸びていく、その間の描写。期待とはらはらのいりまじって、手に汗を握るとはまさにこうした気持ちなんでしょうね。

残念ながら芳乃の作戦どおりには運ばなかった。けれど1点差にまで持ち込めて、そしてこの好打に対し喜びよりも落胆に近い表情を見せているのは誰か。相手方の心理を読むことで、新越谷の司令塔、芳乃の存在に辿り着く美学園川。この描写も実にスリリングで、本当にこうした気持ちのゆきかい交差する様子、見事だと思わされています。

芳乃は芳乃で美学の計略に気づいて、このままだと抑えられてしまう、その予感に青くなっているんですね。光が対策されている可能性に怖れを抱きながらも、エースヨミに希望を見る芳乃です。ええ、作戦を超えたところに勝ち負けを分ける機微がある。ならばヨミはここでなにを見せてくれるのか。ただ見守るばかりの私にしても、気持ちがぐいぐい引っ張られる思いです。

『最果てのともだち』

ああ、いい終わりを迎えましたね。小学校に現れる幽霊。こどもと教師、ふたりのお別れの日。それが彼女らにとっての卒業式であるというのが見事に響いて、ああ、本当に泣かされるものありました。

アサヒとユウ、ふたりが準備したもうひとつの卒業式。自分たちの卒業式の翌日に、キヨの卒業式をすることにしたというのですね。この日を迎えるまでのできごと。あの日アサヒに救いを見たキヨの願い、アサヒの卒業するときまでここに居たいという気持ちを受けて、ユウとも和解し、そして3人でともに授業を受け、キヨの望んでやまなかった学校での生活を送ってきたというのですね。

そのしめくくりが今日のこの日なのでしょう。キヨのための卒業式。手作りの卒業証書が渡されて、そして先生の言葉、これで授業が終わることが告げられたその時のこともまた、胸に迫るものがあったのでした。

旧校舎のふたりは、学校に夢見て、そしてその夢を失ってしまっていた。そのかつての夢見た思いがこうして報われる日を見たのですね。先生に贈られた花束。応える先生のお礼。もうね、たまらないものがある。続くキヨとのお別れ、いや、キヨと先生の旅立ちのシーンも力感をともに深く心に訴えるものがあって、きっと悲しい終わりにはならない、そう思っていた私にして、知らず涙がこぼれて、でも悲しさよりも晴れやかさ、よかったねという思いの方がずっとずっと強く感じられた。やはり、悲しい終わりにはならなかったのでした。

はじまった当初は暗く重く怖い、そんな印象の強かった漫画でしたが、その暗闇を抜けた先にこうした光に満ちて明るく暖かい終わりを用意してくれていたのですね。最後まで読めてよかった。アサヒとユウには前途が、キヨと先生には救いがあって本当によかった。晴れ晴れとした寂しさをともに、皆の旅立ちを祝いたくなる、そんなお話でした。

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