『まんがタイムきららフォワード』2021年12月号、昨日の続きです。
『追風のジン』
忍者に搾取、支配され、ついには皆殺しにされようとしているヨツワ村を救うべく忍者衆に果敢に立ち向かうジン。彼の技量は忍者衆たちを圧倒し、そしてただ忍者を前に無力を嘆くばかりだった村人たちの心にも活力を、自ら自身を助けるべく動く精神の支柱を取り戻させるにいたる。
ここでタイトル、追風の示すものがココロの口から語られて、そうか、ジンの吹かせる追風は、ジン自身に向けて吹く風でなく、ジンに助けられた人たちが、ただ助けられるだけでなく、前へと向かおうとするその気持ちを後押しする、そんな風であるというわけか。人々に元気や希望を与え、その背を押そうというジンの心意気。それが追風なのですね。
ただヒーローとして、弱きを助け強きをくじくだけじゃないのですね。活力を失っていた人たちの心に火を灯していく、そんなヒーロー。先頭に立って苦難を切り開き、その後についていきたい、自分たちこそがこの世界を生き、切り開いていく、そうした気概を思い出させてくれるヒーロー。ああ、これはかっこいいですね。感化され、自身の脚で立たんと欲する村人たちもかっこいいですね。
『観音寺睡蓮の苦悩』
睡蓮の母が介入してきましたよ。いろいろやらかしてしまっている娘に業を煮やして、環境を変えてやらねばと、急遽睡蓮の留学を決めてきた母。さすがの睡蓮もこの母には逆らうことができず、ああ、睡蓮、留学整理されちゃうの!? 主人公が留学整理……、斬新だ……。
これまでは、大抵のことを自分でなんとかしてきた睡蓮だけど、今回ばかりはそうもいかなくて、という絶望的なシチュエーションが周囲を動かしましたね。椿が、紫陽花が、睡蓮の留学阻止を決意する。さらにふたりは牡丹に助けを求め、その上、鈴、蘭に四葉まで動かすにいたるのですが、これは今まで描かれてきたこと、その集大成ともなろうものですね。それぞれに思惑のある子らが、ひとつの目的を前に一丸となる。時に対立したりしながらも、仲のよさを育んできた、そんな子らが、譲れない気持ちをもって、ついに動き出す。
睡蓮の尋常でない行動力が際立っていた漫画でしたが、その睡蓮の行動力が封じられたことで発現した新たな力。ああ、アベンジャーズだ。個性も能力も違う子らが、持てる能力、それぞれにできることをどう組みあわせ、問題の打破を図るのか。これは本当に見ものだと思います。
『ねことちよ』
ねこが育ててきたナス、ついに実が成りました。見事に実ったナスを収穫。けどねこはどこか浮かない顔で、ナスが好きじゃないんですね。ここで無理に食べさせようとせず、嫌ならふみやまきにあげてもいいよ、そういってくれるちよは優しいなあ。だからこそかな、ねこもちょっと挑戦しようという気持ちになれて、そこにかつてのふみの言葉も響いているの、これもよかったなあ。
ねこがいうんです。おいしいのにして! ああ、じゃあナスカレーだな! そう思ったらほんとにカレーで、わーお、びっくりした! 子供用の包丁まで渡してもらって、調理にも参加して、ねこ、これ絶対楽しいやつや。ナスも育てた。調理にも参加した。カレーの味付けもした。これ、絶対大丈夫なやつじゃん!
ええ、カレーができあがってからも躊躇してたねこだけど、ちよが、そしてふみがおいしいと食べてみせたの受けて、ついにナスを口にするんですね。
このお話、ちよがねこのことよく見て、苦手があったら克服させてあげようと、けれど無理強いはしないように気を配ってくれてるのがよくわかって、ああ、これは愛でありますね。ねこがよりよく育つよう、手をかけてくれている、それが伝わってくるのが本当に素敵です。
- 『まんがタイムきららフォワード』第15巻第12号(2021年12月号)
0 件のコメント:
コメントを投稿