2021年10月30日土曜日

『まんがタイムきららキャラット』2021年12月号

 『まんがタイムきららキャラット』2021年12月号、一昨日の続きです。

『またぞろ。』

文化祭で賑わう学校から姿を消したこと。クラスにも溶け込めない、そんな状況が耐えられなくなったのか。と思ったら、違うのか! なんとまあ、堤麻里矢に手をひかれて、学外に連れ出されていたんだ。しかしこの子のことに対する執着はなんなんだ。愛着を超えるなにかを感じさせる。親しさや心配よりも依存や支配を感じさせる、モラハラ色強い行動。そんな麻里矢を拒絶できないことにも問題あるのかも知れないけれど、むしろこうした性格だからこそ麻里矢のターゲットになってしまったのでは!? なんて思わされて、こわい、めっちゃこわいよ。

今回の連れ出しは、たまたまふたりの向かった先にいた巴と楓のおかげで失敗に終わり、こともなんとか助かったわけですが、それにしてもこの状況、ことひとりではなんともしようがなかった。こと、助けてと心の中で訴えてるわけでしょう? それを、それを口にすればいい! といっても、それができたらこんな状態には陥ってないよなあ。

麻里矢、どこか病的なもの感じさせる女の子。ことは麻里矢の支配から抜け出そうとしているからまだいいけど、麻里矢に完全に捕われたら共依存になっちまうなあ。でもほんと、ことはしっかりする必要はなくとも、自分の望まないことを嫌だといえる、その最低限はできるようになってほしいなあ、そう思わされたエピソード。いやもう、こんなにもこわい話になろうとは、この漫画がはじまった頃には思いもしませんでした。

『ササエルの中には誰もいない』

でもって、まさかヤバい娘が二連続でくるとは思わんかった!

ササエルに興味ありありの稲井。相手がササエル本人と知らぬまま小依につきまとっているわけですが、そのヤバいストーカー気質の稲井を力づくで制止する人物が現れた! 稲井の幼馴染み、ヤッチーこと前谷千鈴。昔からいろいろ行動があかん稲井のこと面倒見てきた、というか稲井係にされてしまってきた子なんだそうですが、今となっては自分の心の安定のために稲井が必要になってしまっている……。

あかん、ダメな人が増えただけだ……。

ヤバさでいえばこっちの漫画の方がヤバい度レベルが高いよね。社会の常識レベルを超えてきてる部分がある。とりあえず稲井は犬なみ。マジか……。人の顔舐めるのはやめようぜ。いつか問題になるよ。逮捕されたりするよ?

そんな彼女らとともに遭遇する小依の姉、日和子。ササエルとは無関係を装ってほしかったのに、尊敬勝ち取りたくてササエルをデザインしたと自らカムアウト。小依、身バレの危機がぐんぐん高まっていくんですが!? でもよかった、とりあえずバレてない。でもってここでササエルタペストリーがお披露目されて、しかもちょっとアレな感じなんか! これ、R18とかじゃないのん? この子たちも買えるの?

最初、なんとかして稲井、ヤッチーに見せないよう頑張ってた小依が、お金が入ると聞いて掌返すのな! この現金さ、さすがの小依。というか、この子はこの性格でいろいろしくじってるんだと思う。金に目がくらんでササエルになったり、今もこうして売り込みにも躍起になってと、金が自滅の道を舗装するタイプの小依。この子、これからもいろいろやらかしていきそうです。マイルドに身バレの危険度あげていってる感もあって、なんか期待してしまいます。

『RPG不動産』

ヤベえ。囚われの勇者から語られる魔王との戦いの真実。敵対的な亜人たちと戦ってきた、そう思わされてきた人間たち。でも本当はそうでなく、むしろ亜人を侵略していたのは人間たちの方だった。その先頭に立っていたのがサトナで、しかもサトナは人ではない!? 無抵抗なファーの母の命を奪ったのもサトナ。勇者の役割りを担わされた子の口を封じたのもサトナ。

サトナがいろいろキナ臭い、ずっとそんなこといってましたけど、そんなどころじゃなかった! 今回明かされたいろいろは、これまでのサトナ像を根底から覆すもので、胸を至近から矢で射貫かれても絶命しない? 腕を切断されてもなんら影響がない、どころか触手? どうにもこうにも尋常でない描写が続いて、見せかけの器? ということは、人の外見を模しているだけで、中身はまるで違うもの。もともとサトナという人物はいたのか、中身が入れ替わっているのか、それともあるいははじめからサトナという人物は虚像に過ぎなかったのか、などなど、サトナにまつわる不審がどんどん膨らんでいくのですね。

アリスの姉、セレニアの命運やいかに。そして我らが主人公、琴音の気づいたこととは!? そして歌いはじめたその意図とは。不動産要素がすっかり吹っ飛んでしまって久しい『RPG不動産』、彼女らの未来はいかなるものとなるのか。いやもう、目が離せないどころか、はやく、はやく落ち着いて! いや、しばらくは動揺の続きそうな感触です。

『紡ぐ乙女と大正の月』

紡がうかがい知る華族の世界。きたるクリスマスを前にひとり浮かれていた紡が、唯月はじめ旭も初野も予定があると聞かされる。末延家で開かれるクリスマスの夜会に出なければならない。パーティーがあると知って目を輝かせた紡だけれど、女中としての仕事があるためパーティーへの参加など叶うべくもなく、さらには浮かない表情を見せる唯月、それはパーティーが大人たちの社交の場であること、家名に縛られ自由ではあれない唯月たちにとってはそも楽しめるようなものではまったくないのだという現実を如実に物語って、ああ、見るだにつらい、そんな悲しい情景。紡ならずとも、肝の冷える、そんな描写であったと思います。

思えば大正は、自由と権利を勝ち取ろうとする、そんな気運のあった時代でした。それはつまりは自由や権利の制限された人たちの多くいたということでもあって、唯月たちはまさにそうした状況に身を置いているんだということを痛感させられたエピソードでした。

時は大正10年暮。二年間の自由を許されながらも、本当に自由ではいられない悲しみを背負う唯月にとって、末延家の娘ではなく、ただひとりの誰でもない唯月として遇してくれる紡の存在は、どれほどにかけがえのないものであるでしょう。紡の前では飾らぬ自分自身であれる。そんな唯月を迎えてくれたささやかなクリスマスの飾りつけ。唯月にとってどれほどの救いとなったろう。しみじみ泣けるものありました。

0 件のコメント: