2021年10月21日木曜日

『まんがタイムきららMAX』2021年12月号

 『まんがタイムきららMAX』2021年12月号、昨日の続きです。

『初恋*れ〜るとりっぷ』

プリシオンチャレンジを無事クリアして、まひろ先生とのふたりSL旅を勝ち取ったそら。SL銀河を堪能しながらも、先生に自分の気持ちを伝えたい。それでもじもじまごまごしてしまうそらはいつもどおりといえばそのとおりなんですが、それでもしっかりきっちり気持ち伝えることに成功するんですね。

この気持ちを伝えた時の先生の反応! これ、まるで気がついてないやつじゃん! みたいにも思ったんだけど、いやむしろそうではなく、以前からいろいろちゃんとわかってたともいえるのか。昔、先生がくれた思い出の切符。左下の数字が現行のものと違うんですか! そうした鉄道知識も挟みつつ、きちんとそらの気持ちを受け止めてくれて、ああ、その大好きという言葉はそらのいう好きに呼応するものと考えていいのでしょうか。

でも、最後のふたりの様子など見れば、成就した、そうしたもの感じさせてくれますよね。ふたりいつになくしあわせそうで、それだけにちょっとプリシオンが可哀そう!? 物語を終わらせるためにやってきた、みたいな感もある子でしたが、この子はこの子でまたなにかしあわせを得られたらいいな。そう、みながみな、それぞれのしあわせを手にする未来があればいい。そう願わされるお話だったと思うのです。

『お姉様のVな事情』

マリナの使っているフライパン。これ、うちにあるのと同じでは……? ともあれ、酒ばっかり飲んでいるミユキのためにと料理を作っている。その頑張りは無神経な弟の介入でふいにされてしまうのですが、でも今回はこの子のこうした気持ちがミユキにしっかりと届く、そんなところがよかったんですね。

商品レビューを頼まれたというミユキ。秋の新商品、ビールなんだそうですが、味のレビューとか無理なんだそうでして、なにを飲んでもおいしい。酒に酔ったら語彙が死ぬから? でもミユキがいうには昔から味とかわからない。なに食べても同じとかいってて、ということは酒はそれを味わって楽しんでいるというよりも、酔いたいから飲んでるということなのかな。

想像以上に不健全なミユキの生活。食事はずっとカップ麺ですませているというの知らされて、ミユキさん……、味覚障害なのでは……!?

なんでもできる、しっかりもので手のかからない子、そんな風に思われがちなミユキの、けれどその内に抱えている寂しさ? 虚しさ、それに気づかされたマリナと、ふたり一緒に食べたマリナのチャーハン、それがミユキにもたらしたもの。ああ、胸の空白が埋まった、そんな風に思っていいのでしょうか。完璧に見せて実はそうではないミユキの、欠けている部分をマリナが埋めていくのだとしたら、ミユキにとってマリナは欠くことのできない大切な存在になりそうですね。いや、もうそうなってるのかも。いい関係が築かれていきそう、そんな予感がしています。

『ぬるめた』

めちゃくちゃ面白いな。なにが面白いって、見せ方がすごく振るってる。

唐突にモンブランを作るといいだしたちあき。それが巻き起こす騒動、というか、あのメッセンジャーアプリでのやりとりの賑やかさ! めちゃくちゃ面白い。

さきなにくるみにしゆきと、それぞれの予定、活動に差し込まれたモンブランの衝撃と、メッセンジャーアプリに投入されるメッセージの噛み合いがすごいのね。四コマで進行していく個々の様子と、隣りあって描かれているメッセンジャーの画面、そこに出てくる吹き出しがリンクして、ああ、この子らのこういう反応があって、このタイミングでメッセージ送ってと、こいつはすごいや、四コマに描かれる素の反応とやり取りされるメッセージの機微! いやあ、よくよく魅せる、そんな誌面ができあがっていたわけですよ。

話題は錯綜しながらも、バラバラに休日を過ごしていた皆がモンブラン目当てに集まってくる、そのテンションの高さもまた素晴しかったよね。気持ちの高揚して、またそれぞれの持ち寄る話題、興味が絡み合って、ややこしいし騒がしいし、けどそれが面白い。ええ、本当に魅力的なもの作りあげられました。

なにがいいって、このやり取りに見える人の気持ちの見え隠れする様! 群像劇とはこういうものかい? いやもう、この漫画は個を描きつつ場も描いて、その限定された舞台でのコメディとしての完成度、すごく高いな。いやもう、見事でした。

『桔香ちゃんは悪役令嬢になりたい!』

おお、いとちゃんの回だ。この子がメインの回は人の情のうかがえる、そんなよさがあるでしょう。こいつは期待されるぞ、そう思っていたら、案の定、とてもいい。いとちゃんの、自分の世界を大切にする性格と、でもそれがために見落してしまっていたこと、最初から決めつけて見ようとしていなかったものに気づけた、その変化やステップアップがこの子のよさをしっかりと押し出してくれていた。本当にいい話だったと思います。

いとちゃんの苦手にしてるもの、たくさんありそうですけど、ギャルもそのひとつだというのですが、桔香のせいでクラスのギャルっぽい子、カネポンと縁ができてしまった。ひとり静かに読書をしたいのに、空気を読まず話しかけてくるカネポンに気分を害してしまうわけですが、まさかそのカネポンがいとちゃんの読みたかった新作を持っているだなんて。本を貸してくれるから気を許したわけじゃない。カネポンがどういう子か、知ろうともせずにその外見から、スタイルから、自分にはあわない、苦手なタイプ、そう決めつけていたことをむしろ今では恥じている。カネポンがどういう人か知ることで、ギャルとして十把一絡げに括られていた存在から兼見さんという個人になったんだね。

兼見さん、本屋の子。この子の部屋には、父親から贈られた本がいっぱい! というのだけど、残念、この子は本は読まないのか。でも、新刊を手に目をキラキラさせているいとちゃんを見て、本の世界にちょっとでも興味が湧いた?

いとちゃんが、本をきっかけにして兼見さんのことを知ろうとしたように、いとちゃんをきっかけとして兼見さんが本に興味を持ったりしたら面白いな、なんてことも思ったりしたエピソード。知ることで世界が広がる。偏見もなくなっていく。そうしたことの大切さにも触れられていたと思います。

0 件のコメント: