2021年10月22日金曜日

『まんがタイムきららフォワード』2021年12月号

 『まんがタイムきららフォワード』2021年12月号、発売されました。表紙は『すぱいしーでいず!』。カレーのソースポットにちょこんと収まったすてら。すてらの周囲にあるのは、カレーの材料? って感じではないですなあ。下がり眉でちょっと困った風に見えるすてら。内気なこの子の引っ込み思案がこうしたところにも見てとれる。ぎゅっと胸に抱いているのはぬいぐるみ。ぴょこんと伸びた耳をぱくりとくわえているのが、この子の不安をうかがわせてくれて、いたいけな様子をこれでもかと見せてくれていますよ。

今月は新連載が1本、新規ゲストが3本です。

『え?結婚って3次元でもできるんですか?』

不穏な漫画だ! 30過ぎてもオタク活動に邁進する星乃ヒカリ。いや、別に30越えてオタク活動してる女子とか普通よ、珍しくなんてないよ。と思って見てみれば、おおう、取材協力のクレジットにとら婚とあって、もしかしたらわりとガチめのオタク婚活漫画なのこれ?

オタク女子のヒカリ。同居する妹からもいろいろ心配されているのだけど、それ、オタクだからとか30過ぎても独り身とかだけじゃなく、感極まると? 壁に頭を打ちつける奇行のせいなのでは? 推しのキャラがいる。そのキャラを演じる声優のことも推している。そんなヒカリがゲットしたのは、推しの出演するステージのプラチナチケット。

それはいいのだけど、またそこで奇行に走るのか……。正直このへんの感情の機微はわからんのだけど、ともあれ妹の助けもあってマシな見た目でイベントに参加することができた。その会場で再会したのが、大学時代の友人、というのだけど、晴美恵、あだ名はミケ。この子、すっかり変わって小綺麗になってる!? ヒカリはミケも推しの出演するイベントに参加しているものと思い込んでるけれど、ミケの言動鑑みるに、どうもヒカリとは違ってるみたい……。

これ、不穏な展開が予感されるんですが!? ヒカリの推しの関係者なのでは? まさか姉ではないよね? 妹でもないよね? となればばばば? とりあえずヒカリの奇行が予感されて、今から覚悟決めていく所存です。

『花灯のコンフェッティ』

森で魔獣に襲われていたところを助けてもらった恩返しにと、魔法使いのミモザの家にお邪魔することになったセチア。セチアの種族、ハタリは恩を感じた相手のもとで恩返しをするのが習わしなのだというのですが、なるほど機を織ったりするのかい? いや、普通に家事をやってくれるみたいですね。

セチアが家を出た理由、外の世界から村に帰ってきた姉の話に感化されて、まだ見ぬ外の世界に憧れたからだというのですね。けれどそこにはまだ秘密にしていることがあって、それは大切な人との出会いを求めてのこと。そしてその望みはおおかた叶っているというのですね。

セチアを助けてくれたミモザ。かっこうつけてクールなそぶりしてるけど、実際にはいろいろ緩くて、実はおっちょこちょい寄り? 家事も料理以外は完璧、みたいなこといいながら、実際には掃除片付けもまるで駄目!

かくして需要と供給? それがマッチして、また誰かがそばにいてくれるということに嬉しさ感じているミモザの感情も。互いに求めあっているふたりの出会い。これから深まるふたりの仲や感情、その行方に興味がつきません。

『レンズ越しに鬼はいない』

転校生の千秋が昇降口でぶつかったのは、やたら目付きの鋭い女子生徒。あまりの険しい表情に怯えてしまった千秋ですが、この子の落としたリップクリーム、それを返そうと何度もその子、一鬼凛にアタックすることで、クラスの誰も知らずにいた凛の実際のところを知るにいたるのですね。

そうか、凛は目が悪いのか、それでものがよく見えず、結果しかめっ面になってしまう。そんな彼女にかけさせた自分の眼鏡。視力が矯正されて眉をひそめずともものの見えるようになった凛の和らいだ表情! いや実際、これは可愛かったです。

誤解されている凛と、けどその真実は千秋しか知らないという優越? というか、いろいろ悪い噂を聞かされてたけど、あれはどこまでが真実なん? ともあれ、学校の皆から怖れられている凛にもぐいぐいいく千秋のその姿勢。前半で描かれた関係性、それががらりと転換するのは見ていて面白く、魅力的と感じました。

『逢原サヤのラジオドットA』

新人声優の逢原サヤ。この子のはじめての仕事風景、ラジオのパーソナリティとして頑張る姿を描いたお話。なにかと失敗しがちで落ち込みがちなサヤのその浮き沈みを愛で、応援する、そうした要素もありつつ、ラジオ収録の現場のいろいろ、張り切ってはやくくるとまだ誰もいなくて不安になるとか、ディレクターに構成作家、ひとつの番組に携わる人たちの仕事ぶりなども描かれて、なるほどこうした現場に興味のあろう人には、その裏側を知ることもできる、そうした面白さもありそうな漫画です。

しかし、現場のいろいろが描かれるからなのか、ほらよくアニメ化とかされたら、アフレコ現場の見学レポート漫画とか掲載されたりするじゃないですか。そうしたテイストも感じられて、フィクションながら不思議なリアル感あったりするのも面白みとなっていました。

サヤの苦手や失敗して落ち込んだり慌てたりするところ。それがこの子の愛嬌として好感もたらしてくれるのがよかったです。それは、ただ失敗が描かれるだけでなく、前向きであろうとつとめている姿や、事前の台本の読み込みなど、この子の頑張りがともに描かれていたからだと思うのです。チャンスを前に不安もある、自信があるわけでもない。けれどそれでも、なんとか得たチャンスをものにしようと奮闘している、そうした姿にこの子の人間像、キャラクターの厚みを感じたのかも知れません。

ラストのサヤが自分のラジオを聞くくだりなど、頑張りのむくわれる様になにか嬉しさ覚えるのも、この子の存在を実感するがためなのだと思います。そしてだからこそ、この子の頑張る姿に元気づけられる、そうした気持ちにもなるのだろうなと思ったのでした。

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