2021年10月6日水曜日

『まんがタウン』2021年11月号

 『まんがタウン』2021年11月号、昨日の続きです。

『押しかけギャルの中村さん』

秋山の家に転がり込んできた中村さん。この人の『魔法少女りるるる』にまつわるバックグラウンド、さらには秋山に対する意識のはじまりが語られた今回。大荷物から出てくるりるるるグッズの数々もだけど、オタクなのかといわれて照れているのが面白い。昔は悪口みたいだったオタクって言葉が、今だとただ好きなだけではない、より先に進んだ求道者みたいな感じになってるんですかね。照れたり、スティック3本を誇りに思ったり、その表情のくるくる変わるところなど、魅力的なお嬢さんです。

でも、ここまで入れ込んでいるりるるる。このことを一緒に語りあえる友達ないしいるのかというと、そうじゃないっていうんですね。友達ははやくにアニメから離れてしまって、りるるるの話はできなくなってしまった。心の中に大切にしまって支えにしていたりるるるを、ふとした時にわかってくれたのが秋山だった。髪型がそうなんですね。って、わかるのか秋山!

かくしてりるるるが繋いだ縁。ふたりはもう友達だ! みたいな流れ、おお仲良きことは美しきこと、みたいに思ったら、友達ということに付け込んで長逗留する気満々じゃん!

こうして本格的に同居が確定した秋山と中村。さあこれからどんな生活が!? というの、もう初日からドタバタしてますね。ええ、ちょっと同居のルールとか決めないと今回みたいな事故は多発しちゃいますぜ?

『君と銀木犀に』

葉介にとって、祖父の影響下にいることは息苦しい、わずらわしいことだった。どこにいても家の支配のもとにあることが不自由さ感じさせ、そんな葉介にとっての自由な時間とはひとり本に向き合っている時だったというのですね。

葉介にとって通学の時間のいかに大切であるかも語られて、自分の足でもって学校に向かい、そして泉とともに語らう。そのなんでもないと思える時間が、葉介にとっては自由そのもので、自分が主体的に世界に向き合える時間に他ならなかった。

思ったんですよ。この漫画の伝えてくる心情の重み。それは葉介の、そして泉の生きることに対する切実さなのかも知れない。他の誰でもない自分自身であれる場、時間を求めること。自分の存在そのものについての揺らぎ、迷いを抱きながらも、自分であることをやめることはできないということ。おそらくは多くの人が心のうちに抱え、時に苦しんだり、あるいはそっと胸の奥底に埋めてしまったような気持ち。もしかしたら誰もが経験したことのあるそんな苦み。

それをまさに今、自分のこととして引き受け、その思いに振り回されそうになりながらも、どうにか自分の足で立とうとしている。なにげない日常と思える光景に、彼らのよりよく生きよう、あろうとする姿が照射され浮かびあがってくる。その、時にぎりぎりのところにまで踏み込もうとするかのような姿、そこに強く心が動かされるのです。

さてこの物語も佳境でしょうか。泉のために書かれた脚本。『銀河鉄道の夜』をベースにしたひとり芝居? 演じるのは葉介ひとり。伝えたいことがある。他でもない大切な友達のために紡がれた言葉がある。一世一代の大芝居ではないですか。葉介はなにをいおうとするのか。そして泉はなにをか受け取るのか。まだなにも語られていない今からして、もうたまらない思いがします。

『食欲しか勝たん!』

こころんの連想、強引すぎる! 先輩アイドルグループのライブに訪れた瞬くシグナルの3人。盛り上がる客席を見下ろしながら、こころの脳裏によぎるのはパン。

ええと、客席がパンパン。ファンの手拍子がたてるパンパンという音。それがこころの意識を刺激して、パンを想起させてしまった!

マジか! マジかよ! すごいな、連想力! というか、まさかパフォーマンスのパとンもその連想に関わってる!?

しかしすごいスピード感。さっきまでライブ会場にいたのに、ページをめくるともうパン屋に移動していて、パンに夢中で一瞬でライブが過去にされちゃったのか!

でもここからのパンの描写素晴しかったと思う。とりわけバターロール。ああ、このこころんがバターロールを食べてもらす感想、これを見て、バターロールを食べた時の感触が一瞬にして口の中によみがえってきたんですよ。バターロールはオーブントースターで軽く焼いたのが好き。表面がちょっとパリっとして、その香ばしさとともに口にした時のあの香り、味わい。ああ、そうか、あれこそがこころんのいう芳醇なバターの香りなのか。

これを読んで、もう長いことバターロールを食べていないことに気づきました。また食べたいものだな、どうせならいいとこのを食べたいな、なんてこと思って、となるとパン屋がやってるベーカリーカフェあたりがいいな。と、もう何年もバターロールどころか外食をしていない。ああ、パンを食べにいきたい。外食をしないでも平気、そう思っていた自分に再び外で食べる楽しみを思い起こさせたのは、まぎれもないこの漫画によって呼び起こされたパンの食感がためでした。

で、この漫画、すごいな。この一連のベーカリーの描写、全部こころんの妄想やったんか! しかもステージからの呼び掛けに絶妙の返しをした夢見心地こころん。どれもこれも結果オーライだけど、先輩に失礼を働いてしまったことを悔いて流す涙も感動のそれとして処理されて、ほんと、いつもながらのびっくり展開にすっかり笑ってしまいました。

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