2021年5月6日木曜日

『まんがタウン』2021年6月号

 『まんがタウン』2021年6月号、発売されました。表紙は『SUPER SHIRO』がメイン。どーんとでっかく、スーパーシロが描かれていまして、このシンプルな造形、逆に存在感感じさせるのがすごいですよね。ちょっと離れた点目が、表情をこれと伝えてこないことで奥深い? そうした感情をもよおさせるように感じます。この他には『部長と2LDK』、最終回の告知カットがございます。さらには『ルナナナ』、小坂俊史の新連載告知カットもございます。

今月は新連載が1本です。

『ルナナナ』

表紙のカットを見て、どんな漫画だろうと思った、その意表を突くような設定、展開。なんだこれ、SFだ!

アポロが月探査を終えて以降、その試みが継続していたらどうであったかを描こうというかのような、ありえたかも知れない月の情景。地球から見えないのをいいことに、各国が極秘に月の裏側にコロニーを建設、開発を続けていた。開発開始は当然昭和の昔。かくして主人公たちが住み込むことになったアパートいやさドミトリーは、月面コロニーといった近未来感など微塵も感じさせない昭和の建物そのもの。しかも主人公たち3人は、高収入バイトに応募したらまさかの月世界行き。この舞台と設定と登場人物、それぞれに見えるちぐはぐさ。おお、小坂俊史だ、小坂俊史テイストだ。

もうこれだけで楽しくなってきますよね。

勤務地が月だなんて聞いてないとかね、そういって求人広告見返してみたら「月で働ける」の文言、これひと月契約でなくて勤務地のことか! みたいなのがねしびれますよね。また時給3千円も、まさかの月円、重力6分の1だからお金の重みも6分の1。やってくれる。人が悪い。契約破棄のペナルティもヤバくて、月地球間の往復交通費が自腹になりますとかね、ほんとこの発想よ。もうめちゃくちゃ面白かったです。

初回の一番は「5メートル」でしたよね。あれ、ほんと面白い。言葉少なに伝えてくる面白さ。最高でした。しびれます。

『部長と2LDK』

最終回でしたよ。部長、感情大暴走ではないですか! 風呂で聞いた女子トーク、菜々に気のある男の影ですよ。もう、部長、見事に落ち着きなくして、西さんにはまだはやい。さらに加えて、菜々がちょっと意味深な反応してみせたせいで、おお、本格的にショック受けてますよ。

温泉出てからの宴会の席で、部長が問題の男子、青山を問い詰める問い詰める。好きな人いるの? にはじまって、もっと褒めろだの、それ以上は駄目だの、結構な無理難題では!? それもこれも酒のせい? 自分を失ってますよね。これ、酒のせいかな? 嫉妬が発端かな? いずれにしても酒にやられて、菜々は自分のもの宣言、さらに加えて大大大大大好き宣言までやらかしちゃって、最高でしたね。もう、こんなの見られる日がくるだなんて、感無量も感無量でした。

自分の失態に落ち込みながらも、菜々との同居生活の終わりを考えたら寂しいって、自分の気持ちを菜々に吐露してね、そこからのふたりの様子、素直な部長! 菜々の包容力! ほんとよかった。

部長にとってはとんでもない大曝露になってしまった、そんな旅行でしたけど、結果的にふたりの距離、さらにさらにぐっと近くなった。ラストに見せたふたりのやりとりなんてね、ほんと素敵だったじゃないですか。ちょっといたずらっぽく笑う菜々に、照れもなく真面目そのものに受ける部長、その様子。ええ、ふたりの暮らし、これこそが今のふたりのホームであるのですね。

『新婚のいろはさん』

早倉哲子ってソクラテスだったのか! いや、劇中ではたまたまですよってことになってたけど、作者の命名はソクラテスからだったのか! いや、偶然たまたま後から気づいてネタにした、とかだったらどうしよう。いや、別にどうもしなくていいですね。

早倉さんの名前の秘密、これ、小学生の頃には気づいていたけど、誰からも指摘されないまま今まできてしまった。親しい友人がずっといなかったからだ、そういっていた彼女に立て続けに、ソクラテス由来なのかと聞く人が出てきて、ひとりはいろはから、そしてもうひとりは、夏に一緒に海にいく約束している友達から。ああ、このことだけで早倉の身に起こっている変化というのがわかります。

小学生、中学生の早倉哲子にはいなかったという親しい友人、それがもう今の哲子にはいるんですよ! 学外にも、そして同級生にも、親しく話せる、そんな友人がいるんですよ。ああ、早倉哲子はもう一人で自在に泳げるのだ。

今回、早倉哲子の魅力もまた濃密でしたね。この子の魅力、それは内省的であるところだと思うんですよ。自分になにが足りないか、それを思って自ら課すトレーニングミッションとか、さらにはついつい見栄? を張ってしまう自分に対する外部的視点を持ってるところなどなど、こうしたところが、面白みでもあるのかも知れない、けれど同時に誰しも経験する、したことのある、そうした心の動きに、早倉哲子という人物を親しく感じることのできる、そんな描写になっていたと思うのですね。

内省的な哲子さん。けどそれがほどほどで、それゆえに人間的で、可愛いと思える。ええ、人はかわいい、かわいいものなのです。

0 件のコメント: