『まんがタイムきららキャラット』2020年9月号、発売されました。表紙は『紡ぐ乙女と大正の月』。レトロデザインの表紙。その中央には、頬を寄せあう美少女ふたり。なんら躊躇することのない唯月と、照れて腰の引けている紡という、そのバランスが面白い。しかしほんと、唯月さんはご自身の心のままにお振舞いなさるようになって、それはそれは輝くような魅力を放っておいでであります。しかし、金の特色インクも絢爛な表紙。堂に入ってますね。表紙イラストを用いた図書カードもね、すごく凝ったデザインしてるでしょう。ほんと面白い。こういうの、工夫、見せ方、大好きです。
今月は新規ゲストが2本です。
『ミカラコイ』
大家と書いておおいえと読む。その子が大家をしている家に突如現れたのは、過去改変を狙う未来人! いや、過去改変を狙ったけれど過去にいけず未来にきてしまった天保7年出身の鬼もいましたね。このふたり、突如風呂場に裸で現れて、というか、鬼のコイは普通に風呂につかってくつろいでましたよね。未来からきたロボットのミカはターミネーター、T-800っぽい登場してきたところだったんですかね。
ミカの目的は、人類絶滅の回避なのだそうですよ。争いと大気汚染が人類を絶滅させてしまった。過去に飛び、人類滅亡の未来を回避する。その思惑が、鬼のコイの野望と微妙にリンクする。人に滅ぼされた鬼の生き残りであるコイは、過去に戻り人に復讐を果たすつもりであったのだけど、ミカの時間遡行の影響でこの時代に流れついてしまった。コイに働きかけて人と鬼の共存する世界を成立させれば、人類絶滅の未来も回避できるかも知れない……。ミカの策略にコイの存在が組み込まれた?
こうした思惑の交錯するところ、なかなか面白いかも、なんて思わされましたよ。
いろいろ気をつかってくれる大家。この人に取り入るためにいろいろ演じてみせたコイだけど、決して自分のためってわけじゃなく、大家の気持ちの隙間を感じとって、その寂しさを埋められないか、そうした優しさ? 共感を描いたのもよかった。この三人の同居で得られるもの、変わるもの、とりわけミカの変化が楽しみに思います。
『ネコのてはかりるべき』
助けた猫が恩返しにやってきました。鶴の恩返しなんかは、自分が鶴だとは明かさなかったけれど、この猫の子は自分があの時の猫だってちゃんと明かして、というかそうしないと警察沙汰になりそうだったものな……。こうしたところ現代的だ。でも、野良猫時代に保健所に連れてったというの、それ一歩間違えれば……?
猫耳の少女だなんてと写真を撮る主人公。SNS映えとか意識してるんですね。でも、作り物の動画なんてバズりませんよ! って、猫さん、SNSにやたら詳しいな。
なんとか恩返ししたい、そう願うものの、なにか助けになるようなこともできず、むしろご飯用意してもらったり、恩ばかり積み上がる。そんな猫の空回り恩返し。ちょっと焦りぎみの猫のこと、にこにこして受け入れて、いろいろ世話も焼いてくれる主人公。その気さくさ。自然に親切する感じが好感あっていいですね。
『紡ぐ乙女と大正の月』
いよいよ軽井沢へと向かいます。上野駅から汽車に乗るんですが、待ち合わせの情景が実にいい。おお、皆の洋装、とても美しい。初野は可憐だなあとか思ってたら、旭がえらいこと化けてきました。
蒸気機関車にはしゃぐ紡。これ、当時の人から見たら汽車も知らない田舎者みたいに見えたのかも知れないけれど、紡にとってはめったに走ってるところなんて見られない過去のテクノロジーなわけでしょう。この意識の差ですよ。紡が未来人と知ってる、同じ前提を共有しているからこそ共感できる紡の興奮という、この構造が面白かったです。
そして車内の情景ですよ。ものすごい客車がきた! さすがの紡もびっくりするレベルの内装で、すごく高そうな指定席とか思ったら、まさかの車両丸ごと特別あつらえだっていうの、ここでのカルチャーギャップね、ほんとこれもまた紡の感想に気持ちがリンクしましたよ。
かつて七緒に取り押さえられたのが心のしこりになっている旭の、だんだんに自分のペース取り戻していくところ。紡の尻叩きとかね、めちゃくちゃ面白かったのだけど、愉快そうに笑っている唯月も結構肝が太いよね。そして駅弁をもりもり食べる初野ですよ。この子、このグループの中では上位に入る身分の御令嬢だっていうのに、それを感じさせないわんぱくさ。庶民思わせる親しみやすさがあるの、なんか面白いよなあ。あと、やっぱりこの子も肝が太い。
列車事故の話にちょっと怖くなる紡の手をとって安心させる唯月が素敵でした。でもって、そのたび心を乱される旭嬢! ほんとこの子も大変だ。そして最後に登場してきた唯月の因縁あるお相手? 雪佳嬢。おお、この再会がいかなる展開を導くことになるのか。気になります。刮目して待て、ですね。
- 『まんがタイムきららキャラット』第16巻第9号(2020年9月号)
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