2020年7月29日水曜日

『まんがタイムオリジナル』2020年9月号

 『まんがタイムオリジナル』2020年9月号、一昨日の続きです。

『カントリー少女は都会をめざす!?』

八重さん、いったいどうなさったのか。体重が増えました。それで、なぜ縦ロールをとけばなんとかなると思いましたの? 八重いわく、縦ロールには都会への憧れ、夢や希望が入っているのだそう。増量したのがあまりにショックで現実逃避しているのかな。でもここからのくだらない与太話、希望が消えて夢だけ見てる縦ロールとか、妙に語呂のいい、でもなんともよくわからん軽口が楽しくて、こういうの八重の持ち味ですよね。なんでも楽しむ子だけど、その根っこには、ちょっとしたことをふくらませて面白くアレンジしてしまう。縦ロールジェットとかね、あまりにも馬鹿馬鹿しいんだけど、でもなんか楽しい。八重のいいところがよくよく出ていました。

ツッコミというか、話す相手が変わると面白さの方向性が変わります。大河を前にすると際限なくおかしな方向にいってしまうけれど、亜紀が相手となるとちょっと追い詰められた感じが出てくる。これ、大河のなんでも受けて面白がってツッコんでくれる性格と、ちょっとシニカルで現実路線の亜紀の性格、ふたりの傾向の違いが反映されているんですね。

そして最後にみなちゃん。この子はいいですね。すっかりうちひしがれて、髪を巻くのもやめてしまった、夢も希望もない八重に、ふたたび夢と希望を与えた優しい子! ほんと、それぞれ違う個性がそれぞれに反映して、その違いごとの面白さ、よさを見せてくれるのが素晴しいです。

『通勤通学クエスト』

ほんと、面白い。突然降り出した雨をさけて、子供たちがマンションの玄関、軒先に集まっています。そこに帰ってきたサラリーマン、柏木の脳裏によぎった心配。子供たちにはちょっとのいて欲しいけれど、自分から声をかけたらやばいよね。ああー、わかります。たとえ親切心からの行動でも子供に声をかけるのに躊躇するというのは避けたい。そういう気持ち、私にもありますから。

共感からスタートした今回の『通勤通学クエスト』。でも本番はこれからで、雨宿りをしている子らにあまってる傘をあげようと思い立った柏木。躊躇しつつも松島さんの経験からくるアドバイスを受けて動き出すんだけど、ああー、あれだ、リコーダーの練習をしている子を町の皆で見守ってた時の話ですね。こうして、人やできごとが重なって、物語世界が広がっていくのはわくわくさせられるものありますね。ちょっと話がそれました。

柏木のクエストですよ。思い切って声をかけたーっ! と、ここでフーコに怪しまれて、ピンチ! ピンチです! と思ったら、今度はウミが理性的に判断するというんですよ。どんだけ理性的、というか理詰めだったかを、あのデカい吹き出しが物語る。コマをほぼすべて覆わんとする吹き出しと、隙間にちんまり描かれた子供たち。これ、ウミの雄弁さを物語ってますよね。ほんと面白かった。

そのウミの雄弁。柏木にとっては頼もしい弁護、応援でしたよね。そしてその翌日、柏木のもとに届いたお礼の手紙。最後まですがすがしく嬉しいエピソード、素晴しいクエストでした。

『とびだせT.O.Z』

マナ、陸上の練習を頑張ってますね。でも練習の方向性がどうにもこうにも自分向けではない。むしろ兄貴向けなのではないか? そんなドMメニュー。というか、あの縛られてるの、どんなトレーニング効果があるんですか!? 謎すぎます。

今回は特別コーチによる特訓です。浅葉先パイが抜擢されて、マナにカトリンに茶山さん、3人で先パイのトレーニングメニューに取り組むんですが、先パイがとにかく感性の人すぎて、いってることがさっぱりわからない! 私のおこしたさざ波にのれ! 意味がわからない! カトリンがめちゃくちゃいい返事するから、感性が近いと意味も伝わるのか!? と思ったら、まったくわからんままについていってるだけか! この勢いまかせの展開。見事でした。

基本、浅葉先パイは超人カテゴリーですよね。笑顔で軽々こなしているトレーニングメニューだけど、マナはもとより、カトリンも茶山もまるでついていけていない。でも、茶山はむしろそれが喜びなのか……。なかなかに危ない子たちです。エンドルフィンハイ? それにしても過剰すぎますよ。兄貴に、というか兄貴のトレーニングメニューに接近させないようにしないと。危機感に頭かかえるマナがなんかよかったです。

『大奥より愛をこめて』

今回は史実パートといった感じでしたね。松前での日露会談。その行方を憂う大奥の様子こそ描かれるけれど、将軍家斉と松平定信の関係にこそ重みが置かれたと感じられた今回。国の行方を思い粉骨砕身する定信を見る家斉の胸中やいかに。定信の活躍を労わるのか、より高い評価がなされるのか。と思っていたら、老中及び将軍補佐役の解任でありましょう。定信にかかる負担のあまりの大きさを思い、背負う荷を減らそうと考えた? いや、違うのか。そうか、定信を疎む勢力が抑えられないほどに大きくなってしまったというわけですか。それで定信を解任せざるを得なくなったというのですね。

道場にて竹刀をまじえる家斉と定信。そこでかわされたふたりの会話。持つもの、持たないもの。能力を持つが人望を得られない定信と、人に好かれる資質を持った家斉。その互いに持たないものに苦しんできたのかも知れませんね。望んだ資質を持つものを前に、よりいっそう苦悩を深めてきたのかも知れませんね。

と、歴史の流れとそこに浮かぶ思惑に焦点があたった今回でしたが、次回こそは我らがヒロイン、蒔乃をめぐる物語が語られようというのでしょうか。ロシア船から引き渡された漂流民。そのひとりである光太夫と呼ばれる青年。明らかにマキ、すなわち蒔乃の関係者でありましょう。しかも捕まえる? 穏やかでない物言いに、なにが起ころうとしているのか、あるいは蒔乃の正体とは? この漫画の核心に近づきつつある、そんな予感がしますよ。

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