2018年10月14日日曜日

思い出し語り: 山田まりお

 今は亡き『まんがタイムラブリー』でこの人の漫画に出会った時は、そりゃあもう驚いたもんでしたよ。『スーパーOLバカ女の祭典』。舞台はオフィスで主役のふたり組はOL。だからといって、これをオフィスものとかOLものとかいっていいのだろうか。内容はドタバタというかハチャメチャというかシッチャカメッチャカというか、暴走するギャグ超特急とでもいうべきか。もう、びっくりした。いやもう、なにに一番びっくりしたかって、ラブリー掲載なのに全然ラブリーじゃないじゃん! ってことですよ。

でもすごいですよね。最初のうちはおっかなびっくり読んでたこの漫画。気づいたら、もうすっかり好きになってしまってましてね、これは面白さの勝利ってやつなんだろうなあ。思えば、芳文社なのに芳文社らしからぬ攻撃的な漫画だったと思う。あの、由未カオルネタとか、女優の由美かおると同姓同名なだけで、しかも本人男だっていうのに、執拗にそこをイジられるとかね、アウトコーススレスレを攻めてたような気がするんだよなあ。でも、好きだったよ。あの、エレベーターに閉じ込められたレイ子さんだったっけが、由未のズボンを掴んで脱出しようとしたらズボン脱げちゃってってやつね、それ見た島崎から、変態プレイは家でやれよ! っていわれるやつ、脳裏に焼き付いてる。強烈なインプレッション、破壊的なギャグ。一種病みつきにさせる中毒性がありました。

『まんがタイムラブリー』は女性向けの雑誌だったそうですが、だとしたらこの漫画は『りぼん』における岡田あーみん的な受容のされ方をしたのかも知れませんね。ええ、私、岡田あーみんも大好きです。

初期のネタで好きなの、他にもありました。レイ子姐さんを族仕様改造自転車の後ろに乗せて、敵対組織? にカチコミにいくみたいな、ほんと勢いまかせの四コマなんですが、族っぽい演出するために、ラジカセでパラリラパラリラゆう効果音を鳴らすのね。で、これに続きがあって、同様に族スタイルでカチコミにいくんですが、ラジカセから流れるのは「いっちょめ いっちょめ わーおいっちょめ」。姐さん、それB面です。ほんと、それだけのネタなんですが、おかしかった。もう大好き。

で、なんでこれを覚えてるのかというと、単行本に収録されなかったんですよ。あれー!? なんでーっ!? ってその時は思ったんだけど、よく考えたら、というかよく考えなくとも、これ、音楽著作権のせいですよ。「いっちょめいっちょめ わーお!」って『東村山音頭』じゃん! もうほんと、このなにが飛び出すかわかったもんじゃないって感覚。これがよかったんだよなあ。

この作者さん、どう展開するかわからんというの、漫画だけでなくそのキャリアもでしたよね。『バカ女の祭典』で、当初はわりと簡素だったキャラ絵がですね、だんだんとゴージャスになっていくの。いやもう、すごい変化だよ。で、変わっていくの男性でさ、さっきいってた由未カオルもやたらいい男に描かれるようになったなあって思ってたら、社長秘書の幕ノ内はもっとすごい。うわあ、なんじゃこりゃあ、いくらなんでもいい男すぎやしないかー!? 驚いてたら、作者さん、BLの単行本、どしどし出すようになっていらっしゃった。

ほんと、あの転向にはびっくりしましたね。いつの間に!? って感じ。いや、Wikipedia見ると、デビューはBL系ジャンルとあるから自分が知らなかっただけだったんでしょうけど、怖いもの見たさ? いったいどんなの描いてらっしゃるのだろう、ハラハラしながら読んでみたら、ほんと立派なBLで、おー、幅広い作風だ、驚くというか感心したというか、いやもうまいりましたね、あん時は。

この人の漫画、BL以外でも結構いろんな作風というか、見せてくれることがあって、『バカ女の祭典』で見せてくれたもの、それだけと思っていたら見誤るなって思わされたこと、四コマジャンルでもあったのでした。『ママさん』とか、ほんとにそうでしたね。自分の知らない山田まりおの側面と、変わらぬ山田まりおのらしさと、それらがしっかりひとつの漫画に結実していて、ああ、すごいなって、いい作家じゃんって、その印象が今も残っています。

山田まりお、最近はもう全然追えていないから、どんなの描いてらっしゃるかわからなくなってたんですが、BLで活躍されてるのかな? 調べたら、去年『任侠メイド鮫造さん』ってのをリリースされてますね。しかもギャグもあって面白いらしい。おおお、これはちょっと読んでみたいな。でもって、単話売りで『ヤンキームサシさんと小山田の危険な純情』ってのが出てて、ああ、今もBLで活躍されてるんだなあ。

ええ、なんだか嬉しくなったのでした。

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