『まんがタイムきららフォワード』2018年12月号、昨日の続きです。
『スローループ』、いいですね。両親の再婚により姉妹となったふたりが、だんだんに仲を深めていく、その過程が生き生き描かれて魅力的だと思います。キャラクターが、その見た目も、そして性格づけもチャーミングで、「新しい」が不吉な言葉って斬新、新学期に尻込みしているひよりと、そんなひよりの手をとって前へ前へ進んでいく小春と、この対照的で、けれど対立的ではないふたりの様子描いたオープニングからもう見事であったと思うのですね。今回は新人物も現れて、吉永恋ちゃん。釣具屋の娘。この子もなんか可愛いよね。また違う感じのキャラ立ちしていて、小春、ひよりにはないシニカル成分含んでる感じですよ。あの目付き、いいですよ。これ、父への気持ちが反映してるのかな? 釣り中毒だって。家族、ずっと振り回されてきたっぽいな。なかなかに強烈なエピソード。そう、名前、あやうく鯉になるところだったんだ……。ひよりが、亡くなった父のこと思い出しながら、思い出の場所に小春を連れていく。そこで差し延べられる手。ああ、ぐっときますね。父との記憶と小春との今が重なりあうその感触。大切な人、父も、そして小春も、この手の描写をもって繋がった、そんな思いがしたのですね。
『なでしこドレミソラ』、最終回でした。文化祭のステージに臨んだ美弥。その演奏ははたしてどのように響いたのか。いわばその答となるやりとりの描かれた今回。ああ、本当にいい描写ではないですか。佐々木里歩の心にあったわだかまり、それがきれいに押し流された。すっきりとした表情で、もう自分の気持ちの底までも見通してそして見付けたその言葉、はっとさせられるような意外さと、けれど彼女らにとってはこれしかなかったと思える、まさにしっくりとくるその様子。実によかった。すとんと収まる、そんなよさがありました。それで、これでめでたしめでたしと思ったら、まだある! さらに重ねて、卒業生のステージにてあわゆきさんの演奏が。しかもこの日のための新曲のタイトルが『美雪』。ああ、それを聞いて美弥には通じたようで、あわゆきさんの鮮烈そのものとしかいいようのない演奏シーンと、それを受け取る美弥のあの表情。もう、これまでの集大成だったと思いました。そして文化祭もいよいよ終わろうとする時の、美弥と陽夜、ふたりのただただ演奏を楽しむその姿。ああ、原点がここにあると思わされて、ここから広がっていったものが、今ここにひとつの着地点を得た。その静謐さ感じさせる時間に、まだこれからも鳴り、響き、広がっていくだろう彼女らの可能性もすべて抱えて豊かに息づく息吹を感じたのでした。本当に美しい情景でした。
『球詠』。強豪校を相手になんとか勝ちの可能性を見出したい。前回までは、追い込まれ、可能性を封じられてきた、そんな描写も多かった、いわば逆境の時間だったのが、今回は、いや前回終盤からといっていいのかな、ふたたび可能性が芽吹き、伸びようとする、変化と躍進の転換点を迎えています。まずは詠深。強直球の印象を刻んだ前回。そして今回はその強直球を組み込んだ配球が打者を捕え、見事アウトに打ち取るというところからスタートです。相手の強打者を敬遠し、勝負できない投手であるかのように思われていた詠深が、そうではない、しっかり勝負し勝てるピッチャーである可能性が示されるのですね。そして次は打者の番。4番を打つ希。高い打率を誇る彼女、そのバックグラウドが語られるあのくだり、ちょっと驚いたのですよ。こういう見せ方もするんだ。意外と思わせるに充分な展開で、そしてまさしく絶好球を捉える希! ああ、これはいったか! 逆転なるのか。ページをめくる指にも力もこもろうというもの。しかし、そこで、まさかのアウト。いやもう、やきもきさせられっぱなしじゃないですか。でも、これが希の転換点だったっていうんですね。さらなる伸びを見せる詠深に、自身の可能性を感じとった希の姿。ああ、これはなにかが起こるぞ。その期待に、もう先が、先が知りたいと気持ちがはやってならないのです。
- 『まんがタイムきららフォワード』第12巻第12号(2018年12月号)
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