『まんがタイムきららミラク』2017年2月号、一昨日の続きです。
『城下町のダンデライオン』、アンジェリカの子供時代の話であります。誕生日のお祝いでしょうか、訊ねてきてくれた友人ふたりが帰ってしまって、少し寂しいアンジェリカ。友人と会うにも父の許可が必要など、いろいろ窮屈な毎日を過ごしている、そうした自分の境遇を受け入れている素直な子だったアンジェのもとに、見知らぬ子がやってくるっていうんですね。窓の外、バルコニーに落ちてきた。うお、茜様だ。まだ小さい頃の茜様だ。しかし、この茜様、後の人目につくことを怖れる彼女から知った人間にとっては驚くほどの快活さ見せておりまして、世界を救うだなんて面白いこともいっちゃう、そんな姿に戸惑いすら覚えるわけですが、そうか、あの事件の起こる前の茜様か。なんかしみじみと思いますね。籠の鳥だったアンジェを外の世界にいざなったの、茜様だったんですね。冒頭のアンジェのモノローグ。これは私が生まれた日のお話。これは、ただ誕生日であるのか、あるいは違うのか。違うのだと思う。誕生日かさえさだかではない。ただ、父にいわれるままに、お姫様であり続けた自分から、他の誰でもないアンジェリカその人となった日だというのでしょう。ええ、アンジェと茜様の馴初めで、そして同時にアンジェがアンジェとなった日。最後のコマのアンジェの表情がね、ぱっと明るくてとても素敵だったんですよ。
『ラストピア』、島のお医者、ミレさんに会いにいきます。島の外からきたお客さん。昔はこのホテルに泊まっていたのだけれど、もうひとり一緒に泊まっていた人がいた。エミは覚えてないんですね。いつもの記憶喪失。そしてミレはその記憶喪失からの回復者だというんです。ああ、もしかしたら、そう思っていたことが確かになりつつあるのでは。なんて思わせる展開がありました。ミレの忘れてた人、それはフィマ。もう長くない。自分の死を悟ったフィマが選んだのは、この島で死ぬこと。そしてミレも死ぬつもりでいた。なのにフィマのことを忘れてしまって……、という、この島の記憶喪失の秘密。それは悲しい記憶を、バクが悪夢を食べてくれるように、切り抜くみたいにして忘れさせてしまうのではないか。そして、その悲しみに耐えられるようになったからこそ、ミレはフィマのことを思い出した……? などと思って、だとしたらエミの忘れてしまったこととは。ならばリッタの、ほぼまるごとすっぽり忘れてしまっていることはどういう? なんて思わされて、ええ、わからないながらも、なにか思わせる、そんなエピソード。フィマのことを思い出したミレの姿がたまりませんでした。
『しましまライオン』は凛奈のエピソード。この子、すごいよね。唐突に人にされたというのに、ある種、誰よりもこの人の世界に適応している。そんな凛奈がアルバイトするっていいますよ。求人誌見て、どれがいいか、私らしく働ける仕事ってどれか選んでいく。それにつきあうえりなもいいですよね。凛奈がこれと決めた時のえりなの驚き顔が可愛い。そしてその仕事というの、なんと着ぐるみです。キリンの着ぐるみに入ってティッシュ配ってる。おお、これ、凛奈らしいって、確かにそうともいえる気がする……? そして隣のシマウマ。厳しい同僚って感じなんですが、中身はえりなか! うおお、めちゃくちゃ面白いシチュエーションじゃないですか。これね、凛奈とえりな、なんだか近しくなってますね。天真爛漫凛奈。動物に戻りたい、その気持ちは今も失っていなくて、でも動物に戻ったらえりなとこんな風に一緒にいられない。それはやだなぁ。そんな凛奈の言葉を聞いた、えりなの神妙な顔。それがすごく印象的だったんですね。この漫画、元動物の彼女らのコミュニケーション、鮮かで、彩り豊かで、情愛も深く、とてもいい。ええ、凛奈、えりな、とてもいいですよ。
『広がる地図とホウキ星』、素晴しいな。リン、登校中にゼルダを拾います。ゼルダもちゃんと下宿先見つけられたみたいで、でもどんなとこに住んでるんだろう。気になってたんですが、まだ明かされなくって、気になりますねえ。学校で、お昼休み、同じクラスのヴェリがケンカに魔法を使おうとしてるの見て、とめにはいるリン。電気の魔法か! それ食らったらトウモロコシがポップコーンになって、しかも静電気で体にくっついてるの。なんだ、このほのぼの。ケンカも立ち消えですよ。ヴェリ、魔法を使うと気弱になるんか。また、ケンカの相手、先輩みたいですが、この人との話で選択実技があることがわかる。ええ、次の授業は選択課題ですよ。クエスト。最初のクエストは街の美化活動。なるほど、学校のシステム、テンポよく開示されて、ほんと、こうやって世界観、システムもろもろ説明して広げていくのうまいよなあ。舌を巻く思いがします。さらには、街の美化活動。破れてしまったゴミ袋、あわやゴミが街中に散らばっちゃうというピンチを魔法でしのぐ、その見せ方のうまさ、生き生きと彼女らの個性を、世界を演出しますよ。ほんと、素晴しい。見事、見事であります。
『お願い!ロイヤルニート』、ほたるの妹、弟がやってきてしまいました。上は小学6年生。下は小2の双子まで、やんちゃで元気いっぱいの4人。そうか、ほたるは5人姉弟妹の一番上だったんですね。なるほど、道理でニートの彼女らの世話、くじけないわけだ。しかし今回は、年少の子らの前だからでしょう、ロイヤルニートの皆さんもとてもお姉さんぽく余裕を見せて、なかなかによかったのではないでしょうか。とりわけ、隙間妖怪ならぬ早乙女スイさん。消える板なる発明品で子らの気持ちをつかんで、そしてさらにはかくれんぼ。本人はね、すぐに見つかっちゃうんですけど、ほたるに見つけてもらいたかった一番上の妹、沙夜を誰よりも先に見つけて、そしてほたるに甘えたいという気持ち、それをすくいとってあげる。ああ、いいお姉さんじゃないですか。まだまだ引っ込み思案ではあるけれど、子らには好かれて、これをひとつの経験として苦手を克服していけたりしそうな予感させましたよね。いや、しかし、皆、いいお姉さんぶりでした。
『カラフル・マキアート! — 魔法少女は戦わない。』。ひとり能力の決まらないみのり。この子の悩みを生徒会長、そして副会長が解消、でありますよ。あ、ごめん、いいすぎた。解消にはまだいたってない。熱中症? 疲労? でへばってしまったみのりを拾ってきた生徒会長。副会長の部屋でお話することになるんですけど、魔法少女のことコスプレと思ってる生徒会長が、早着替えだとか、いろいろ聞きたくてうずうずしてるのおかしくて、さらに生徒会長から以前の変身、あれがバレてしまうのではとピリピリしている副会長、これも実に面白くて、ええ、ふたり、本当にいいコンビだと思います。どことなくおかしなやり取りにはなってるんだけど、生徒会長、この人のみのりに対するアドバイス、結構的確? いや、やっぱりいいかげん? ともあれ、みのりの悩みを軽減したことには違いなく、ええ、いい先輩をしてるなあって思いましたよ。この人、コスプレだ、悪の魔法少女だなんだ、おかしなこといってる時はなんだかトンチンカンですけど、こうして普通にしてると優秀な人なんだなって再確認させられましたよ。そして栞。この子が、副会長の家の床濡らしたことあるの? 誤解されてる様子が本当におかしくて、こういうささやかな行き違いに発するおかしさ、実によい。ええ、この漫画のよさは、こうした会話の面白みにあるなあ。すなわちコミュニケーションのよさってやつだな。最後のね、生徒会長と副会長のやりとりもとてもいい。ふたり、本当にいい友達なんだなって、見ていてとても心暖まるものありました。
- 『まんがタイムきららミラク』第6巻第2号(2017年2月号)
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