2023年2月24日金曜日

『まんがタイムきららフォワード』2023年4月号

 『まんがタイムきららフォワード』2023年4月号、発売されました。表紙は『ちょっといっぱい!』。梅酒の大きなビンを抱えた紅葉です。これ、本編に出てきたこはる屋のスペシャルブレンドですね。自分たちで材料を吟味して漬け込んだ、店には出さない取って置きの梅酒。つらい時、苦しい時に、自分たちを鼓舞するための特別なお酒。それをこうして笑顔で出してくれている紅葉を見るに、つらい時だけじゃない、特別な時、嬉しさをともにお祝いしたい時にも振る舞われるのでしょうね。ええ、本編がまさにそうした時。未来へと向かう若者へのはなむけ、思いを贈るかのような一時でした。

今月は新規ゲストが2本です。

『雨ちゃんは泣き虫』

突然の告白を受けた村雲。名前さえも知らない相手。交流したこともなければ、自分のこともよくわかっていないだろう後輩からの申し出にネガティブな反応返そうものなら、即座に目の前で死んでやるとカッターナイフ取り出す危険なコミュニケーション!

いやほんと、これは怖い。その思考回路が怖い。自分の中で作り上げた虚像に恋し、虚像を相手に一方的な交流を押しつけてくるタイプの人間。かつてこういう人間が身近に存在したものだから、さすがにちょっと受け入れがたいよ!

知りあいでもなかった相手に一方的に死を突きつけて、それが嫌なら自分とつきあえと迫る。脅しだよ! 村雲がしかたなしにオーケーしたら、自宅デートだと相手の了承もなしに家までついてくる。

怖い。怖いよ。この危険な子は天宮司雨。かつて自分の身近にいた人物は、教職員につきまとい数名を病ませた劇物で、男性女性問わず人間関係を破壊された者は数知れなかった。自分は運よくロックオンされる前に逃げおおせたので助かったけど、その数年後に交流関係に介入され、見事破壊されました。

こんな経験したものだから、天宮司雨には頭の中でアラート鳴りっぱなしであります!

けれど雨はだいぶ普通の側の人間だったようですよ。村雲の実際、お嬢様でもないし病がちの母を支えるために苦労している姿を見て、自分の決めつけやわがままについて反省することができた。これまでのやりとりを受けて、それでも雨を受けいれつきあおうという村雲は正直傑物ないしは怖いものなしだと思いますが、それでも自分に足りないもの、求めていたなにかを雨に見出したのでしょうね。

人は誰しも欠けたところがあって、それを誰かと埋めあうことができれば、その人にとってのひとつのしあわせに辿り着いたといえるのかも知れません。村雲にとって、雨はそうした誰かであったのでしょう。まだよく知らぬ村雲を知りはじめた雨にとっては、村雲は望ましい相手であり続けるか、あるいは思いもしない側面に触れることとなるのか。そうした時には、またなにかしらの変化なりあるのかも知れませんね。そしてそれは雨にとっての成長となるのかも知れません。

『コートネームをあなたに』

背の低さを気にしている笹原杏子は、バスケットボール部に入って背を伸ばすのだと意気軒昂。しかし現実は思いどおりにいかないのが常。シュート練習するもボールはリングに到底届かず、対し華麗にゴールを決める長身の高谷望美の躍動に見惚れるばかり。

そこまではよかったんだけど、杏子ったら自分にはバスケは向いてないんじゃないかって落ち込んじゃって、いやいや、はやいよ! まだ初日じゃん!

そんな杏子のことはげましてくれた望美。ふたりはこうして知りあって、そして近しくなっていったんですね。

背の低いことがコンプレックスの杏子。望美はといえば、声が小さくコミュニケーションが苦手。猫背もコンプレックスだっていうんですが、これはきっと背が高いからだろうなあ。自分より低い子たちにずっとあわせてくれてたんですね。内気で細やかな気配りのできる子なのでしょう。この子とはまた違った個性の杏子。小さくとも明るく元気なその性格は、多分望美にとっての理想だったりしたんだろうなあ。

ふたりで買い物にいった時の望美見てると、なんかわかるんですよ。服も見たいという杏子を、可愛くドレスアップさせる望美。その可愛さにテンションあがってるんですが、ああ、きっとこういう可愛い格好をしたいんだな、この子。大人っぽさ求めてる杏子は対極。ふたりそれぞれに、自分にないものを求め、その理想を互いに相手に見出しているっぽいんですね。

さて、新入生による交流試合に向けての練習がはじまります。ポイントガードの役割について指導を受ける杏子。試合まで一週間しかないことに不安を隠せないでいたら、望美が自分がいるからと頼もしいこといってくれて、そして試合当日も、杏子が失敗しても望美がカバー。そして最後には、杏子からのパスを繋いだ望美が決勝点を決めるにいたるというんですね。

今はまだ望美に助けられている杏子ですが、いつかこの子もうまくなって、望美を支えられる、そんな選手になっていけたら素晴しいなと思います。ふたりのともに伸びゆく様、そして深まる仲こそがきっと見どころになる、そう思わせてくれる一本でした。

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