2022年6月24日金曜日

『まんがタイムきららフォワード』2022年8月号

 『まんがタイムきららフォワード』2022年8月号、発売されました。表紙は『スローループ』。湖畔でひよりとふたり、甘味を嗜む恋先生。その穏やかで落ち着いた様子が素晴しい。着ている衣装はふたり揃いで、胸元には大きなリボン。これは制服? と思いきや、この子たちの学校ってネクタイよね? いつもとは違う雰囲気、恋に口もとについたクリームを指摘されて、ちょっと照れているひよりがまた可愛い。小さなテーブルを挟んで向かいあうその姿、ちょっと詰まった距離感がふたりの関係性感じさせてくれて素晴しいものあります。

今月は新規ゲストが1本です。

『サボテンのこころ』

弱っていたサボテンの鉢植えを、いろいろ調べて手をかけて育ててきたら、ある夜流星群の恩恵か、人の姿を得て出迎えてくれたというのです。しかし主人公宮村ふうかは、その子のこと、サボテンだとは気づいていない。いや、まあ、わからんよね。なので、迷子なのかどこからきたのか、いろいろ心配事をかかえながらも仕事に出てしまい、もう気もそぞろ! でも仕事は山積み、帰るに帰れず、そんな中、自宅ではひとり取り残されたサボテンの子が寂しさから屋外に出てしまって迷子に!

ふうかにお礼をいいたいがために人の姿となったサボテンと、そのお礼にほだされるふうかと。そのふたりの交流の様子こそを描きたかった、そうした気持ちがしっかり伝わってきました。ふうかがこの子のことサボテンとわかったの、そのくだり、どこでサボテンの子からふうかに説明されたかがわからなかったので、ちょっとばかり混乱をきたしたのですが、ふたり打ち解けて帰るその様子、いや会社からの電話で慌ただしい終わりになっちゃったんですけど、でもサボテンの子と連れ立って歩くその様子、とてもよかったと思います。

『スローループ』

箱根に家族旅行。温泉地を楽しむ組と、そして断然釣りにいそしむ組と、二手にわかれることになる、その流れや今や自然で当たり前! って感じになっていますよね。

ロープウェイから見下ろす湖。けれどここでまさかの吉永父失言! 恋にとっても釣具屋パーミットは大切な店であるのに、父は自分の釣り優先で、まわりのことが見えておらず、自分が釣りにいけなくなったら店もおしまい、畳んじゃうなんていっちゃったもんだから、恋が怒っちゃった。

これ、恋にしたら複雑な心境ですよね。父の趣味ゆえに成立している店。けれどその父にとっては、店は自分の趣味ほどに大切ではない!? これ、店をないがしろにされている、ひいては自分のこともないがしろにされている、そんな気持ちになったのかもなあ。これまでも父のこと、結構厳しくコメントしてきた恋ですけど、ここまで気分害したところ見るのははじめてのように思います。

今回の旅では、ひよりの母を思う感情がぽつりと語られたり、恋の店への気持ちが感じられたりと、こうした心情の動き、丁寧に描かれていること実にこの漫画のよさ感じさせるものあってとてもよかったです。そして実際釣りには同行しなかった恋。これはここで父と娘の関係性、そこに切り込む、そんな話になっていくのでしょうか。しかし吉永父、娘のこと大好きなのに、それをあんなかたちでしか表出できないの、なんだかんだと子供っぽい。こうしたピュアさ? 娘からしたらやってらんなかったりするんだろうなあ! でもこれで反省して大人になろうだなんてことにもならなさそうな気がする。どうしたところに着地点が見出されるのか。まさしく見どころです。

『球詠』

ストライクゾーンぎりぎりの球をカットすらせずずっと見送り続けてきた新越谷。その作戦の意図するところはなんなのか。はたしてこの作戦が、相手校ピッチャーになにかしらの揺さぶりをかけうる効果を持つのだろうか。

ずっと気になっていた答がついに示されました。なんとまあ! これ、美学園川にではなく、いうなれば環境、球審に対する働きかけであったというんですか! ストライクゾーンぎりぎりといえど、実際にはゾーン外、ボール球ともとれる、そんなクサい球だった。それを見送り続けることで球審を揺さぶり、ストライクではなくボールととらせる。その作戦、視野の広さといえばいいのか、この発想には驚かされるばかりで、そして四球で歩かせることを避けたい園川は、ついにストライクゾーン内に変化球を投げるにいたった。

攻勢に転じるための準備が完了した新越谷。さらに加えて、ヨミを打ち取った諸積を打者に迎えてなお厳しく攻めていくその投球のかけひき! 球審への働きかけが完了した今、ヨミの大きく曲がる変化球も解禁されて、そして粘りながらも相手の意表を突くストレートでの決着。本当に熱く、しびれる展開。もう本当に素晴しかったです。

そして次回こそは新越谷の面目躍如? いよいよ反撃の始まろうというクライマックス予感させる引き。いやもうこいつはシビれまくりでした。

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