2020年6月21日日曜日

『まんがタイムきららMAX』2020年8月号

 『まんがタイムきららMAX』2020年8月号、昨日の続きです。

『ホレンテ島の魔法使い』

この漫画、なんかすごいな。島に伝わる魔法使いの伝説。それは結局伝説に過ぎなくて、なんていってるけど、実際に超能力を持ってる人はいて、ただそれは内緒みたい。と、こういう前提があって、魔法使い伝説を売りにした島おこしやっていて、と、その夢の部分をはがすと、こんなことになるんだ! っていう今回。すごいよ、驚きの光景だった。西洋風の街並み? ずっとそれ見せられてきたから、この島はもともとこういう文化風土なんだと思っていた。けど、違った。そうか、観光客に夢を見せるため、この島は装っているんだ。その装いがなくなれば、こんなにも当たり前の光景が広がって、そうか、ここは日本の一部なのか。ユシャもいうように、まさに夢の終わりの光景なのかも知れない。あまりにも当たり前の光景。一気に現実に引き戻される、その衝撃をここまで実感させるあの絵の力。見事だったというほかないです。

島西部までは鉄道も通っていない。峠道も狭いからバスも通らない。だから観光客の目には触れないようになっている。ユシャの説明どおりとすれば、今回冒頭に語られた、超能力の持ち主、亜楽かるてのこと。鉄道技術者の父とともに移住してきたという、この要素はどう繋がるの? 島民の利便のために鉄道網が整備されたら、この島の現実が観光客に知られるリスクが出てくる。それとも、ユシャのいうように、魔法を島全体に広める力、それとともに鉄道も伸ばしていくことになるのか。

ホレンテ島がやたら商売っ気が強いの、それこそ初回から一貫して描かれてきましたけれど、そうならざるをえない背景というのも見えてきたように思います。そしてここにきて、魔法の意味、それが広がって、島の伝説であり、かるてたち現代の魔法使いであり、そしてユシャのいう魔法。これにはぐっときましたね。ええ、ほんとなにを見せようとしているのか。予想もつかないからこその驚き。見事でありました。

『のむラリアット!』

今回はトレーニング、そして受け身の練習風景が描かれて、いやいや、これすごいね。ライオン式プッシュアップ。これ、無理だ。できない。さらに加えてねじりんぼう。これもすごいな。鍛えてかつ柔軟性あげないとでないのがプロレスなのかと知らされた感あります。なんせ、海音が真面目に取り組む、それくらい大切なことなんだっていうの、すごく伝わってきた。いやはや、えらい説得性ですね。

しかし、それにしてもねじりんぼうはじめ、いろんな体勢描いて見せるの、これがまたうまいですね。人体はあくまでもちんまりとデフォルメされているのに、その動きに説得力がある。受け身のシーンでも、小さなコマに一連の動作を無理なく収めて、この躍動感! すごいよ。この漫画、地味にすごいことやってると思います。

受け身は高校は柔道の授業でやらされたんですが、基本似てるんですが、若干違うんですね。前受け身とか、柔道では肘をそんなに開かなかった。しかしいずれにしても受け身の重要性がこれでもかこれでもかと語られて、ともない以前の乱入の反省も深くなるというのね。ええ、知らないことのおそろしさ、改めて思い知っているみるくの表情、雄弁でありました。

そしてありすですよ。おおう、君、そうやったんか! ただの長身女子ではなかったんか! どう見ても女の子。あの桃までもが見誤るほど! いや、ラストの目を丸くしてる一年生たち。ひとり驚きの桁が違ってる桃がまた面白いんですが、ここでまたえらいキャラクター放り込んできましたね!

『いのち短し善せよ乙女』

アンズェリカが酷い! いや、いつもどおりではあるんですけど、おおきづちから出てきたハリセン持って公園に漫才やりにいった今回。わりと調子よさそうだった乙女にさくっとプレッシャーかけていくのな、アンズェリカ! 君、乙女が困り果てるの見て楽しんどるのかい? うん、きっとそうだと思う。この人、いや天使は、全部わかりきった上でやってると思う。その過酷さ、あまりの絶望の深さに蒼白になる乙女。いやもう、すごい状況でした。

しかし、漫才に対する評価、ちびっこたちがなんかどこかで審査員やってますのん? ってくらいに的確で、さらに神様の評が驚くほどに緻密。君ら、お笑いのマニアなのか? ただたまたまそこにいただけのオーディエンスやなかったんか? いやもう、この漫画らしいっちゃあらしい展開に笑わされて、でもこうした状況からの起死回生の展開がすごいですよね。

乙女のどこになにを感じたのか、君のその感性を信用していいのかどうなのか、漫才師志望の中学生に見出されて、ツッコミすることになった乙女。絶望顔からの渾身ツッコミ。羞恥と怒りがプレッシャーを吹き飛ばしましたね。ふたりの漫才に満面の笑顔で善のプラカードを掲げるアンズェリカが印象的で、なんかいい雰囲気になってるんですが、いや、君が相方やってる時にこれだけの爆笑を提供してあげたらよかったのでは!? いやもう、なんとか命が繋がった乙女。終わりよければなんだけど、なんか楽しそうだからこれでいいや! ってなっちゃうのもこの漫画のよさだと思います。

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