『まんがタイムきらら』2020年7月号、発売されました。今月は記念号! 第200号、というので表紙もちょっと特別ですよ。『けいおん!Shuffle』、『ゆゆ式』、『スロウスタート』、『あっちこっち』と、人気どころの主人公が揃い踏み。皆、ティアラをちょこんと頭にのっけてるのがちょっと豪華でチャーミングですよね。そして200号の記念小冊子もつきますよ! ええ、今回は盛り沢山。見どころたくさんです。
今月は新規ゲストが1本です。
『しあわせ鳥見んぐ』
なかなかにいい導入ですよ。扉とタイトルで、なるほど鳥を見る、バードウォッチングの話なんだな! そう思わせて、ページめくったら青い顔で焼き鳥食べてる主人公。食ってる!? 食ってるよ!?
この冒頭数ページで、主人公がなにものなのか、どういう課題を抱えているかさっと提示して、そしてすぐさま小さな事件、転機を投入してくるこのスピード感。1話かけて、主人公すずの悩みを打開する可能性、それを積み上げていった。新しい出会い、新しい興味。鬱屈し、しおれかけていたすずの気持ちが、見る見る活力取り戻していくのが見えたのは気持ちよかったですよね。バードウォッチングの楽しみに触れた彼女が、バードウォッチングを自分の絵のための刺激として利用するのではなく、それ自体の魅力に開かれようとする、その気持ちの向かい方もとてもよかった。
しかし、すずにバードウォッチングの楽しみを知らしめたキーパーソン、おっと、この人の名前、まだ出てきてないな。この人の登場シーン、すごかったですよね。こんなのてっきりすずのつきまといかと思いますやん。ほんと、覗き魔呼ばわりされて、すっかり変態扱いで。で、この人の挙動なんですが、すずから逃げようと走り出したのかと思ったら、これ、違うね! すずの声に驚いて逃げた鳥たちを追ってるんだよ! ほんと、完全に鳥しか視野に入ってない。この徹底した鳥好き描写。なんかいいですね。ちょっと変わり者だけど、そこに大いに期待したいところです。
『けいおん!Shuffle』
のっけから上機嫌の真帆。紫がめちゃくちゃ不審がってますけど、いやあ、確かにこれは警戒されてもしかたないわ。でも、紫のこと素直に褒めて、失敗しても心穏かに受け入れて、こうした優しい真帆もいいですよね。なので、持続しなかったのちょっと残念に思ったりしましたよ。
真帆がご機嫌だったの、なるほどライブが成功したから! 観客はなし、身内だけだったけど、ひとつかたちになった。それがこの子の自信になったというか、やる気引き出して、うん、わかるよ。テンションあがっちゃうのもわかる。ええ、この素直さ、見てるとこちらも嬉しくなる。で、すぐさま先輩に冷や水浴びせられるのな! そうか、動画撮っててくれたんだ! で、どんどん意気消沈していく一年生たちよ! ほんと、面白い。あるあるなんだけどさ、でも、ちゃんと自分たちのいたらないところわかるの、えらいと思うよ。これを繰り返して伸びていくのだよ。
そして登場、最後の先輩! 山本夏音さん。真帆たちに絡んできたこの人。しなのと仲直りしたいっていってて、なるほど、愛想つかされたって思ってたんだ。それで紫たちにすがってきて、さっそく仲直りもかなってというスピード解決! って、あんたら、なんでもかんでも思い込みが激しすぎるんだ! 互いに自分が嫌われたと思っていたっていうのね。それがこうしてまた一緒に活動できるようになったの、これはまた楽しくなりそうですよ。夏音、この人の距離感近くてマイペースなところ、それがどう生きてくるか、ほんと期待の星です。
『スロウスタート』
花名のカムアウトエピソード。ついに決着ですね。
花名のかつての同級生。けれど花名には覚えのない億果実。一度、花名と話したことがあるというけれど、その時はお互いにクラスメイトとはわかっていなかったって、その不思議な縁が語られた今回。ああ、ある種、コミュニケーションに倦んでいた果実。この子の、いずれすぐに別れてしまう短い学校生活に、期待もせず、深く関わろうともせずにいた、その気楽さと空虚さのいりまじったような感覚。これが花名との出会いをきっかけにして、一気に色を変えてしまったという描写。鮮烈でした。
すべてが終わってから、親切にしてくれたあの子がクラスメイトだったって、もしかしたら仲良くなれたかもしれなかったって気づく。もう後悔だって追い付かない、そんな気持ちのゆきどころなく胸にうずく果実の心情。その思いがあったがために、ある日の午後に出会って話しただけの、そして卒業アルバムの写真で再会した子の名前をこうもはっきりと覚えて、思いもしなかった再会に話しかけにいこうとする、その心の動きも生まれたというのですね。
果実からすれば、ありえた花名と友達になれた可能性、それが再び開かれた。そんなエピソードでした。そして花名の側からすれば、思いもせず秘密が暴かれることになってしまったものの、不安や心配はまるで杞憂で、むしろもっと深く知り合い、仲を深めることにもなった。
不安から解き放たれた花名のあの表情。たまらないものありました。これはまぎれもない名場面で、おそらくは多くの人の記憶に残り続けるだろう、まさしく屈指の一ページ。思い返すたびに心が揺さぶられる、そんな予感がする。そして、もう今から次回の彼女らの様子に思いをいたして、ええ、もう穏やかではおられない私だったのです。
- 『まんがタイムきらら』第18巻第7号(2020年7月号)
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