『まんがタイムきららフォワード』2020年6月号、発売されました。表紙は『球詠』、一球入魂、マウンドにて投球モーションにはいろうとしている詠深? なんか不思議とさっぱりした表情してるのが印象的。すごくニュートラルな表情なんですよね。若干の微笑み。けれどそこになんらかの意図や向かう先はないといったナチュラルさで、ええ、不思議な感触。これ、無心というか、ただ投げるという行為に対して向かいあおうとしている、そんな到達した感じさえあるんですね。
今月は新作ゲストが3本です。
『異世界ヒロインも大変です』
これわりと酷い漫画だ! 異世界転生もの? 召喚もの? けれど主役は転生してきた勇者ではなく、転生者を受け入れる側の人たち。人間19歳、人間24歳、エルフ200歳。その職業はヒーラー、剣士、そしてキャバ嬢、って待って? このファンタジー世界、キャバクラみたいな場所があるってわけね? いや、そらあるか。女性給仕がメインの酒場とか、そらあるわなあ。
あまりに場違いなエルフ200歳キャバ嬢。けれどむしろこの人が勇者召喚ミッションにおいての鍵みたいな扱いされていて、なんでかって、いやもうとんでもない偏見だ! 異世界からくる勇者の大半はカス! えらい前提からはじまって、そのカス、いやさ勇者を気持ちよく褒め称えて、気持ちよく戦いにおもむいてもらおうというその褒め称え要員てして期待されてるの!? さらに他にはお色気要員やらくっ殺要員やら、うん、ろくな期待されてないな、君ら……。
これ、もうすっかりポピュラーになっている異世界ものの視点を逆転させて、都合よすぎるといわれる設定、描写もろもろを、ちょっと皮肉まじりで茶化したコメディって理解でいいですね? 召喚勇者という存在そのものに私怨抱いている指揮官とか、もうわりと酷い。でもって作者があどべんちゃらときたら、これは期待できるのではないか。そう思っています。
フォーマットはワイド四コマ風。けど、あんまり四コマ読んでる感じはしないですね。でもこれ悪くないフォーマットだと思います。見せたいもの、表現したいものにマッチしている感じがします。
『先斗町舞妓夢小路』
京都先斗町を舞台にした、一夜の人間模様。舞妓になった幼馴染みとの縁を軸に、道ならぬ恋に迷う自身の思いと、その根っこにあった彼女に対する引け目。よろめくようにしてすがってしまった恋のような気持ちと、けれどそれが逃げであったと自身気づかされた思い出の香り。ふとすれ違った舞妓、幼馴染みの彼女の存在が鮮烈に立ち上がり、ありたかった自分に立ち返ることができたというのですね。
主人公と舞妓になった友人の、互いに支えになっていたことの明かされるくだりも、そして香りが象徴的な要素となって大切だった世界と、そして自分らしくあれない世界の違和感、その対照を印象づけていたところも、よかったのではないかと思います。対比を見せる構成、しっかりしたものだったと思います。
『月海ちゃんは流されない』
びっくりしました。絵のタッチですよ。茜新社の雑誌みたいだ! さっきの先斗町もでしたけど、このところのフォワードは、いろんなテイスト、いろんな方向性の漫画を掲載して、いろいろチャレンジしているなって思わされます。
さて、学校ではお嬢様、優等生と思われている月海。けれどその実態は、女性、とりわけ美少女に目のない変態的嗜好の持ち主。家業のプールを職場体験の場として選んだその目的は、プールに訪れる美少女たち。監視台から監視するのはプールの安全ではないというのもお約束。というか、この月海の危険嗜好、ちゃんと家族も把握していて、心配した姉が監視しにくるっていうくらい。ああ、月海の監視ね。
月海の目をつけた小学4年生美少女に対する狼藉が結構ガチ目にヤバくって、人によっては引くレベルかも知れません。でも、このヤバい主人公に対し、小4女子もわりと辛辣に対応する、その負けてなさのあるところ。月海のそこはかとなくヤバいところをきちんと察知し、盗撮されたらちゃんとSDカードを回収。そうして無抵抗じゃない、チョロくないキャラクターに仕上げてきているところはバランスとれていていいと思いました。しかし小4でこの対応力。結構な実力者でありますね。
- 『まんがタイムきららフォワード』第14巻第6号(2020年6月号)
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